文・取材:ででお

 バンダイナムコエンターテインメントからプレイステーション4Xbox One/PCで2018年発売予定の人気フライトシューティング最新作『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』(以下、『ACE7』)。そのメインコンポーザーを務める小林啓樹氏が、2018年6月12日に、東京都内の収録スタジオにて、楽曲の収録を行った。小林氏が語る、『ACE7』楽曲の聴きどころとは?


【画像7点】「『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』メインコンポーザーの小林啓樹氏を直撃! “ゲームミュージック作りに欠かせないもの”とは?」をファミ通.comで読む(※画像などが全てある完全版です)

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小林氏に訊く“ゲームミュージック作りに欠かせないこと”



――まずは、小林さんの近況などをお聞かせください。


小林ゲーム音楽を中心に音楽を作る日々を送っています。いつも部屋の中の作業なので、会議への外出が妙に楽しいこともありますけど…(笑)、およそ毎日音楽漬けの日々を送っています。最近では、ゲームと別業種の音楽制作も関わらせていただくこともありました。某テーマパークで使われるパレート関連の音楽(何であるかはナイショ)や、マンガ蒼き鋼のアルペジオ』15巻特装版イメージアルバム制作、小学校と高校の音楽科用副読本の合唱曲制作などに携わっています。どれも新たな体験で、ちょっとした用語や慣習の違いが楽しいです。



――ゲーム以外でも多忙なのですね。ゲーム関連では『エースコンバットシリーズ以外にも、『ディズニーマジックキャッスル』や『ストリートファイターV』、『大乱闘スマッシュブラザーズ』(メインテーマ:戦場)、最近では『ネコ・トモ』などなど、さまざまなジャンルの楽曲を手掛けられていますが、これらの“ゲームミュージックを作曲するときに欠かせないこと”はなんでしょうか?


小林ずばり「プレイヤーの心情に沿うこと」。これは欠かせません。ゲームは、プレイヤーみずからが主人公となって操作するため、映画などの映像作品と比べて、主人公への感情移入がしやすいメディアなんですよね。ゆえに、どんな場面においても、プレイヤーの気持ちや感情に沿い、かつ少しだけ予想を上回るような音楽が求められます。このことを実現するため、設定資料を読み込み、各シーンで表現したいことをつかんで、音楽制作に活かしていくようにしています。とても難しいんですけども、こちらの設計通りにお客さんに伝わるととてもうれしいんですよ。ゲーム音楽制作の醍醐味だと思います。



――今回、『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』の収録現場を見学させていただきました。コーラスの方々に「ここは窮地をくぐり抜けているシーンを想像して、死にそうな感じで」といった具合に、さまざまな指導をされていましたが、ふだんのお仕事の流れなどもお聞きしたいです。


小林うわっ、聞かれていたんですね……、あれがいつもの様子です。コーラスはかつて私も歌っていたこともあり、あーだこーだ言いがちなんですよ。また、確認と練習がてら、歌い手の皆さんとコミュニケーションを取るのが楽しみでもあります。皆さんホントに歌が上手いので、間近で聴けるだけでもコンサート代払った方がいいんじゃないかと思うほどです。仕事の流れとしては、ごく一般的なもので作曲→歌詞を当てる→マルチにした音源と譜面を作成→録音→ミックスしてマスタリングして、いっちょ上がりです。強いて違いがあるとすれば、練習をちゃんとやってから録音する点でしょうか。音楽に必要な事は、譜面に書き切れるようなもんじゃないですから。現場で直接お伝えし、共に汗かいて録っていく。いつもそんな感じです。


――“いっちょ上がり”まで、たくさんの段階を踏んでいるわけですね……。今回もやはり、プレイヤーがどういった状況でプレイし、楽曲を聴いているかを重視されているのですか?


小林もちろんです。普段の録音では、ココはこういうシーンで……等は持ち込まないのですが、エースコンバットシーンと音楽のシンクロ度合いがキモなゲームですよね。だから、具体的シーンを全員で共有してから録音するようにしてます。まず、大枠で表現したいことを“激動”、“悲哀”、“執念”といった言葉を日本語で書き、細かいところは口頭で伝え、精度を高めていくのです。演奏者にとっても「この部分はなぜ厳つい感じなのか?」という疑問に対する答えへ早く辿り着いた方が、最高のパフォーマンスをしやすい。だから、まずは奏者に詳細が伝わること、その上でベストパフォーマンスを発揮してもらうこと、これが「エースな音」にする秘訣かもしれません。



――現場では、全体的に和気あいあいとしている印象を受けました。本番を前に空気がピリピリしたり、奏者と意見がぶつかったりすることはあるのですか?


小林ありますあります、よくあります。剣山の上に立っているかのような気分のときもありますよ(苦笑)。でも、どうせやるなら楽しくやった方が皆ハッピーじゃないですか。いたらぬところがあったら「さーせーん」とすぐ謝って解決方法を示した方が気持ちがいい。楽しい仕事は音にも表れますから。自分のためにも、協力いただく皆さんのためにも「適度な緊張感と楽しさがあるスタジオワーク」を目指しています。



――『ACE7』は“有人機と無人機”の対比、勧善懲悪でない世界観がテーマになっているようですが、各シーンで流れる楽曲にも、これらのテーマは影響しているのですか?


小林影響しています。今回は“AI(人工知能)”と“human=人間”の関係性をどう描くかをイメージして作っています。目的達成に向け、つねに合理的な判断で進めていくAIと、混乱と葛藤の末に答えを出していく人間。それぞれの良し悪し、魅力を、音楽全体を通して伝えていくべく作曲しています。クライマックスでは、それぞれの要素が混ざっていきます。2色のソフトクリームを想像していただければイメージしやすいかもしれません。バニラチョコとかの(笑)(あぁ食べたい)。そのあたりにも注目して聴いてほしいですね。


――クライマックスの盛り上がりが楽しみです! ところで、『ACE7』に限ったことではないと思いますが、ゲームの楽曲をオファーされた時点では、ゲーム自体はぜんぜんできていないわけですよね。わずかな資料で曲作りをするのは、やはり難しいのでしょうか?


小林楽曲先行か、絵先行かでも変わってきますが、どちらの場合も難しいですね(苦笑)。前者の場合、資料が少ないときはイメージをこちらで好きに作れるので、ある程度自由に楽しくやらせていただいてます。


――たとえばPVやカットシーンの場合、小林さんが作った楽曲に合わせて動きが入るといったことも……?


小林はい、ありますよ。『ACEシリーズの特徴かもしれませんが、曲が到着してから、映像をほぼ作り直しているときもあるほどです。感情の起伏を大事にしているゲームなので、(曲の)いいタイミングでいい台詞が流れることがすごく重要なんです。


――シーンひとつとっても、手間がかかっているのですね。話は変わりますが、『エースコンバットZERO』が出たとき、ニコニコ動画YouTubeなどで『ZERO』動画が大流行したことがありました。ご自身が手掛けられた曲がファンのあいだで盛り上がっているときは、どんなお気持ちになりますか?


小林最初は「一所懸命作ったのに茶化すなよー」とは思いましたが、一度見たら「これはおもしろい。良いですね」と180度考えが変わりました(笑)。以降は、会社の自席でさまざまなバージョンをうなずきながら拝見していたのを思い出します。密かに『ACE』開発者のぼやき版を作ったらスゲー面白いのになー、誰か作ってくれないかなー、と、『ACE6』の曲を作る傍ら思ったりしていましたよ。


――それは観てみたいかも(笑)。最後に、小林さん自身が『ACE7』に期待していることをお聞かせください。


小林“オトナも唸る体験ゲーム”であってほしいですね。私が知る限り“唸りポイント”はたくさんありますから。きっとチームが期待に応えてくれるものと信じています。個人的なオススメのシーンを上げるとすれば、F104 スターファイターの離陸シーンです。私は、幼い頃に入間と横田の基地祭に連れて行かれて以来、大空を自在に飛び回れる戦闘機の虜になったんですよ。でも、その憧れはあくまで純粋に、誰よりも速く、どこまでも高く、自由自在に大空を駆け巡ることへであって、決して人を抹殺する道具へではなかったんですよね。F104の離陸シーンは、シーン中のキャラクターの思いと私の個人的な思いに重なる部分が多くて、お気に入りのひとつなのです。もちろんそのシーンには極めて良い音楽をつけたつもりなので、『ACE7』が発売された暁には、音量をぐぐっと上げて(笑)ぜひ体感してくださいね