LiVE is Smile Always~ASiA TOUR 2018~[eN]  2018.6.15  日本武道館

アジアツアーの一環である武道館2デイズ、その2日目。客席は全方位開放、つまりステージが360°オーディエンスに囲まれた状態でのライブなのだということは事前に聞いていたけども、会場に入った瞬間、思わず声に出して笑ってしまった。だって、ツアータイトルに因んだ“円”状のステージセットがまるで陸上競技場のようだったから。高慶CO-K卓史(Gt)、生本直毅(Gt)、柳野裕孝(Ba)、石井悠也(Dr)、白井アキトKey)というサポートバンドの面々が構える舞台をグルっと囲むように設置されたピンク色の花道。その花道はサイドスタンドバックスタンド席目掛けて急勾配の上り坂になっており、要所要所にはお立ち台も設置されている。さらに直線状の花道がアリーナの方に伸びていて、先端にはサブステージ的なポイントがあるのだ。みんなの方に少しでも近づきたいからと、場内を全力ダッシュするLiSAの姿が目に浮かぶ。それがあまりにも彼女らしかったから、ああ、LiSAだなあと、ライブスタート前からつい興奮してしまったのだ。

そして開演。サイリウムピンク色の光に包まれたLiSAが、その光景をぐるっと見渡してから唄い始めたのは「Believe in myself」。デビュー作『Letters to U』の冒頭に収録されているこの曲は、まさにLiSAの原点そのもの。<いつか この曲聴いた 誰かが/今を 愛せたらいい>と、彼女が唄う理由を綴ったこの曲がまず初めにここで唄われた意味は大きかった。彼女が初めて武道館ステージに立ったのは、まだ小学生の頃、オーディションを受けるためだったという。そこから時が流れ、LiSAになった後の2014年1月にはこのステージでワンマンライブを行った。しかしその日は思うようなライブをすることができず。そしてその1年後、2015年1月の2デイズ公演でリベンジを果たしたのだった。彼女にとっての武道館とは、夢も、憧れも、挫折も、後悔も、勇気も、愛情も、そのすべてが詰まった大切な舞台だと言って差し支えないだろう。人差し指を天高く掲げた直後、バンドイン。「行くよ、武道館!」と投げかけてから始めた、正式な1曲目は「Rising Hope」。2014年武道館公演直後に生まれたこの曲は、彼女のことを何度だって強くさせてきた曲だった。

LiSA photo by hajime kamiiisaka

LiSA photo by hajime kamiiisaka

ライブ全体のコンセプトは、ツアータイトルにもある[eN]という言葉に由来している。「まだオタマジャクシだった頃のモモコ(公式キャラクター)がLiSAに出会うまで」というストーリーアニメーションに沿って、私たちは、8つの[eN](炎・援・怨・艶・円・演・宴・縁)が割り当てられたセクションを楽しむことができた。アニメーションの演出はこれまでのツアーでもあったが、漢字を使用した演出は今回が初。おそらく今回のツアーアジア各国でも展開されることを鑑みた上で練られたアイデアなのだろう。そしてこのコンセプトがとてもよくできていて、LiSAというアーティストの魅力が最大限に引き出されていた。例えば冒頭。“炎”のセクションでは、客席を見て思うこともたくさんあったろうに、あえて笑顔を見せず、凛とした表情で唄いきってみせる。一転、「Rally Go Round」から“援”のセクションが始まると、例の花道を猛ダッシュし、客席を指さしたり手を振りながらのパフォーマンスに移行。「エレクトリリカル」ではおなじみの振り付けを会場全体で楽しむ場面もあった。かと思えば、“怨”にあたる「EGOiSTiC SHOOTER」では黒色のマントを羽織りながら幸福な空気を切り裂くようにシャウト。“艶”のセクションでは真っ赤な着物風の衣装に着替え、女性らしい色気を滲ませてみせた。特に「DOCTOR」。ライブの度に新たな表情を見せてくれるこの曲はついに、マイクスタンドとの絡みすらエロティックに見えるほどの域に達してしまったようだ。

各セクションごとに声色から表情、目線や動作に至るまでを大きく変化させながらパフォーマンスしていくLiSA。先に書いたように武道館は彼女にとって思い入れの強い場所だが、変に力が入りすぎている感じもなく、言うなれば、ナチュラルに圧倒的という最高の状態である。演じ分けるが如く曲に憑依していく様子は圧巻で、様々なタイプの楽曲に挑戦することによって多彩な表情を獲得していった、シンガーとしての確かな実力を身につけ自らの道を切り拓いてきた、彼女のすごさを改めて痛感させられた。真っ白なドレスを纏って唄い上げた「シルシ」、<手にした幸せを 失うことを恐れて 立ち止まっているより/一つ一つ大きな 出来るだけ多くの 笑顔咲かせようと たくらむ>という一節にはLiSAの在り方がよく表れているが、とはいえこの人は最初からずっと恐れ知らずだったわけではない。中盤のMCでは、このように胸中を打ち明ける。

「4年前は正直最悪でした。本当に広くて、みんなが本当に遠くて、不安でいっぱいだった。でも今日は“あ、みんながこんなに近くに感じる”って思いました」
武道館には魔物が棲んでいるって言うけど、多分それは、自分のドキドキを積み重ねて作ったものだと思うんです。そんな魔物と戦った初めての武道館から4年、こんなにもたくさんの人達と一緒に、ベストアルバムのお祝いとして戻ってこれたことが本当に本当に嬉しいです。ありがとうございます
「子供の頃に夢見た頃から数えたら20何年になるけど、その頃は、こんなにお客さんが居てくれる武道館を想像することはできませんでした。歌うことが好きだなって歌うことを夢にして、岐阜から出てきて、今まで一生懸命歩いてきて。……何が言いたいか伝わってるかな? とっても嬉しいってこと。武道館でこうやってみんなと遊べるシンガーになったんやな、ひとつのレガシーを残せたんやな、って」

そのあとエレキギターを弾きながら披露したのは、新曲「WiLL~無色透明~」だった。元々は「曲作りの時ぐらいしかギターを触らない」と言っていたLiSA。そんな彼女がおぼつかない手つきでどうにかギターボーカルにトライしていたのは、2015年3rdアルバム『Launcher』を引っさげたツアーをしていた時のことだったが、きっとあの頃から相当練習を重ねたのだろう。冒頭に鳴らされたAメジャーコード、その毅然とした響きには確かな成長が表れていた。

LiSA photo by hajime kamiiisaka

LiSA photo by hajime kamiiisaka

ドレスの裾をたくし上げながら再び花道へと駆け出し、「Hi FiVE!」から一気にラストパートへ。ライブの温度感を反映してアレンジアップデートされた「ROCK-mode’18」でさらなる熱狂を生み出すと、ジュリ扇をはためかせながらの「Psychedelic Drive」、そして「コズミックジェットコースター」でさらに勢いを加速。「一緒に唄って!」と「crossing field」「Catch the Moment」ではオーディエンスと声を重ね、大きな一体感を生み出した。そうして辿り着いた「Mr.Launcher」。<僕が勝ち取った最強のピースを>というフレーズを聴いてフラッシュバックしたのは、ライブの始まりにLiSAが必ず投げかけていたあの合言葉だ。先に挙げたギターの話もそうだが、ライブの度に新たな挑戦をし、時には失敗してしまっていた姿を知っている人ならばきっと分かっているはずだ、この人は決して器用に何でもこなせるようなタイプではないのだということに。それでも“自分の好きなことで思いっきり遊びたい”という気持ち、のちに芽生えることとなった“目の前のあなたを笑顔にさせたい”という気持ちをエンジンにして、挑み続けた彼女が生み出したこの空間は、確かに、その手で“勝ち取った”遊び場といえるだろう。

トレードマークチェック柄をあしらった衣装に着替えたあと、披露されたもうひとつの新曲の名は「Believe in ourselves」。この曲を唄い終えたあと、彼女は涙を流しながら「今日ここに来るために、しっかり唄ってこれたんだなと思いました」「そんなつもりないかもしれないけど、みんなが私を肯定してくれたんです。みんなが私の光になってくれました。ありがとう」と想いを溢れさせた。“myself”は“ourselves”になり、一人の少女のための歌は、みんなのための歌へと変わっていった。自分の弱さを知っている人だからこそ、ステージ上では強くありたいというストイックな意思を持つに至った。弱虫な自分のことをなかなか愛すことができなかったからこそ、自分を慕う相手の幸せを心から願うことができた。私たちが惹かれたのは、そんなLiSAの歌にある、負けず嫌いでちょっと強がりなところなんだと思う。そんなことを物語るかのようにラストの「best day, best way」では、満開のシンガロングがあちこちで咲いていく。それは、とても温かな光景だった。

今や国内外から熱い視線を集めており、海外でのライブ経験もあるLiSAだが、ここまで大きな規模のアジアツアーを行うのは今回が初。本人の中には不安に思うようなこともあるかもしれないが、この武道館2デイズ、そして6月30日7月1日に開催された大阪城ホール2デイズを経て、確かな手応えを得ることができたのではないだろうか。「アジアツアー行ってきます!」と笑うLiSAにみんなで「いってらっしゃーい!」と返したところで、この日のライブは終了。ギュッと結んだ“縁”に背中を押されながら、LiSAは新たな旅へと繰り出していく。


取材・文=蜂須賀ちなみ  撮影=hajime kamiiisaka

LiSA photo by hajime kamiiisaka