ツタンカーメンの短剣は地球外の材質だった。そんなニュースが2016年に専門誌で発表されました。その短剣は1925年に発掘されたものですが、発掘から約90年を経て判明した事実とは一体どんなものなのか。そしてどのように解明したのでしょうか。

ツタンカーメンの短剣は宇宙製?

2016年5月、専門誌『Meteoritics & Planetary Science』上でツタンカーメンの棺から発掘された短剣の材質が隕石であるという論文が掲載されました。この短剣は1925年、ハワード・カーター氏によって発掘されたもので、発掘以降何十年も何の材質か不明でした。一見すると鉄製ですが、当時のエジプトにおいて鉄は金よりも貴重なものです。また、腐食しないことも鉄製というには疑問が残る点でした。この長年の疑問についに一つの説が浮上しました。それが隕石説です。

蛍光エックス線分析装置を使って調べた結果、短剣にはニッケルやコバルトが多く含まれ、その成分組成は2000年に発見された隕石の成分と一致していることが判明しました。これにより研究者チームは、短剣は隕石で作られたと結論を出しました。

短剣が発掘された1925年にはなかった分析方法の確立、短剣発掘から数十年経って発見された隕石、これらが全て揃ってはじめて短剣の成分が分かったのです。

最古の人類は「アウストラロピテクス」ではなかった?

発掘によって新しい事実が判明する事例は数多くあります。例えば最古の人類は、かつては約400万年から100万年前に生息していたアウストラロピテクスであると考えられており、教科書にもそのように記載されていました。

しかし1992年にはアルディピテクス・ラミドゥスの化石が約440万年前の地表から発掘、2000年には約600万年前に生息していたとされるオロリン・トゥゲネンシスの化石が発掘されました。そして2001年にはアフリカで680万年から720万年前とされるサヘラントロプス・チャデンシスの化石が発掘されました。目まぐるしい変遷を経ている最古の人類の学説は今後も変わっていく可能性があるかもしれません。

また、日本においても最古の貨幣に変化がありました。以前は708年に製造された和同開珎が最も古い貨幣と言われていましたが、2018年2月現在、富本銭が最古の貨幣とされています。これは1998年奈良県明日香村にて発掘され600年代後半に作られたと推測されており、708年の和同開珎よりも古い貨幣となります。富本銭自体は1985年にも発見されていましたが、鋳型とともに出土したものは明日香村が初めてでした。

歴史は発見と研究で変遷していく

発掘、研究によって歴史が変わる事例は数多くあり、ツタンカーメンの短剣、最古の人類、最古の貨幣などは一部に過ぎません。これからも新しいテクノロジーによる分析、発掘技術は進化していき、それにより多くの新しい発見がされることでしょう。
歴史は専門家や研究者が発掘し分析、研究したことで判明した事実の羅列です。この先、研究成果によって今まで当たり前だと思っていた知識が覆されることがあるかもしれません。

歴史と真正面から向き合い、発掘、分析、研究を繰り返す学問「考古学」。既にある事実をより深めるだけではなく、知られざる歴史を探求する学問でもあります。もし興味を持ったなら勉強してみてはいかがでしょうか。その先にもしかすると歴史を変える発見が待っているかもしれません。

【参考】
ツタンカーメンの短剣は「隕石」製、当時わかって使った?
https://www.cnn.co.jp/fringe/35083662.html

ツタンカーメンの短剣は、隕石からできていた
http://www.huffingtonpost.jp/2016/06/02/king-tuts-knife_n_10269638.html

最古のヒト、700万年前に生存か
http://www.afpbb.com/articles/-/2357194?pid=2687862

最古の猿人、440万年前の全身骨格化石を発見
http://www.afpbb.com/articles/-/2648732?pid=4704741

オロリン
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%83%B3-1690234#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89

和同開珎より古いお金があった!?日本の硬貨の歴史
https://moneyforward.com/media/hobby/47125/

富本銭にまつわるあれこれ:三菱UFJ銀行
http://www.bk.mufg.jp/csr/contribution/kids/gallery/fuhonsen1_2.html