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7月13日より『ジュラシック・ワールド 炎の王国』が全国一斉公開されました。

ジュラシック・パークシリーズ第5作であり、“ワールドブランドとしては第2弾にあたる本作、今や放棄されて恐竜が野放しに生きているジュラシック・ワールドを抱く島に火山噴火の予兆が!

といった出だしから、「何とそう来たか!」と化す後半の展開など、前作以上に映画館アミューズメントパーク化させてくれること必至。
(ちなみに私は今回のほうが、より好きです)

ネタバレどうこうというほどではありませんが、やはりどんな作品も前情報をあまり入れずにワンダランド体験したほうが得策とも思えるので、今回はその公開を記念して……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街320

日本にはどのような恐竜映画やドラマが作られてきたか、ざっと振り返ってみることにしました!(何が記念なんだか……)

大橋史典が構築した
恐竜ドラマと恐竜映画

日本映画界は『ゴジラ』(54)を筆頭に、今に至る怪獣映画の長い歴史がありますが、そのせいか逆に恐竜そのものを描いた作品はさほど多くはありません。
(ちなみに1991年の『ゴジラVSキングギドラ』では、恐竜ゴジラザウルス放射能を浴びて怪獣ゴジラが誕生したという設定がなされていました)

一方、海外ではサイレント映画の時代から恐竜をモチーフにした作品は多く作られてきていますが、その特撮はコマ撮りストップモーションアニメ方式を用いたものが多く(あと、トカゲなどの爬虫類コスプレを施して恐竜に仕立て上げるB級作品も多数⁉)、日本の着ぐるみ特撮とは大いにテイストを違えたものになっています。

そして時折、日本のそういった技術を取り込んだ合作スタイルで恐竜ものを作ろうという国際的な企画がちょくちょく見受けられます。

1967年から68年にかけて放送されたTV特撮ドラマ怪獣王子』全26話もそのひとつで、これは特殊造形家・大橋史典の技術に目をつけたハリウッドの映画制作会社スクリーンジェムス社の発注により作られたもの。

内容は、太平洋上に出現した火山島の噴煙による旅客機墜落事故で行方不明になっていた伊吹博士の幼い双子の兄タケルが、実は島で首長竜プロントサウルス(何と学術的には恐竜に分類されないのだとか! でもここでは一般的イメージで捉えさせていただきます)に育てられて成長。

やがて、ともに育った子ども恐竜ネッシー(ネス湖のネッシーから採ったのであろうネーミングが時代を感じさせますね)にまたがり、タケルは火山島のウラニウム鉱脈を狙って襲来してきた異星人や侵略怪獣と戦うのです。

怪獣王子”というタイトルながら、ここでのネッシーは溶岩の熱で卵が孵った突然変異の恐竜であり(口から火を吐くこともあります)、敵の怪獣も、特にシリーズ後半は恐竜をモデルにした造形のものが多く見られます(これには67年に公開されたアメリカ映画『恐竜100万年』の影響も大きいとか)。

ゴジラ』の頃から特撮造形に関わり(諸説あります)、俳優としても黒澤明監督『用心棒』(60)などに出演(ちなみに劇中、野良犬が加える片腕を作ったのも彼とのこと)するというユニークなキャリアの持ち主でもある大橋史典は造形に関して凝り性でも知られ、本作でも6メートルサイズネッシー着ぐるみにこだわりすぎて、肉厚すぎる上に鉄骨まで入れてしまったことで全く動かないといったトラブルもあったとか。

1960年代半ばに始まった第一次怪獣ブームのさなかの作品で、特撮も今の目で見るとキッチュに映えたりもしますが、恐竜にまたがりブーメランを武器に戦うタケル少年(最初の頃は「オーラ!」しか言葉を話せませんでした)の勇姿に、私も含めて当時の子どもたちは憧れたものでした。

さて、その大橋史典がおよそ10年の時を経て造型を手掛けた映画が『恐竜・怪鳥の伝説』(77)です。

これは『JAWS』(75)の世界的大ヒットによる動物パニック映画ブームの中、ネス湖に生息していると謳われる伝説の未確認動物ネッシー(プレシオサウルスの生き残りとみなされています)のほぼ全身を映した(?)水中写真が75年に話題になったり、76年にエゾミカサリュウ(現在ではこれも恐竜とみなされていません。学術的に恐竜とは「陸棲爬虫類」という定義で、海棲爬虫類などは除外されるのです)の化石が発見されたことに端を発する恐竜ブームも相まって、東映が製作した、怪獣映画というよりも動物パニック映画として恐竜を捉えたものでした。

(余談ですが、当時は東宝もイギリスハマー・プロと合作で『ネッシー』を企画し、ポスターまで全国東宝系の劇場に貼られていましたが、当時のポンド・ショックによるハマー・プロの経営不振によって頓挫してしまいました)

富士山麓西湖にプレシオサウルスと怪鳥ランフォリンクスが現れて人間を襲うというストーリー展開の中、ここでは恐竜に人が食われるシーンの残酷度が強調されており、かと思うと主人公渡瀬恒彦がどこかしらヤクザ映画然としていたり、サイケな主題歌や音楽に心惑わされたり、何よりも大橋の造った恐竜は『怪獣王子』の頃と変わらぬキッチュさで、クライマックスの恐竜同士の死闘もどこかゆるい仕上がりとなっています。

公開当時は、一体自分は何を見ているのだろうといった摩訶不思議な気持ちに囚われたものでしたが、時を経て見直すとどのシーンも妙に覚えている一種のトラウマカルト映画として、憎めなくも微笑ましいものに印象が変わったものでした。

ちなみにこの作品、同時上映は先ごろ連載が終了したばかりの水島新司原作の『ドカベン』実写版と、ときのスーパーカーブームに乗せたドキュメンタリー映画『池沢さとしと世界のスーパーカー』。

そして本作が公開された77年4月29日からおよそ1か月後の5月25日アメリカでは『スター・ウォーズ』がお披露されるのでした!

円谷プロの恐竜三部作と
アメリカ合作映画

ウルトラマンシリーズでTV特撮ドラマの新境地を切り開いた円谷プロも、恐竜をモチーフにした特撮TVドラマを制作しています。

近未来の地球に復活した恐竜の保護を任務とする『恐竜探検隊ボーンフリー』(76~77)と、復活した恐竜帝国と戦う『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(77~78)、そしてタイムGメンの活躍を描く『恐竜戦隊コセイドン』(78~79)。

これらを“円谷恐竜三部作”と呼ぶ向きもあります。
(また、これらの前哨戦として、怪獣化した恐竜と戦う『ファイヤーマン』も1973年に作られています)

ユニークなのは『ボーンフリー』『アイゼンボーグ』は人物をアニメで、特撮を実写で描いていること(『コセイドン』はオール実写)。

また『ボーンフリー』の特撮はモデルアニメーション、『アイゼンボーグ』は着ぐるみ、『コセイドン』はその融合といった違いもあります。

ちょうど『ウルトラマンレオ』(74~75)でウルトラシリーズにひとまず幕を下ろしてまもなかった円谷プロとしては、従来の怪獣とは一味違う恐竜に更なる活路を見出そうとしていたのでしょう。

また、この一連の流れの中、円谷プロアメリカのランキン=バス・プロと提携して『極底探険船ポーラボーラ』(77)を製作しています。

世界的ハンターでもある大富豪(『アラモ』などの名優リチャードブーン)が、もともと石油探索のために建造した地底探険船ポーラボーラに乗って、恐竜が今も生息する地底の秘境にたどり着く冒険映画。

もちろん円谷プロは特撮を担当し、ティラノサウルストリケラトプスなどを着ぐるみで巧みに表現しています。

監督は小谷承靖とアレックス・グラスホフの共同で、撮影は黒澤映画の名手・上田正治、そして主題歌をナンシーウイルソンが歌っているのも驚き。

全米ではTVムービーとして放送され、日本では劇場公開されました。

亡き妹への想いをこめた
『REX 恐竜物語』

さて、こうした70年代後半の恐竜ブームから時を経て90年代に突入し、『ジュラシック・パーク』が発表された1993年、実は日本でもそれにぶつける形で制作された恐竜映画が作られました。

ムツゴロウこと畑正憲の同名SFファンタジー小説を原作とする角川映画REX 恐竜物語』です。

北海道の山奥で発見された恐竜ティラノサウルスの卵を孵化して生まれた恐竜レックスと、古生物学者(渡瀬恒彦が『恐竜・怪鳥の伝説』に続いて恐竜映画に出演!)の愛娘・知恵との交流と冒険を描いたファミリー映画。

さすがに『ジュラシック・パーク』人気には及ばないまでも配給収入22億円という、当時の松竹の歴代配収1位を計上。

(もっとも本作の公開まっただなかに、監督の角川春樹が麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたことで、興行のロングランを中止。この事件がなかったら、もっと記録は伸びていたことでしょう)

レックスクリーチャークリエイトとして『E.T.』(82)のカルロ・ランバルディが招かれましたが(マジに、どうして恐竜をモチーフにした映画って、こうも国際交流が図られがちなのでしょう?)、さすがに特撮も演出の妙も『ジュラシック・パーク』に及ぶべくもなく、案の定、うるさ型の映画マニアなどからは蔑視されました。

それでも、当時名子役と謳われて人気を博していた安達由実とレックスとの間で繰り広げられる諸描写は子どもたちに好評で、ファミリー映画としての使命はまっとうしていたと思います。

角川映画の創始者でもあった本作の監督・角川春樹は年若き妹を亡くしており、そのためか彼が少女を主人公に監督した映画は、常に慈愛深い目線が貫かれています。

REX 恐竜物語』も例外ではなく、だからこそピュア子どもたちの心にこそ、彼の想いが届いたのでしょう。

スーパー戦隊シリーズの
恐竜モチーフもの

この後『ジュラシック・パーク』以前以後と区別されるほど、デジタルを駆使したリアルな特撮技術は飛躍的に向上していきますが、逆に『REX』に至るまでの日本のアナログ特撮の素朴な味わいが徐々に消え失せていった感も否めません。

正直、今回紹介した作品群は現在では「ちゃちい」と嘲笑されることが多々あるのも事実ではありますが、少し視点をずらせば、キッチュではあれ手作りの味わいに満ちた日本のカツドウヤさんたちの職人芸として、微笑ましくも懐かしく、そして楽しく捉えることもできるのではないでしょうか。

現在におけるリアルアミューズメント感覚の最高峰と呼んでも差し支えない『ジュラシック・ワールド 炎の王国』を堪能した後、こういった日本の恐竜特撮映画にも温かな目を注いでいただけたら幸いです。

最後に、『ジュラシック・パーク』公開の1年前、恐竜をモチーフに作られたスーパー戦隊シリーズ第15弾「恐竜戦隊ジュウレンジャー」(92~93)は、その後アメリカで「パワーレンジャー」(93~94)としてローカライズされます。

恐竜モチーフスーパー戦隊シリーズも、2003~2004年の第27作「爆竜戦隊アバレンジャー」、13~14年の第37作「獣電戦隊キョウリュウジャー」と定期的に作られ続けています。

アバレンジャー」はアメリカで「パワーレンジャー・ダイノサンダー」(04~05)とローカライズ。

キョウリュウジャー」はアメリカで「パワーレンジャー・ダイノチャージ」&「パワーレンジャー・ダイノスーパーチャージ」(15~16)とローカライズされ、また韓国ではオリジナル続編「獣電戦隊ジュウレンジャーブレイブ(17)も作られました。

本当に、恐竜をポイントとする映像的国際交流の奥には、深い“何か”がありそうですね……。

あ、アニメーション映画の『映画ドラえもん のび太の恐竜』(80)及びそのリメイク映画ドラえもん 新のび太の恐竜2006』(06)もお忘れなく!(さらには『おまえうまそうだな』みたいなものもありましたね)

(文:増當竜也)

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