最後に「15年間シドやり続けて良かったー!最高の景色です」と言って、とびきりの笑顔を浮かべた明希。「みんなのことを何倍も何倍も好きになったツアーでした」とShinjiが今回のツアー全体の感想を伝えると、ゆうやが「感無量です。これからも一緒に走り続けましょう」と今後についてもコメントを届けた。感慨深げにそれを聞いていたマオが、ゆっくりと彼らに近づき、労うようにひとりずつ肩を抱き寄せいくと、場内にはこの上ない多幸感が広がっていった。

6月28日、シドが開催した全国ライヴハウスツアーSID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018』の追加公演最終日。ファイナルらしいテンションの高い熱狂と、温かい感動に包まれた夜だった。この日のコンセプトは“インディーズ曲限定LIVE”。会場となった東京・豊洲PITのフロアを埋め尽くした観客は、コンセプトライヴを観られるのはこれがラストということもあって、開演前から熱気を帯びていた。そこに冒頭から「アリバイ」、「蜜指〜ミツユビ〜」を連射してぶちまけ、マオが<愛してるねぇ愛してる>と歌いながらステージ前方の観客の中に顔をうずめていくと、フロアからは割れんばかりの黄色い歓声が沸き起こる。リリース当時、ビジュアル系にはまったくいなかった渋谷系ティポップスをいち早く取り入れた「シャッタスピード」、「and boyfriend」などは初聴きのファンも多かったのか、これを聴けて嬉しいという空気が会場に充満。同曲でマオが右足をぴょんとかわいく蹴り上げる仕草は当時のまま。しかし、Shinjiのワウギターのカッティング、明希のファンキーベースとともに裏打ちで曲をグルーヴさせていくゆうやドラミングなど、バンドアンサンブルは当時とは比べものにならないほど精度が高まり、3つの音が整合的に絡み合い“今”のシドを存分にアピール。今のサウンドで聴くと、「その代償」も、インディーズ時代のシドが日本的な哀愁歌謡メロに、サックスをフィーチャーして80年代の洋楽的ニューロマファンクを融合させた音にトライしていたことがよくわかる。

MCでは、まず明希が「今日は気持ちも心ん中も全部インディーズ。むちゃくちゃやるからな」と力強く宣言。「アリバイ」を作ったShinjiは、この曲がマオの歌詞で九州が舞台の歌になり、ファンの手で<バイバイ>のフリが加わって「この曲が完成した」と言い、「みんなでもっとインディーズの曲を育てましょう」と讃えた。ゆうやは15周年を迎えたことについて「最近はもっぱら“あれが良いらしいよ”と健康の話ばっか(笑)。みんなが健康でいる、これがバンドを長く続ける秘訣」といった後、「ウチの1番の健康オタク」と言ってマオを紹介した。マオは「アリバイ」を出した頃を振り返り「俺、ちょいポチャだったじゃん?(笑)。当時はこうやって髪の毛で顔の輪郭を隠していたんだよ。痩せればいいのにね〜」と打ち明け、場内の笑いを誘った。

そうしてライヴ中盤戦、会場のムードは一変。「ホソイコエ」、「ハナビラ」を続けたアクトは、今のシドの中でも、マオのボーカル150%全開でしっとり、美しくこれらの曲の魅力を最大限に引き出し、オーディエンスをステージに釘付けにしていった。歌い終えたマオが「歌詞の世界に入り込んで歌いました。俺の中でもバラードは特別。人生の一大勝負だと思って歌っているので。それがちょっとでも伝わると嬉しいです」と言うと、賛同を示す温かい拍手が会場に広がっていった。そうして、メンバー4人の美声がスキャットで響き渡る「ノイロヲゼパアティー」、「誘感コレクション」と続けて後半戦、熱狂の沸点を作り出そうとしたそのとき、マオが前方でつぶれているファンを見つけ、音を止めて「大丈夫?」と声をかける。それでも我慢していると「恥ずかしいことじゃないから、おいで?」と優しく声をかけてファンを救出したり、「今日は2回も「誘感〜」が聴けてラッキーじゃん!」とそのことを逆手にとって、場内のムードをすぐさま元に戻していったあたりは、15年のキャリアに裏付けされたマオの手腕が光った部分。

プロポーズ」の後、「循環」のメンバーコールは最終日ということもあって各々長めにコールを求め、マオは“あなた”コールリクエスト。「あなた」と叫んで全員が咲くと「和服姿で玄関で三つ指ついてって言ったのになんで咲くんだよ!」と言いながらマオも観客もニヤニヤ。そこから本編ラストの「吉開学17歳(無職)」までメンバー、観客一丸となってものすごいテンションで沸点まで駆けあがって、本編は終了。

そんな盛り上がりの後に迎えたアンコール。歌い出したのはまさかの「live」。これまで彼ら自身、さらにはたくさんのファンも救ってきた曲のアクトに、何人ものファンが目頭を拭う。歌い終えたマオが「人には心のキャパシティーがあって。100%まで我慢する前に1回逃げてもいいと思う。そういう場所を用意してください。そうしたら人生うまくいくと思うんだ」と優しく語りかけると、さらなる感動がオーディエンスを包んでいった。その想いを乗せたまま「夏恋」、「Dear Tokyo」、「眩暈」でトドメを差し、満場の盛り上がりを作ってみせたシド。最後にマオが「今日のライヴは“みんな”で作り上げたライヴだから。15周年も、その先もずっとシドのことを愛してください」と伝え、次のツアー『いちばん好きな場所2018』での再会を約束して、ライヴは幕を閉じた。

写真/今元秀明 文/東條祥恵

セットリスト
1.アリバイ
2.蜜指〜ミツユビ〜
3.シャッタースピード
4.and boyfriend
5.Re:Dreamer
6.その代償
7.ホソイコエ
8.ハナビ
9.ノイロヲゼパアティー
10.誘感コレクション
11.プロポーズ
12.循環
13.出来損ない
14.吉開学17歳(無職)
-アンコール-
EN1.live
EN2.夏恋
EN3.Dear Tokyo
EN4.眩暈

【ライヴレポ】シド、“インディーズ曲限定LIVE”で幕を閉じた全国ライヴハウスツアー!「15年間やり続けて良かったー!最高の景色です」