2016年4月に電自由化が始まってから2年が経過した。それまで、電気は地域ごとに決められた電会社からしか購入できず、そのため多くの顧客を抱える東京圏では、東京電力が独占的に営業を続けてきた。

 東電殿様商売をできるのも、地域独占という制度に守られてきたことが背景にある。電自由化は、業界に新規参入を認めることで電気事業者間に競争を促す的があった。新たに参入する電会社が出てくれば、サービスや料面で競争が起きる。それは消費者にとってもメリットがある――。

 そんな淡い期待は、電自由化から1年後に散した。蓋を開けてみれば、新たに参入した新電には破綻や事業売却で撤退するという不安があり、消費者が新電に切り替えることに二の足を踏んだ。そうした事情から、おおむね新電は苦戦が続いている。

 電自由化によって牙が崩されると予想されていた東電だったが、むしろその強大な経営資を武器に、電自由化以降も東京圏では絶対的な勢を保っている。それどころか、地域ごとの棲み分けが撤されたことで、これまでは管轄外だった中部電力関西電力の営業エリアにも進出している。

「電自由化は、結局のところ東電を焼け太りさせるだけの結果に終わった」(エネルギー業界関係者)

 実際、電自由化で電会社が切り替えられた件数は関東地方で2年間で約349万件にとどまる。切り替え率にすると、わずか11。電自由化は、ほとんど消費者にとってプラスに作用していない。

東電東京ガスを脅かす?

 電自由化から1年後の174月には、ガス自由化が始まった。「ガス自由化にいたっては、そもそも話題にもならない」(経済産業省職員)と言われるほど、業界外では状態になっている。

 日本ガス事業者の勢図を見ると、最大勢東京圏を地盤にする東京ガスだ。電自由化の際、東ガスは攻勢をかけて東電の顧客を奪いにかかった。しかし、前述したように東ガスは成果をあげられていない。そして、ガス自由化では、東ガスは攻める側から攻められる側に回る。電べると、ガスは安全設備をはじめとして参入障が高い。そうした要因もあり、業界内では事前から「電以上に新規参入する事業者は少ない」との予測が流れていた。そうした予測は見事にあたり、大勢を誇る東ガスは顧客をほとんど奪われることがなかった。

 ガス自由化から1年が経過し、契約が切り替えられた件数は約84万件。切り替え率は、たったの4パーセント鳴り物入りで始まった電ガスともに切り替えは進んでいない。東京圏なら、多くの庭は東電・東ガスを使用しているということになる。

 電自由化以上に空振り感が強くにじむガス自由化だが、それだけで東ガスは安泰――と考えるのは計だ。実は東電が、東京ガスを脅かす存在としてガス業界でも存在感を増しているのだ。

 東電ガス自由化に際し、子会社東京電力エナジーパートナー東電EP)を設立。東電EPは、LPガス大手の日本瓦斯(ニチガス)とタッグを組んで、首都圏での勢拡大を図った。さらに、東電EPはLPガス事業者のレモンガスとも提携。東ガスの牙である東京圏を崩しにかかっている。

 ニチガスは、タレント本田翼出川哲朗CMに起用。大量にテレビCMを流すなど、ガス自由化は仁義なき戦いに発展している。東ガスも安穏とはしていられない。このまま東ガスが手をこまねいていれば、晩「電気東電ガス東電」という局面になるだろう。
(文=小川裕夫/フリーランスライター

東京電力ホールディングス・川村隆会長(ロイター/アフロ)