正直に言おう。小沢はこのパナメーラがあまり好きじゃなかった。とにかくバカデカい。2009年世界デビューした初代は全長4.97m、全幅1.93mで、ほぼメルセデスのEクラスBMWシリーズ並みのデカさ。

乗ればV8ターボエンジンも選べてバカっ速だし、ハンドリングもスゴかったが、見たアメ車コルベット似だし、そもそもポルシェフルシーターなんて必要なんかい!と実にクソガンコで頭の固いオヤジでありました。

ところが16年デビュー2代目には「なぬ~」だ。全長5m、全幅1.93とデカくなったのにはがっかりだが、見たが伝統スポーツカー911に確実に近づいているではないか!

例のティアドロップヘッドライトに、リアは初代のような高&ケツ高感が減り、これまたスッとなだらかに下りてくる911シェイプ。確かにデカい、クソデカい! が、ズルいところついてくるなぁと。このデザインだとあんまり嫌いになれないじゃんかよ。

さらに中身だ。このパナメーラ4Eハイブリッドポルシェが相当本気になって造ったプラグインハイブリッドだ。ポルシェにしてはローパワー330の2.9リットルV6ターボをメインとするが、今までになくパワフル136の電動モーターも持ち、システムは462それなりだし、最大トルクは4リットルV8ターボに迫り、時速100キロ到達も4.6となかなかのもの。

もうひとつ言うとコイツプラグイン、つまり充電式ハイブリッドで14.1kWhの巨大バッテリーを積んでるから燃費モードならEVとして50km走れる。しかもベタ踏みしなけりゃ時速140キロまでEV走行が可

実際に乗ってもビックリ。まずセンターバカデカい12.3インチディスプレイを用意するポルシェアドバンストコックピットが相当EVっぽい。運転席前の5連メーターは911っぽくてスポーティだが、それでも本当のアナログメーターはセンターだけで、両サイドの4つは液晶モニター。特に右からふたつはスゴい。切り替えると赤外線カメラによるナイトビジョンアシスタントが起動。でも歩行者をとらえることができるのだ。これぞまさしく未来ポルシェ

走っても想定以上のEV感だ。フル充電状態からならイグニッションを入れても室内はシーン。そのままアクセルを踏みだすと、ポルシェらしいグッと蹴り出す加速を見せつつ、静かさがハンパじゃない。単にガソリン改造したレベルじゃなく、間違いなく最初からEVを考えてボディが造られている。

このあたりからコイツが単なる新作電動ポルシェじゃないことに気づいてくる。今、プレミアムEV界で猛威を振るうテスラ対抗。伝統のポルシェが、プライドをかなぐり捨てて新EVメーカーに挑んでいるのだ。

ハンドリングも当然リアルポルシェ。切り始めからポルシェらしい剛性感を見せつつ、全長5mのセダンとは思えないほど俊敏に走り、曲がり、止まる。

この新パナメーラはさほど売れない大セダンでありながら、ボディ格を同じVWフォルクスワーゲングループアウディと共有せず、ポルシェ独自の縦置きFRラットフォームを採用。おかげでエンジン搭載位置を下げた理想的前後重量を取ることができたし、ハンドリングが上質に。サイズを感じさせない、楽しく安全で疲れない新世代ハンドリング追求しているのだ。

一方物足りない点もあって、EV走行は136電気モーターのみだから出足はいいけど、高速じゃおとなしめ。だが、そこはやっぱりハイブリッドフル充電状態でもアクセルまで踏み込めば、勝手に330V6ターボが立ち上がってグォォと加速。エンジンもヴォン!と噛(か)みつくように立ち上がり、懐かしの野性味が味わえる。

モーターだけで走っているときもそれなりに気持ちいいが、エンジンに火が入ったら入ったでこれまた往年のポルシェらしい高揚感がある。最高出は462に上がっちゃうし、速さ奮ではこのハイブリッド状態のほうが上なのだ。

もうひとつ、パナメーラ4EハイブリッドはこれらEVモードハイブリッドオートモードのほか、ほぼ常にエンジンがかかる「スポーツ」や「スポーツプラスモードも選べる。まさにジキルハイドのようにコロコロ性格を変える、1粒で2度どころか3、4度おいしいスポーツドアだ。

コイツポルシェプレミアムEV化の序章なのである!

(撮影/本田雄士)

小沢コージ










1966年生まれ、神奈川県出身。青山学院大学卒業後、本田技研工業に就職。90年に自動車誌の編集者に。著書に『マクラーレンホンダ世界を制する!』(宝島社新書)など多数。TBSラジオ『週刊自動車批評』レギュラー出演中。日本世界カーオブ・ザ・イヤー選考委員

EV化しても残る圧倒的なポルシェ風味…これぞ未来のポルシェだ!