少々前のデータですが、OECD(経済協力開発機構)が世界29カ国、15~64歳を対象として行った平均睡眠時間に関する報告(2014年)によると、日本は韓国に続いて2番目(7時間43分)に睡眠時間が短かったそうです。
 
 このように、もともと睡眠時間が短い日本人ですが、季節的にも暑さが本格化しつつあり、寝苦しい夜になってきましたし、寝不足を感じている方も多いのではないでしょうか? 寝不足だとやる気も出ませんし、体もだるくなります。ひいては、仕事もはかどらなくなります。

 そんなときにオフィスで欲しくなるのは、冷えたアイスコーヒーですよね。でも少し待ってください。もちろんコーヒーも効果があるのですが、実は、睡眠不足にはコーヒーよりも効果的なことがあります。それは、階段をつかった昇降運動です。意外に感じる方も多いと思うのですが、これはコーヒーカフェイン摂取以上に、集中力アップ、気分転換、リラックス効果を得られるのです。

 この研究は、アメリカジョージア大学の研究チームが学術誌「Physiology and Behavior」に発表したもので、コーヒーを飲むよりも、身近な場所で10分間の階段の昇降をしたほうが、眠気覚ましに効果があり、活力も得られるということを明らかにしました。コーヒー1杯には大よそ50mgのカフェインが含まれますが、そのカフェインの効果よりも、運動のほうが効果的なのです。また、コーヒーによるカフェイン摂取の効果は、プラセボ(偽薬)を摂取した場合と大差がないということもわかってしまいました。

 この実験に参加したのは、毎晩の平均睡眠時間が6.5時間程度で、カフェインを普段から摂取する傾向がある女子大生18人でした。この被験者たちに、一般的なオフィスの勤務を想定し、立ち上がって運動をする頻度がほとんどないという環境で、1日中パソコンの前に長時間座って、言語能力や認知能力を必要とする作業をしてもらいました。そして、日の間隔を空けて参加者に、(1)カフェインを摂取する、(2)プラセボを摂取する、(3)階段の昇降運動をする(30階分を10分かけて上り下りする)という3パターンの行動をしてもらいました。その結果、運動をしたときには作業に対するモチベーションが向上するということがわかったのです。

 つまり、たった10分間階段を上り下りするような簡単な運動でも、活力を向上させ、自身の感情のエネルギーを強化できるということがわかったのです。

 忙しいビジネスパーソンのみなさんは、まとまった時間を確保してジムに行ったり、プールに泳ぎに行ったりするのはなかなか大変だと思います。しかし、どのオフィスにもある階段を使った10分間の運動であれば、特に道具も必要ないわけですし、わざわざジムに入会したり、時間をつくって通ったりする必要もないので、毎日無理なく続けられるのではないでしょうか。

500mlのお水

 そして運動をすると、水分も失われますし、特にこの暑い時期ですから、何かと喉も渇きますよね。ですから、水分補給をすることも大切です。オススメは500mlのお水です。

 これは、イーストロンドン大学とウェストミンスター大学の研究者らが行った実験に基づくアドバイスなのですが、知的作業に集中する前に約500mlの水を飲んでおくと、飲まずに作業を行った場合に比べて脳が活性化するということがわかっているのです。

 実は身体だけでなく、脳の80%も水分でできているため、水分不足に陥ると、ホルモンバランスの崩れにもつながってしまいます。そのため、ホルモンバランスが崩れる前に、水を飲んで、それを制御しておこう、ということなのです。

 ちなみに、有酸素運動で脳が活性化すると、集中力や記憶力が高まるといわれています。上述したように、階段の昇降運動をしてもいいですし、それをする時間すらない場合や、それをしたあとでも、500mlのお水を飲むことで、脳の活性化を促し、集中力を高めることもできるのです。ただし、お水を一気飲みすると身体に悪い影響を与える可能性もあるので、500mlの水でしたら、2~3回に分けて飲むのがいいでしょう。

 また、冷水を飲むと、身体が冷えるだけでなく、血管や筋肉が固まり、血流が悪くなるということもわかっています。血液の流れが停滞すると、身体に十分な栄養素が行き渡らず、便秘や肩こりの原因にもなってしまいます。最近のコンビニでは常温のお水も売っているので、常温のお水を選ぶのも賢い選択ですね。

 このように私たちの生活に身近にある階段やお水を使った、リフレッシュ方法は、特別な方法と違って、負担も小さいです。暑さが本格化し、厳しい季節になりますが、これらの方法を普段の生活習慣に組み込んで、だるさや睡眠不足に負けず、元気にキリッと暑い季節を乗り切っていきましょう!
(文=堀田秀吾/明治大学法学部教授)

「Gettyimages」より