ドラマ映画演劇などの中で、そこに登場する人物に扮して演じるのが俳優である。物語には役がいて、ヒロインがいて、脇役がいる。カッコいい男の子がカワイラシイ女の子を守り、には個性的な顔の男子だったり、女子だったりがいて、それを見てたり見てなかったりしている。もうちょっと、大人物語になると、男の人が困難を乗り越えていこうとしている横で、内助の功で支える妻がいたりして、なんやかんやで成功したり失敗したりする。物語なんてものは大体、決まりきったプロットで進んでいくのである。

 そのため、役柄も大ジャンルが定まっていく。イケメンかわいい、個性すごい働くオジサンかわいいおばあちゃん、そして、皆の心を捉えて離さないのが幸薄女優だ。

 幸薄女優が演じる役柄は当たり前だが皆、幸が薄い。幸が薄いから、間違えて人を殺しちゃったり、浮気されたり、流産したり、散々なに遭う。そういったキャラクターが1人いると、物語に幅が広がる。

 その代表格として挙げられるのは木村多江だ。ドラマリング~最終章~』(フジテレビ系)の貞子役やドラマ『大』(フジテレビ系)で流しとなってしまう初役など、これまで演じてきた幸薄役は数えきれない。初映画『ぐるりのこと。』では、第一子が亡くなってしまったことでうつになった佐藤翔子役で日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞した。

 も幸薄女優の1人だ。映画バトルヒーター』でスクリーンデビューを果たし、映画『ラヂオの時間』では番組プロデューサー西村雅彦)の愛人である永田スミ子の役を演じた。大河ドラマ龍馬伝』(NHK)では、非業の死を遂げた武市半平太大森)の妻・武市を務め、幸薄女優としての重厚な存在感を放っていた。

 関西幸薄女優として異を放っているのは池千鶴だ。14歳漫才師の役として出演した『大阪物語』で映画デビュー朝ドラ『ほんまもん』でヒロインを務め、一躍、スターダムにのし上がる。その後、映画ジョゼと虎とたち』ではベッドシーンもある足の不自由ジョゼ役を演じ、映画『そこのみにてく』では、産加工場で働いては男に体を売る千役を務めた。どこか『じゃりン子チエ』の世界観を思わせる女優である。

 満島ひかり折りの地方幸薄女優だ。音楽グループFolder」に所属していた満女優に転身し、園子温監督映画のむきだし』でブレイク新興宗教洗脳された武闘女子高生という濃厚なキャラクターを見事に演じきった。ドラマ『それでも、生きていく』(フジテレビ系)では殺人事件の加家族ドラマ『Woman』(日本テレビ系)では生活が困窮しているシングルマザーと、幸薄訳アリキャラクターも務め上げている。瞳の中に得も言われぬ狂気を抱えているためか、幸薄女優にとどまらない。どちらかというと狂気幸薄女優といえよう。二階堂ふみもこのに入る。

 忘れてはならない幸薄女優がいる。桜井幸子だ。朝ドラ『おんなは度胸』(NHK)でヒロインを務め、ドラマ高校教師』(TBS系)で、教師羽村夫(真田広之)とに落ちる女子高生二宮役を演じてブレイクした桜井。『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』や『未成年』(いずれもTBS系)にも出演し、野島伸司脚本作品の常連となる。問題を抱える若い男たちを性的な観点から見つめつつも、自身の出自に問題を抱える役を演じさせたら右に出る者はいなかった。桜井2009年にひっそりと芸界を引退。その立ち去り方も桜井らしさをうかがわせた。

 今から女優になりたいという人がいるならば、幸薄女優を狙ったらいいと思う。幸薄女優は息が長く、各世代の不幸を味わえるからだ。ただ、幸薄女優は顔が薄くて、演技が上手い。彼女たちは努と才でそのを勝ち取っているのである。
(文=加藤和)


※画像は『ブラックリベンジ DVD-BOX』(バップ

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