SPELLING BEE(スペリング・ビー)という言葉をご存知だろうか? アメリカではおなじみの、英単語のつづりを正確に言い当てる競技大会が存在する。全米から小・中学生が参加して行われ、全国大会はテレビ中継もされるほど。
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このスペリング・ビーの地方大会をテーマにストーリーを構築した舞台が、アメリカで2004年に初演された。
作曲・作詞をウィリアム・フィン、脚本をレイチェル・シェインキンが手掛け、オフブロードウェイで初演されたミュージカルは、翌年2005年にはブロードウェイに進出、そしてその年のトニー賞(演劇界の権威ある賞)で6部門にノミネートされ、最優秀脚本賞&助演男優賞を受賞した。
2016年、その日本版を国産ミュージカルの創造と普及を目指すミュージカル座が、芝田未希の翻訳・訳詞、菊地まさはるの演出により上演された。
その再演「ブロードウェイ・ミュージカル『スペリング・ビー』」が、2018年5月23日(水)から27日(日)まで、東京・六行会ホールで行われる。
今回、菊地まさはるが上演台本も担当し、辞書だけが友達の孤独な少女役で元AKB48の河西智美が出演。シングルキャストの河西、菊地、そして出題者役の柳瀬大輔を除いて、「月組」「星組」2組のWキャストで上演される。
初日が迫る中、通し稽古が行われた5月中旬、菊地まさはるに話を聞いた。
■ 演出・菊地まさはるインタビュー
――この舞台との出会いについて教えてください。
2012年に別のプロジェクトで上演された「スペリング・ビー」に、副校長のダグラス・パンチ役で出演しました。
実は、(カウンセラーの)ミッチ・マホーニー役をやりたくてオーディションを受けたんです。
彼が歌う曲を歌いたい思いがあってね。その後新たに上演が決まった2016年に、演出をやらないか、とお話を頂いた。見知った作品で、面白い作品だったのでやってみようと。
――これまで何度も縁があるこの「スペリング・ビー」の魅力をどのように感じていますか?
登場人物の子どもたちは、それぞれにたくさんの問題を抱えています。友人関係、家族問題、イジメ、競争、ストレス、葛藤、生まれ持った性格や障害。
それでも「スペリング・ビー」の予選を勝ち抜いた。子どもたちの思いや、チャレンジしようという気持ち、負けるということを受け入れるという、いわば成長、そうした部分は、見る人の経験に通じるもので、共感を呼ぶテーマだと思います。
――その例を、いくつか教えてもらえますか。
例えば、リーフ・コニーベアという安全ヘルメットを持って出場している少年は、地方大会では3位になったけれど、繰り上がりで出場している。彼はとても記憶力がよいのだけれど、何かしら障害のようなものを抱えている。
彼のキャラクターには、敗者の痛みも勝者の痛みも包含されています。女性ではオリーブ・オストロフスキー。彼女の家庭は崩壊してしまっている。
「辞書が友達」で、「2番になんてならない」と言い続けていた女の子。けれど大会を通じて、彼女には人に対して"許す心”が芽生えていく。
それまで譲れなかったものへの考え方が変わっていきます。問題を抱えていた子どもたちはみんな、「スペリング・ビー」を通じて一歩を踏み出すという、成長する姿が描かれているんです。
■ 「スペリング・ビー」の"参加型”を解説
――この作品の大きな特徴は「参加型」であるということですよね。
はい。当日に参加者を募って、出演を希望する方に出ていただきます。
希望者以外にも声をおかけしようと、私には「プレゼンター」という役柄がついているんですが、実は当日見かけた特徴的なお客様に、出演に向けたプレゼンをするという意味を込めています。
――一般出場者はぶっつけ本番ですか?
簡単なルールのレクチャーはしますが、正解してください、優勝を目指してくださいというお話をします。
そうやって来場者も含めて役者・観客が一体となってみんなで作っていくという、とても特徴的な作品です。
――「スペリング・ビー」は、英語の単語のつづりを回答し、正解を競う大会。そこで選択されている単語は、どのように選ばれているのでしょうか?
作品上、子どもたちの抱える問題やキャラクターを象徴するようなワードが選ばれています。
それを意識して作品をごらんいただくと、より深く楽しめると思います。またこの作品は長く何度も上演されている舞台ですから、本筋とは離れた部分では、そのワードのチョイスは作品ごとに変わっている部分もあります。
過去の作品のチョイスから受け継ぎたいものは受け継ぎ、引用しつつ、新たな例題も作ってもいます。この舞台は、日本語圏の方々にも笑ってもらえる英語の物語という点も大きな魅力の一つだと思います。
観客として来場した人々から「スペラー(大会出場者)」が選ばれ、その状態で舞台が進行していくという稀有な特徴をもつ「スペリング・ビー」。
つまり毎回出演者は変わり、「二度同じことが起こらない」。登場人物の子どもたちのように、勇気を持って出場すれば、本当に"出演者と一体に”なれる舞台。そんな楽しみ方はいかがだろうか?(ザテレビジョン)
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