普通列車グリーン車自由席特急列車普通車自由席は、どちらもほぼ同じ構造の座席を設けています。所要時間も距離が短ければ大差ありません。となると気になるのは料金ですが、どちらを利用した方が安くなるのでしょうか。

座席の構造はほぼ同じ

関東エリアのJR在来線では、2階建てのグリーン車自由席を連結した普通列車快速列車が多数運転されています。また、一部の路線では特急列車も運転されています。

普通列車グリーン車自由席特急列車普通車自由席は、腰掛けの構造に限っていえば、ほぼ同じ。背もたれを傾けることができるリクライニングシートを横1列に4席配置しており、ロングシートや4人掛けボックスシートが多い普通列車普通車自由席より快適に過ごせます。

スピードは通常、特急列車の方が普通列車快速列車より速いですから、車内で快適に過ごしたいというだけでなく急ぐ必要もある場合は、特急列車を使いたいと思うでしょう。ただ、乗る区間の距離が短かければ所要時間に大きな差はありません。設備も時間も変わらないなら安い方に乗りたいところ。実際どちらが安いのでしょうか。

普通列車グリーン車自由席を使うなら乗車券普通列車グリーン券、特急列車普通車自由席乗車券自由席特急券が、それぞれ必要です。どちらも乗車券は必要ですから、普通列車グリーン券と自由席特急券の金額を比べればいいことになります。

しかし、普通列車グリーン券は距離だけでなく、乗車日やきっぷの購入方法によって金額が大きく変動します。このため、条件によっては普通列車グリーン車自由席の方が安くなったり、逆に特急列車普通車自由席の方が安くなったりします。

営業キロ(小数点以下は切り上げ)が150km以内の区間で、普通列車グリーン券と自由席特急券(関東エリアの特急列車に適用されているB特急料金)の金額を比べてみましょう。

料金の「境界点」は100km

平日(土曜、休日と12月29日~翌年1月3日を除いた日)の料金は、100km以内だと自由席特急券の方が安く、101~150kmなら普通列車グリーン券の方が安くなります。これは普通列車グリーン券を乗車前に駅などで購入する「事前料金」、乗車後に車内で買う「車内料金」のどちらで比べても同じです。

とくに普通列車グリーン券の車内料金と自由席特急券を比べると、その差が歴然とします。50km以内の区間の場合、普通列車グリーン券が1030円なのに対し、自由席特急券は510円で普通列車グリーン券の半額以下。普通列車グリーン券は車内購入の場合に割高な料金設定を行っている一方、自由席特急券はどこで買っても金額は同じため、料金差が大きくなるのです。いずれにしても、100km以内なら特急列車普通車自由席を使った方がいいでしょう。

ただし、土曜、休日と12月29日~翌年1月3日普通列車グリーン券は、平日より安い「ホリデー料金」が適用されます。このため、平日は自由席特急券の方が安い51~100kmは事前購入の場合に限り、普通列車グリーン券の方が安くなります。

また、東海道本線JR東日本JR東海の熱海~三島間をまたぐ区間では、自由席特急券が若干高くなります。一方で普通列車グリーン料金は2社をまたぐ区間でも変わりませんから、普通列車グリーン車自由席を使った方が安くなるケースが増えます。

ちなみに、特急列車普通車指定席を利用できる特急券は、基本的に普通列車グリーン券より高くなります。ただし、全席指定で運転されている常磐線の特急「ひたち」「ときわ」と高崎線の特急「スワローあかぎ」は、ほかの特急列車とは異なる料金体系を採用。平日の50km以内の区間なら「ひたち」「ときわ」「スワローあかぎ」の特急券の方が事前購入、車内購入ともに普通列車グリーン券より安くなります。

運行本数と満席には注意が必要

実際に東海道本線・東京~三島間で普通列車グリーン券と特急「踊り子」の自由席特急券のどちらが安くなるのか、おもな区間で見てみましょう。

東京~小田原間の83.9kmは平日の場合、普通列車グリーン券が事前購入980円、車内購入1240円。これに対して「踊り子」の自由席特急券は930円で、「踊り子」を使った方が事前購入で50円、車内購入なら310円安くなります。一方、土曜、休日は普通列車グリーン券が事前購入780円、車内購入1040円ですから、事前購入なら普通列車グリーン券の方が150円安く、車内購入なら「踊り子」の方が110円安くなります。

東京~熱海間は104.6kmで100kmを超えますから、乗車日や購入方法の違いに関わらず、普通列車グリーン券の方が「踊り子自由席特急券より100~560円安くなります。JR東日本のエリアを越えて東京~三島間の120.7kmになると、その差はさらに大きくなり、普通列車グリーン券の方が170~630円安くなります。

このように少し複雑ですが、基本的には100km以内の区間の場合、特急列車普通車自由席の方が普通列車グリーン車自由席より安くなる可能性が高いといえるでしょう。

ただ、単純に金額だけでは比べられない部分もあります。たとえば運行本数ですが、普通列車は早朝から深夜までひっきりなしに運転されている一方、特急列車はあまり多くありません。東海道本線の「踊り子」なら東京発の下り列車が1日5本(平日)だけ。自分が乗りたい時間帯に特急列車がなければ、そもそも普通列車を選択するしかありません。

また、普通列車グリーン車自由席に乗ってみたら満席だった場合、普通車自由席に移る場合に限り事前購入のグリーン券は無手数料で全額払い戻し(グリーン車の業務員=グリーンアテンダントが発行するグリーン券の不使用証明書が必要)になります。しかし、特急列車普通車自由席が満席だった場合は普通車で立つしかなく、自由席特急券の払い戻しもありません。実際に利用する場合は、こうした点にも注意しましょう。

【画像】ケース別の料金比較表

関東エリアの特急列車(左)と普通列車に連結されているグリーン車(右)。平屋と2階建ての違いはあるが、腰掛けはほぼ同じ構造だ(2017年7月、草町義和撮影)。