漫画家・押見修造の代表コミックを、『百円の恋』の足立紳の脚本で映画化した湯浅弘章監督作『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』。胸打つ青春映画でダブル主演を務めるのが、同じ2002年まれの実力派女優、南沙良と蒔田彩珠だ。コンプレックスを抱える少女を演じて交流を深めた二人が、仲良しエピソードを明かして少女らしい素顔をのぞかせた。

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 青春の葛藤や苦悩を映し出す本作。吃音(きつおん)に苦しむ高校生・志乃を、『幼な子われらに生まれ』で印象的な女優デビューを果たした南が演じ、志乃の歌声を聴いてバンドに誘う、ギターと音楽が生きがいなのにもかかわらず、音痴な加代を『三度目の殺人』やドラマanone』の好演が記憶に新しい蒔田が演じている。

 「自分に重なる部分がたくさんあると感じました。たくさんの人の前で自分を表現するのが苦手だったり」と志乃には共感する部分が多かったという南。だが、技術面の“吃音”には苦労した。「実際に志乃と似た症状の方にお会いしてお話しさせていただきましたが、吃音は人によって異なるので難しかったです」と振り返る。

 蒔田も加代に共鳴した。「初めて会った人と積極的にコミュニケーションを取ることができない。本当は関わりたいし、もっと相手のことを知りたい、仲良くなりたい。でもどう話しかけていいのか分からないという気持ちはとてもよく分かります」。そして「加代は志乃に自分と近いものを感じている。音痴なことで人に笑われてきた加代だからこそ、きちんと志乃の気持ちをくみ取りたいと感じたんだと思います」と続けた。

 蒔田にも技術面での苦労があった。初めて挑戦したギターだ。「加代はギターが一番大切で音楽が大好き。だからギターはすごく練習しました。私も普段、何をするにも音楽を聴いているくらい、音楽はなくてはならないものなんです。ギターが弾けるようになってすごくうれしいです」。

 空き時間には、蒔田のギターに合わせ、南が劇中にも登場する『世界の終わり』(ミッシェル・ガン・エレファント)を歌っていたといい、南は撮影でも路上ライブの場面で、二人が「一体になれた」と話す。

 実は本作のキャスティングは先に蒔田が決まり、志乃役のオーディションには蒔田も立ち会っていた。そのときから、蒔田は南と馬が合ったと述懐する。

 「加代が志乃にメモ帳を渡す場面をやったんです。テンポが合うというというか、ちゃんと気持ちを受け取ってキャッチボールできた感覚がありました。あそこは二人の物語の始まりなので、本番でも大切にしたいと思っていましたが、不安なくできました」。

 相性の良さは、ロケ先で宿泊していたホテルでのエピソードからも伝わってくる。

 「沙良が、ずっと私の部屋にいたんです。自分の部屋のお風呂に入りなさいって言っても、私の部屋のお風呂に入るし」と蒔田が暴露すると、隣で「うふふ」とほほ笑む南。蒔田の部屋に南が泊まっていったことも。「お風呂から上がって、そのまま寝ちゃったんですよ。朝も、起こそうとしても全然起きなくて、『起きてるってば!』って怒るんです(笑)。でもそこがかわいいんです」と蒔田が話すと、南は南で「彩珠は、甘えたがりでもあるんです」と明かす。

 「え、そんなことあった?」と驚く蒔田に、「私が寝そうになると、くっついてくるんです」と南が明かすと、「遊びに来てるのに寝ちゃうから。それが寂しくて」と応じる蒔田に、「すっごくかわいかったです。キュンと来ました」と南。

 共演者とひとつのベッドで一緒に寝たのは初めてだと、笑い合う二人は昔からの親友のよう。だが、劇中では、もう一人のクラスメイトの出現によって、志乃と加代の距離は離れていってしまう。

 そうした青春期ならではの関係性を、二人は「すごくリアル」だと声をそろえる。そして出来上がった作品を振り返った。「押見先生が、志乃も加代もキラキラしているんだけど、でもすごく生々しくて、ラストの終わり方もすごくよかったと。私も同じで、ラストもとても気に入っています(南)」。

 「友達とのぎくしゃくした感じは誰でも経験があると思うし、実際に今、経験している人もいると思う。同年代の人にも大人の方にも、勇気を与えてくれる作品になったんじゃないかと思います(蒔田)」。日本映画界を担っていくだろう実力派の二人が、初主演作で、青春のもがきを激しく噴出させた。(取材・文・写真:望月ふみ)

 映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は全国順次公開中。

『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』南沙良&蒔田彩珠にインタビュー クランクイン!