平成30年7月豪雨」の被災地を救援すべく、3万人を超える自衛隊員が派遣されました。その出発前の駐屯地内ではどのような準備がされているのでしょうか。陸上自衛隊練馬駐屯地の様子を取材しました。

陸上自衛隊練馬駐屯地の長い夜

2018年7月8日午後11時過ぎ、筆者(矢作真弓:軍事フォトジャーナリスト)は、東京都練馬区に所在する練馬駐屯地を訪れました。初夏の蒸し暑い夜中にも関らず、多くの隊員が駐屯地内で活動しています。実は、これから広島へ向けて災害派遣される部隊が、出発のための準備をしているということでした。

陸上自衛隊の第1師団は、練馬駐屯地に司令部を置く部隊です。東京都神奈川県埼玉県千葉県茨城県静岡県山梨県の防衛警備を担当する部隊で、首都東京を守る政経中枢師団とも呼ばれている部隊です。

この第1師団に所属する第1後方支援連隊の部隊が、いままさに広島へ向かうための準備を行っていました。普段、見ることができない災害派遣準備の様子をお届けします。

8日午後11時30分ごろ、第1後方支援連隊の倉庫前に次々と大型トラックが移動してきました。このトラックには、派遣される隊員たちの現地での生活に必要な装備品や、被災者のために使用される装備品などが次々と積み込まれていきます。

テント、燃料、発電機、机やイスなど、多くの物品を手際よく荷台に積んでいきます。それと平行して、トラックの荷台の幌に「災害派遣」と書かれた横断幕が取り付けられていきます。この作業は3名1組で行われ、1名が下から上下左右のバランスを指示して、残る2名が幌の上に上って横断幕を取り付けます。

次々と積み込まれる物資 派遣隊員は健康チェックも実施

駐屯地業務隊倉庫前では、係の隊員が、派遣される隊員用の飲料水を用意していました。1名あたり1日2リットルを基準に準備された飲料水の入ったダンボール。これも、大型トラックに積載されます。

別の倉庫前では、増加食の準備が進められています。増加食とは駐屯地食堂や、戦闘糧食、非常用糧食とは別に用意される、過酷な任務などに就く隊員用の追加の食糧のことで、シリアルバーや、カップラーメンペットボトル飲料などが支給されます。

これらの準備は、派遣される隊員ではなく、駐屯地に残留する隊員が作業しています。なぜならば、派遣される隊員たちは別のことをしなくてはならないからです。

派遣される隊員たちは、いつ駐屯地に戻ってこられるかわからないので、多めの着替えや日用品、折りたたみベッド、寝袋などの現地で必要な物の準備をしなくてはなりません。また、出発前には簡単な問診票への記入や血圧測定を行って、派遣前の健康状態を確認します。そして、自らが運転するクルマの準備にも取り掛かります。

ある程度の準備が終わると、残る作業は駐屯地残留隊員に任せて、派遣される隊員は別の場所に集められます。これから出発前の点呼が行われます。

点呼では、炊事支援、入浴支援、給水支援班に分かれます。また、それらの部隊活動を支援する管理班も別に編成されます。各班への達し事項、そして自らが乗っていくクルマごとの乗車区分に分かれて整列します。

ここでは、大まかな指示を伝達したあとに、次の集合時間を伝えて一旦解散させます。ここで、忘れ物などがないか最終的な確認を行うのです。

留守を預かる隊員たちの声を背に

いよいよ出発です。部隊の隊舎前に並べられたクルマに隊員たちが乗り込んでいきます。

メインの通りには、駐屯地残留隊員たちが部隊の旗を持ちながら整列して、派遣部隊を見送ります。

「がんばれよ!」「気をつけてな!」派遣隊員たちを激励する駐屯地残留隊員たち。その声に対して「行って来ます!」「留守をお願いします!」と応える派遣隊員たち。相方の信頼感を感じ取ることができた瞬間でもありました。

車列を組みながら駐屯地を出発する派遣隊員たち。全ての車両が出発するころ、時計の針は9日午前2時を過ぎていました。

次々に到着する東部方面管内の派遣車両

9日の午前5時前、練馬駐屯地のグランドには多くの派遣部隊のクルマが集まっていました。彼らは第1師団の各部隊(午前2時ごろに出発した部隊の後続)と、群馬県に司令部を置く第12旅団の派遣部隊のクルマでした。第12旅団は、群馬県長野県栃木県新潟県の防衛警備を担当する部隊です。今回の災害派遣はこれらの師団と旅団の上級部隊である東部方面隊が指揮を執って派遣されるそうです。そのため、一度、練馬駐屯地に立ち寄って、クルマに給油し、東部方面隊の指揮下に入って行動するといいます。

練馬駐屯地に所属する隊員たちが総出で派遣部隊を見送ります。派遣部隊は、練馬駐屯地を出発したのちに、数箇所の駐屯地を経由しながら、目的地である広島方面に向かい各種の民生支援を行います。

午前5時、示された順番通りにクルマが出発していきます。

全ての部隊が出発したあと、練馬駐屯地内は普段の静けさを取り戻していました。

トラックの幌に災害派遣の横断幕を取り付ける隊員たち(2018年7月8日、矢作真弓撮影)。