ゲームクリエイター鈴木一也氏といえば、代表作として「女神転生シリーズや「真・女神転生シリーズ、そして「モンスターメーカーシリーズなどの名作を世に送り出した偉大な人物だ。このコーナーメガテン大司教鈴木一也邪教の館」は、そんな鈴木一也が、悪魔の大司教として悪魔や天使を召還し、あらゆる事象に対して言及する前代未聞の場である。

ちなみに鈴木一也氏は、「女神転生」から始まったゲームシリーズの世界観やシステム、そしてあの名言「コンゴトモヨロシク」を創り出した人物であり、ゲーム業界やファンにおいてカリスマ的存在でもある。

・サモン・レオナルド
鈴木大司教「我は汝を召喚す、生まれ無き者よ! ……アオス! アバオス! バスム! イサク! サバオス! イアオ! 汝、迅く来たりて我が前に従え! 古の森の王、黒き貴人、サバトの主レオナルドよ!」

レオナルド「鈴木大司教か。久し振りだな」
大司教「良かった今回はちゃんと呼び出せた……。歓迎するぞ魔女の王レオナルドよ」
レオナルド「前回は猪口才な猫が割り込みおったからな。して此度の望みは何だ?」
大司教「実は前世紀末日本にオウム真理教というカルト宗教組織があってな。信者を増やし、革命を夢見ていた。その過程で逆らう者を殺し、最後は地下鉄サリンを撒き、多くの死傷者を出した。未だに後遺症に苦しむ人々もいる」
レオナルド「そのくらい知っておる。オウムの何を知りたいのだ?」
大司教マスメディアと一部政治家は、謎が解明されぬまま首謀者7名の死刑執行がされたと騒いでおる。しかし実際は教祖麻原彰晃こと松本智津夫の真の動機以外は、すべて判明している。そこで事件の真の意味は何だったのかを知りたくてな」

レオナルド「そうか、教えぬでもないが、お主アンドラスにはずいぶんと馳走したそうではないか? なぜわしには茶だけなのだ?」
大司教「そう言われる と思って用意しておいたぞ。見よ、国産豚のローストだが、じっくり低温で焼き上げた一皿である。ふんだんにスパイスを利かせ、自家製セージローズマリーで香り豊かに仕上げた。旨し肉汁をたっぷり吸ったキノコたちと一緒に食するがよい」
レオナルド「むむう、なんとこの肉の柔らかいことかっ! 歯を使うまでもなく、我が強き舌で蹂躙する柔肉が口の中で崩れ、汁の溢れ出す悦楽よ! そして豚の香りとニンニクとが醸し出す調和に、ハーブが筆を走らせたような爽やかさ……うむ、じつに満足である」
大司教「是非堪能せよ」

世紀末に修行するぞ!
レオナルド「…………そもそもなぜオウムが流行ったのか? ひとつには世紀末ブームがあろう」
大司教「その世紀末ブームにはわしも乗っていたからな。何より日本人の心には五島勉の『大予言』が刻まれておった」
レオナルド「何だそれは?」
大司教「知らぬのか? ノストラダムスの『百詩篇集』の日本に於ける勝手解釈本だ」
レオナルド「なに? あのミシェル・ド・ノートルダムか。懐かしい名を聞いた。あやつの作るジャムは美味かったぞ」
大司教「詩篇の中のひとつに、人類が世紀末に滅亡すると解釈したものがある。
 
1999年7の月、
空から恐怖の大王が降り立つ
アンゴルモアの大王を蘇らせるため
その前後マルスは良き支配をする

 
レオナルド「その詩がなぜ世紀末の人類滅亡の予言になるのだ?」
大司教「さっぱり分からぬが、とにかくこれがそのように解釈され、日本の多くの若者が信じ込んだのだ」
レオナルド「他愛もないことよ。されどそれで合点がいった。オウムに集う若者は、そうした人類滅亡論を信じていた。ゆえに麻原彰晃の救済を求めるようになった」
大司教「五島勉も罪を作ったものだ」
レオナルド「さらにもう一つある。オウム真理教ではちゃんと修行ができたのだ」

大司教「修行だと? 日本の寺院でもできるところがあると思うが?」
レオナルド「修行すれば覚醒できて、超能力が使えるなど、そんなワクワクするような目標で釣る坊主などおるものか」
大司教「隠された力を覚醒されせる修行か……まさに厨ニ病をくすぐるな。しかし、その頂点に立つ麻原彰晃超能力を使えたのか?」
レオナルド「ヨガによる空中浮遊と称していたが、すべてまやかしだ。あやつに超能力など無い!」
大司教「では皆騙されていたということか」
レオナルド「騙されたかったのだ。何もかも捨てて出家した以上、そこには何か無くてはならぬからな」

・巨大な自己愛によるポア
大司教「ではなぜサリン事件に至ったのか?」
レオナルド「それにはまず松本智津夫の闇を覗かねばならぬ。覚悟はよいか?」
大司教「もちろんだ」
レオナルド「まず智津夫は不幸な子供だった。醜く、片目が見えず視力も弱い。しかし極めて我が強くてワガママで、愛されなかった。にもかかわらず、少年は強く愛され人から認められることを望んだのだ」
大司教「その程度の不幸、たいした闇ではあるまい」
レオナルド「そうだろう。ありふれたどこにでもある不幸せ。しかしそれを、智津夫は自力で乗り越えた」
大司教「いったいどうやって?」
レオナルド「奴めはとある学校に入学し、そこで自分が有利な点を利用し王になったのだ」

大司教「王? それはいったいどういうことだ?」
レオナルド「人々の不幸に付け込んだのだ。奴は弱いながらも灯火を持つ者として、持たぬ人々を導くことができた。後はお主の想像に任せよう。奴はそこで己の強烈なまでの支配欲を、存分に満たすことができたのだ」
大司教「つまりは……ふむ、そういうことか。支配される側にとっては迷惑な話だ」
レオナルド「しかし、学校から社会に出た智津夫は、王座から転がり落ちる。その肥大した自意識ゆえに失敗を重ねることとなるのだ。こうした挫折の果てに、己の欲望を満たすにはどうしたらいいかを徹底的に考え抜いた」
大司教「それが……宗教か!」
レオナルド「その通り。教祖となり信者を導く。今度は心の闇から人々を導く灯火となろうとしたのだ。洗脳という手段によってな。松本智津夫は麻原彰晃となり、再び人々を支配する王となったのだ」
大司教「なんと業の深いことよ」
レオナルド麻原彰晃は他者を支配し、意のままにすることで強烈な喜びを感じた。人間は彼の自己愛を満足させるための道具となったのだ」
大司教「そして、それを妨げる者を許さなかった……」
レオナルド「ポア――己の完璧な支配を穢す信者を殺させた時、麻原彰晃の飽くなき自己愛が満たされた。その悦楽は絶頂に達し燦然と輝いたのだ」
大司教「そんな、まさか……」
レオナルド「配下の者を使って人の命を奪うときの、全き万能感に酔いしれた麻原彰晃は、それを繰り返すことになる。そして飢え歪んだ欲望を満たすには、さらなる強い刺激が必要とされる」
大司教「ではサリンによる大量殺人はその帰結だというのか!?」
レオナルド「智津夫の内面的欲望ではそうだ。しかしそれだけではなく、教団の幻想がそこまで突き進んでしまったのだ」

・20世紀末幻想の終末
レオナルド「お主にもあるであろう? 世紀末幻想が」
大司教「ある……朽ち果て緑覆う東京の風景を何度も夢想した」
レオナルド「あ奴らは集団でそれを想ったのだ。だからこそ、武器を集め毒薬を研究し、独立国家を作れるように備えた。遂には終末が訪れないのならば、自らそのきっかけを作ろうとしたのだ」
大司教「あんなことで世界終末が始まるのだと?」
レオナルドオウム真理教は、かつていきなり国政選挙に打って出たであろう? 自分たちだけではないと妄想していたのだ、世界を変えたいと思い願う者は。だからテロを次々引き起こせば、人々は目覚め、全国にそれが伝播するであろうとな」

大司教「馬鹿な……サリンの後も何かやるつもりだったのか!」
レオナルド「当然であろう。より多く殺すか、あるいは著名な者たちを殺害しようとしただろう。智津夫の欲望にも新たな刺激が加わったことだろうて」
大司教「妄想とは、止まるところを知らぬものだな。それが集団ともなればさらにだ」

レオナルドそういえば……19世紀末にも似たようなことをした連中がいたわ」
大司教「この日本でか?」
レオナルド「いいや、イギリスだ。休日に勧誘に来ることで日本でも有名なとある宗教団体が、世紀末を盛り上げて信者を増やそうと、ロンドンで少しばかり無差別殺人を行ったことがあった」
大司教「そんな記録どこにも残っていないようだが」
レオナルド「コリン・ウィルソンが書に記しておる。今ではあの教団もだいぶ穏健になったが、かつてはそうした狂気に駆られていたわけだ。とはいえ、去年ロシアでも活動を禁止される、過激派組織認定されるほどの宗教団体だがな」
大司教オウムも、いや後継のアレフも将来そうなると?」
レオナルドアレフ麻原彰晃を殉教者として祭り上げなければな。だがしかし、すでに西日本の豪雨が神となった麻原の怒りに触れたのだと騒いでいるようだから、なかなか厳しそうだわい」

大司教「そう言えば教団の本尊はシヴァ神だったな。そして麻原彰晃はその転生者を称していたわけだが、シヴァの名はあの神の本名ではない。人々はそれを恐れて『吉祥』という意味のシヴァの名で呼んだのだ」
レオナルド「原初の神々は、恐怖される強大な邪神でもあったのよ。シヴァもそれだ。わしはその真名は知らぬがな」
大司教「真の名かどうかは分からんが、シヴァ神の元の名はルドラという。悪魔の如きマルト神群の王だ。泣き叫ぶ者の異名を持つルドラ神は、その叫びで暴風雨を引き起こした。ルドラはマルトどもを率いて天を駆け抜け、各地に水害をもたらすのだ」
レオナルド「ほお、では豪雨と水害をもたらすというのが一致するわけだな。しかし、あの松本智津夫にそのような力などは無い。ましてやシヴァの生まれ変わりだと? フォッフォッフォッフォッ!! 笑わせてくれるわ!」

悪魔: レオナルドLeonardo) サバトや黒ミサを司る魔女の王とされる悪魔。大きなヤギの頭部を持ち、女の乳房と陽物を備える巨人。その姿から古代ヨーロッパの角持つ森の王神、ケルヌンノスの零落した姿と考察される。異端審問によって処刑されたテンプル騎士団が崇拝したという邪神バフォメットの姿は、このレオナルド=ケルヌンノスから想起されたものだろう。『真・女神転生 ―東京黙示録―』では、相馬小次郎の通う聖城学園に結合する校長と少女を触媒として召喚される。

筆者: 鈴木一也(すずきかずなり) 1960年11月1日東京生まれ。ゲームクリエイター。代表作『女神転生』『女神転生Ⅱ』『真・女神転生』『モンスターメーカーシリーズ。『偽典女神転生』『新世黙示録TRPG』『ジェットインパルス』『つきびと』など多数。デジタルヴィル(株)代表。専門学校TECH.C.にて講師も務める。父にアナログゲームクリエイターである鈴木銀一郎がいる。

もっと詳しく読む: メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館 / 第3回 未発表漫画付き「オウム真理教とポア」について悪魔と語る(バズプラス Buzz Plus) http://buzz-plus.com/article/2018/07/13/megaten-suzuki-dangerous-cult/

イラスト: 闇雲大佐