着地点がなかなか見えない米中通商協議は3日、3回目の交渉が終了した。共同声明が発表されていないことから、交渉が決裂したとみられる。5日付の米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、中国当局は米側に対して、700億ドル規模の米農産物とエネルギー製品の購入と引き換えに、米通商法301条に基づく制裁関税の実施を放棄するよう求めた。しかし、ある米当局者は「(放棄が)ありえない」と同紙に語った。

米政府は5月29日、6月に500億ドル(約5兆4200億円)相当の中国からの輸入品に25%の関税を課す計画だと発表した。中国政府系メディアは3日、交渉終了後の声明で、米当局がこの計画を実施する場合、「これまでの交渉で得た合意をすべて破棄する」と反発した。

中国指導部はなぜここまで米追加関税を警戒しているのか。

米に狙われた「中国製造2025」

米通商代表部(USTR)は4月初め、米の知財権が侵害されたとして、追加関税措置の対象とする1300品目の中国製リストを公表した。中国の製造業振興策「中国製2025(メイド・イン・チャイナ2025」が言及した航空宇宙産業、通信情報技術産業、ロボット製造業、他のハイテク産業の製品がリストの約半分を占める。

中国の清華大学の馬弘・副教授が4月9日ポータルサイト「捜狐網」に寄稿した。副教授は、追加関税措置で業界として最も打撃を受けるのは、航空宇宙産業、光学医療機器業、鉄道車両・軌道製造業、アルミ製品製造業、旋盤製造業だとした。中国の対米輸出において、この5つの産業が占めるシェアが高いからだという。

馬氏は、航空宇宙産業を例に、米政府が追加関税を実施すれば、各産業は破滅的な危機状況に追い込まれるとの見解を示した。同氏の試算では、リストに挙げられた航空宇宙関連品目の金額は、同業界の対米輸出総額の99%を占めている。

2015年、米国は中国から4億8700億ドル規模の航空宇宙関連製品を輸入した。馬氏は、米の措置によって、航空宇宙製造業は「一網打尽」される状況に陥る可能性を示した。同時に、米の関税措置は実質的に「中国製2025」計画の破綻を目指す内容だと危機感を示した。

USTRは、1300品目の一覧の選定について公表した。「中国製2025」計画に有利だが、米国経済成長を阻む製品はターゲットとなった。一方、米国内の需給バランスに与える影響が少ないなどの考慮もなされた。

米市場を失うことに怯える中国

中国時事評論家の横河氏は、対中制裁関税の実施は、中国を米市場から締め出すことを意味すると述べた。

「中国にとって、米市場を失えば、世界市場を失うことに等しい。なぜなら、大量な中国製品を消化できる国は、米国しかないからだ」

中国製造業にとって、国内市場はすでに過剰生産で飽和状態になっているため、活路を見出せるのは海外市場しかない。これは、中国政府が支援する国営企業でさえ直面しなければならない事実だ。

製造業の技術力増強を図るには、良い資金循環が前提条件だ。開発・研究資金の確保、生産力の維持には、まず製品を販売できる大きな市場が不可欠だ。

中国国内の長江商学院の薛雲奎教授は過去、ドイチェベレに対して、中国国有企業、通信大手の中興通訊ZTE)について、中国当局からの補助金がなければ、経営破綻すると述べた。

ZTEが公表した財務諸表を見ると、ZTEの主要事業の収益が非常に少ないことが分かる。中国当局からの輸出増値税の還付金と開発研究関連補助金を受けているため、ZTEはわずかな黒字を出している」

当局から補助金を得られない中小民間企業はより深刻な状況だと推測できる。

ロイター通信の5月の報道では、アパレルや鉄鋼材などの中国企業は過去数カ月間、米国からの受注が激減したと頭を抱えた。

中国は制裁関税を回避できるか

 

中国北京で3日に終了した米中通商交渉では、中国の劉鶴副首相は米側に対して、米が中国製品に追加関税措置を実行すれば、今までの交渉合意を全部破棄すると主張した。

英紙フィナンシャルタイムズによると、米政府関係者は、トランプ政権が中国の要求に応じないとの見方を示した。

トランプ大統領は4日、「15年間、(米国)農家にはいいことがなかった。メキシコカナダ、中国その他から、彼らは不当に扱われてきた。だが、私が貿易交渉を終えた時には、事情は一変するだろう」とツイッターに投稿した。大統領は、前日の米中通商協議結果の不満と、中国製品への追加関税を示唆した。

米紙ウォールストリートジャーナルによると、ホワイトハウス関係者は、トランプ政権は米中通商問題において、引き続き中国に対して強い姿勢で臨んでいくと強調した。

中国の二面性

中国共産党政権は従来、国際社会に向けて自由貿易の守護者と自負してきた。しかし、実情はその逆だ。特に知的財産権侵害問題と強制技術移転、市場競争において、中国に進出する多くの外資企業は、政府全面支援を受ける国営企業などと比べて、常に不利な立場に置かれている。

USTRのシェイ副代表は5月8日、ジュネーブの世界貿易機関WTO)総会で、中国を名指して批判した。「世界で最も保護主義的で重商主義経済の国だ。自由貿易とグローバル貿易システムの擁護者であると自ら述べるのを見て驚いた」

シェイ氏は「鷺を烏に言いくるめている」と中国を痛烈に非難した。

シェイ副代表は、中国の通商政策は世界貿易の秩序を揺るがしかねないとして、WTOの加盟国に対して、中国の保護主義に対抗するよう呼び掛けた。

同会議に出席した他の国の高官は、米メディア「インサイダー・US・トレード」に対して、米国の中国に対するこれほど痛烈な批判は初めだとした。

中国政府はWTO加盟時、資源分配において市場が決定的な役割を発揮すると約束した。しかし、現在も国有企業が、金融、エネルギー、通信などの主要産業を支配している。

「米中通商問題の根本は政治的構造の違いにある」

横河氏は、米中貿易戦争の根本的な原因は、米中両国の政治体制の違いにあると指摘した。

米国は実質上、中国に対してWTOなどの国際ルールに順守する貿易システムの確立を要求している。しかし、中国共産党政権はこれまで、国際社会のルールと常識を無視し、それによって遂げた「経済発展」で政権を維持してきた。さらに、今はこの手法で世界覇権を狙っている。

3日に終了した貿易交渉で、米側は中国に経済の構造改革を行うよう求めた。しかし、構造改革を行えば、共産党の経済に対する過度の干渉はできなくなる。さらに、関税の撤廃、市場の全面開放、国営企業への補助金供与の停止など各方面の抜本的な見直しが迫られる。これまで独裁体制のバックアップで得た経済利益を失えば、統治基盤を揺るがす事態になりかねない。

大紀元コメンテーターの李林一氏は「共産党にとって政権維持は何よりも重要。中国は簡単に米の条件を飲まないだろう」とこう着状態が続く米中貿易協議を分析した。

中国輸出入銀行の李若谷前総裁は5月12日に行われた「中信改革発展研究会」の年次総会で、貿易摩擦は赤字削減をめぐる攻防だという認識は「誤解」だとし、「これは中国今後の方向性に関わる問題だ」と指摘した。

(翻訳編集・張哲)

米中貿易協議は3回目となる交渉が終了したが、いまだに着地点を見出していない。(AFP/Getty Images)