バイの居心地が良くなってきて、こりゃ延泊決定だなと思ったら、あらま。その日の宿は満員だとさ。

これは神様のお告げだなと、別のへ出かけることにした。

「そうだ、クウェート行こう」

私の頭の中には、かの有名なJR東海CM曲の代わりに、アザーン(イスラム教の礼拝の呼びかけ)が流れ始めた。

クウェートは厳格なイスラム国のひとつで、ここもまたオイルマネーで潤ったリッチなではあるが、見どころはあまりない。ドバイからは路となり、交通費が高くつく上に安宿などなく、ホテル宿泊しか選択肢がないのは旅人にはツライとこ。宿で出会った多籍な友たちにも「何しにいくの? なんで行くの?」とめちゃめちゃ不思議がられた。

旅人があまり訪れないということは、つまり情報も少ない。一、手に入った情報といえば、“もしかしたら安宿があるかもしれない”ということと、厳格なイスラム国であるため中で女性がひとりで歩いていることなどないという、男だらけのだってこと。

さらに、この日をきっかけにラマダンイスラム教におけるなる)がスタート世界中のイスラム教徒は日没まで一切の欲を禁じなければならず、飲み食いもしてはいけない“禁欲間”! そんなところへ飛び込んでしまって、果たして大丈夫だろうか?

「なんか怖くなってきた。やっぱり、行くのやめようかな…

勢いで航空券を買ってしまったが、後から緊がこみ上げ、ご飯も喉を通らない。私の身体は確かに出発を拒んでいたが、迷っているうちに出発の時間は来てしまった。

覚悟を決めた私はドバイ空港からの洋に身を包み、ショール(友人の結婚式の時に肩にかけていたやつ)を頭に巻いて、せめてそれらしい格好をすることに努めた。

この時は怖くて仕方がないという気持ちが80、未知のへ向かうワクワク20。恐怖と好奇心が混ざり合ったおかしな感覚であったが、そんな私の緊を解いてくれたのは、今回搭乗するエミレーツ航空

数々の飛行機に乗ってきた中でも一番好きな航空会社で、CAさん美人コスチュームオシャレ! エコノミーでもゆとりのある座席に思わずテンションが上がる。深夜便だったし、明日からは精も体も使うだろうから機内で睡眠をとろうと思っていたのだが、最新の映画っていたためにまさかの映画鑑賞に現(うつつ)を抜かしてしまった。

そしてクウェート空港に着くと、そこは思ったよりも大きな空港で快適。椅子ズラっと並んでいて電もあるので、私はスマホを充電しながらが来るまで眠りこけた。

そしてが来た――。空港を出るのは怖かったが、アライバルビザの手続きをしたら、すぐに内行きのバスがあったので飛び乗り、いよいよラマダン中のクウェートの始まりだ。












9時、男性どころか人の気配のないゴーストタウン

クウェート土が休日なので木曜日に滑り込み、グランドモスクを見学しようと論んでいたのだが、警備員さんが「ラマダン開始で今日はお休みだよ!」だって。ただでさえ見るものがないのに…残念。

仕方がないので、今度は安宿探しだ。

古いガイブックに載っていた住所が曖昧(あいまい)な安宿を探し、外国人労働者が多く生活するというスー(商業地区)の中をウロウロ。ポツポツと店が開店し始めたそこには、確かに男性ばかりで女性の姿は見当たらない。

ラマダン開始で空腹なのか暇なのか、ボーっとベンチに座っているおじさんや、半畳くらいの絨毯を敷いてお祈りをしている人など、私のことはチラっと横で見てくる程度であった。

そんな中、恐る恐る、宿について聞くと、をつけていた安宿はとっくに閉店していたらしく、ホテルのある町の中心へ行けと勧められた。

「仕方ない。宿代は節約できそうにないから交通費を節約。ホテルまで歩こう…」

安宿は見つからなかったけれど、大きな収穫があった。スークの周りをウロウロしていると、落書きされた大きなを見つけた。

青空をバッグにい大きな、そこにはペルシャ文字アラブ系の人物像がポップに描かれていて、なんだかとても素敵なアートだった。後にも先にもクウェートの中でここが一番、私がこので気に入った場所だ。

さらにウロつくと、マクドナルドの傍に何やらインスタ映えするオシャレカフェが集まるスポットを見つけた。ラマダン中で店はもちろん全て閉店していたので、自由気ままにひとり撮影に挑んだ。

「私はクウェートまで来て何をしているんだろう」という気にもなったが、思いがけずこのの意外な一面を見つけたことで、またちょっと緊が解けた。

それにしても、その日は40度以上あるのではないだろうか。日差しが容赦なく旅人を照らす。

足をスッポリ隠したヒートテックレギンスの効果は絶大で、暑くて仕方がないが脱ぐこともできず、私は7km先のホテルまで歩き始めた。

事辿り着くか、途中で倒れるかのどっちかだ…」

実はここまでの間、私は一滴すら口にしていない。

というのも、“郷に入っては郷に従え”だろうと、また尊敬の意も込めて、私もラマダンに挑戦していたからだ。機内で貰ったお水をひとつバッグにばせていたが、それに口を付けるのは日没になってからと決めていた。

熱中症になりそうだ…(ていうか、もうなってる?)」

フラフラになりながら、フィッシュマーケットに辿り着くと、バングラデシュ人やイラン人などが果物や生活雑貨を売っていた。「アラビア語はできる?」と聞かれたがもちろんできるわけがなく、私に近寄ってくるのはだけ。この世で友達だけとなった気分だった。

特に休憩もできず、引き続き、炎下を歩き始めたがさすがに頭がガンガンしてきた。

だいぶ歩いたが、ついにはも途切れてしまったため、残り2kmはスリランカ人のおっちゃんの運転するタクシーに乗り、インド人の経営する1泊5千円ほどのホテルにやっと到着。全く言葉が通じないアラブ人男性より、英語ができる海外労働者に会って、やっと人と話せた。

「疲れたな…」

本日の日没まであと1時間。せっかくここまで頑ったのだからとラマダンをやり遂げて、その後、やっと機内でもらったに口をつけた。

「これが命のというやつか…!」

今まで、人生で飲んだ水の中で一番“”の価値を感じた気がする。

そして、ホテルから外の様子を覗くと、日没とともに多くの男性スーパーの袋を持って現れ始めた。暗くなる前に私も急いでスーパーへ向かうと、買物しているのもまた男性ばかり。

急いでベビーリーフツナ缶を買って帰り、食器がなかったので手で掴んでむさぼり食った。質素であるがファスティング(断食)していたのですぐにおがいっぱい。

やっと落ち着くことができ、再びから外を眺めていると、そこにはイフタールラマダン明けの夕飯)を食べに、カンドゥーラ姿の男性たちがモスクへ集まるが。1時間後には女性子供も集まっていたが、夕飯を済ませてから合流しているらしく、モスクでのイフタールは基本的には男性のみの場のようだ。

“男だらけ”のクウェートを、そっとから覗くだけの

「私は何故、ここにいるんだろう。ここで何をしているのだろうか…」

そんなことを思いながら、気絶するように眠りについた。

This week’BLUE










道路並みは整然としていて、オイルマネーでの潤いを感じる高層ビルニョキニョキと。










旅人マリーシャ










平川梨子9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフシャルブログチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898

旅人マリーシャの世界一周紀行:第186回「ラマダン開始! 男だらけの国・クウェートで禁欲中の“迷える旅人”」