米国務省は6月4日、今年で29周年を迎える中国民主運動弾圧事件・64天安門事件について「私たちは罪のない人々の悲惨な死を思い起こす」とメッセージを発表した。

64天安門事件1989年6月3日深夜から翌日未明にかけて、天安門広場に民主化を求めて集結していた大学生ら一般市民に対して、中国共産党政府が武力鎮圧した事件。人民解放軍は無差別発砲や戦車の投入で市民を惨殺した。軍事鎮圧を決定したのは鄧小平共産党初代中央委員主任といわれる。

このたびのポンペオ長官の署名付き声明には、中国政府に対して「殺害、拘留、行方不明となった人々の完全な公式統計を出すよう促す」とし、民主化運動に加わったために投獄された人々の開放、またデモ参加者とその家族の継続的な圧力をやめるよう求めた。

「米国は、人権の保護をすべての国の基本的任務とみなし、中国政府に、国民の普遍的な権利と基本的自由を尊重するよう促す」と記した。

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イギリス政府の文書保管機関、英国立公文書館(TNA)が2017年11月に解禁した外交文書によると、中国国務院は事件による死者は1万人以上と把握しているという。また、2014年に解禁となった米公文書では、リリー在中国米国大使(当時)が中国軍関係者の話として、中国政府統計として死者1万454人、負傷者が2万8796人との記録がある。

中国共産党政府は軍事鎮圧は正当だったと主張しており、1989年学生運動と弾圧について厳しい情報統制を敷いている。中国国内でインターネットで当時の写真や映像、情報を確認することはできない。

(編集・甲斐天海)

1989年4月22日、天安門広場で、数万人の民主化を求める学生ら若者と、警察隊が対峙する(CATHERINE HENRIETTE/AFP/Getty Images)