お互いの名前を知り、呼び合うのは人間関係の基礎の基礎であるが、それは人間に限ったことではないようだ。オーストラリアに生息するイルカたちも互いの名前を認識し、呼び合ってコミュニケーションし、複雑な社会関係を築いているという。6月11日付のメディア「The Conversation」で報じられると、複数の海外メディアがこの興味深い発見を伝えている。


イルカの名前

 イルカは独特な鳴きを発し、仲間コミュニケーションをとる生物であることはよく知られている。近年、鳴きの分析によって、イルカの個体にはそれぞれ特有の「名前」があることが判明している。2013年の野生のハンドウイルカの調では、個体を表す特殊な鳴きシグネーチャーホイッスル)を録音して聞かせると、その個体が返事を返すことがわかっている。イルカたちは生後数カ以内にそれぞれの名前となる独自の鳴きを発達させ、自己紹介仲間との合図にそれを使っているようなのだ。これは、野生動物がそれぞれの個体を表す呼びを使っているという世界初の発見であった。

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 では、野生のイルカたちはこの「名前」をどう使っているのだろうか? 今年5月、その一端を明らかにする論文が学術誌「Current Biology」に掲載された。著者は西オーストラリア大学ステファニーキング氏らで、キング氏はイルカに名前があることを明らかにした生物学者である。

 今回、調の対となったのは、オーストラリア・西オーストラリアシャークベイのハンドウイルカの群れである。この場所では血縁関係にあるメスのイルカが群れを作る一方、オスは血縁関係のない2~3頭で同盟関係を作っていることが知られている。本来は生殖をめぐるライバルであるが、同盟関係にあるオスは生殖の相手となるメス探しや確保、別のオスグループとのメスをめぐる戦いにおいて、協関係を築いているのである。同盟関係にあるオス同士のは深く、その関係は生涯にわたるという。


■名前を呼び合うオスイルカたち

 キング氏が「The Conversation」に寄せた記事によると、この同盟に役立っているのが個々の名前であるという。同盟を組んだオスのイルカたちは互いの名前を呼び合うことで、メスや敵対するオスグループに自分たちの同盟をアピールしているという。彼らは友人だけでなくライバル個体の名前も把握しており、オスグループ間に存在する上下関係を認知しているほか、回避するか友好的に接するかを決めるのに使っているようだ。

 群れの中で皆が同じような鳴きを発して集団内のコミュニケーションを取る行動は、哺乳類など多くの野生動物で観察されている。だが、シャークベイのオスイルカたちは互いの名前を呼び合うことで相手を認知し、コミュニケーションを取っている。キング氏によると、彼らは名前で呼び合って穏やかな会話を楽しみ、一緒にジャンプしたりダンスのように泳いだりして親を深めているという。

 個々の名前で同盟や敵対の関係を把握するというイルカの特色は、人間のものともよく似ている。以前トカナではフグキメるイルカについてお伝えしたが、彼らの賢さや仲間意識の強さが明らかになるたび、なんと驚くべき生物かと思わされる。「イルカがせめてきたぞっ」というキャッチコピーで有名な小松崎茂氏の絵に、なんとも言えない奇妙な説得があるのも当然かもしれない。


イメージ画像:「Thinkstock」より

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