日本を訪れる外国人観光客に人気のフリーペーパーがある。日本版(東京版)はもちろん、香港、台湾、マレーシア、タイ、シンガポールインドネシアフランス・パリ、メキシコアメリカロサンゼルスオーストラリアと全世界11か国、年間配布数200万部を誇る月刊誌「WAttention(和テンション)」だ。




この雑誌の作られた経緯や外国人に人気の記事について、代表の鈴木康子さんに話を聞いた。

海外では、日本にはまだ忍者がいると思われている
――これを創刊するきっかけは?

もともと私はシンガポールで働いていました。その後起業し、現地に暮らしている日本人向けの生活情報誌を作っていたのです。ある時、今度はマーケットを180度変えて、日本が好きなシンガポールの方に何か発信ができないかと考えたのです。

そこで2010年、「WAttention」のシンガポール版を創刊しました。フリーペーパーの収入源は広告掲載料ですから、日本からの広告を集めるための営業活動の拠点として、翌年に東京に本社を設立。同時に、日本の中心である東京に来ている外国人向けの「東京版 WAttention」も発刊。以降、他の国に展開していきました。

東京版で取材した記事を翻訳し、他の地域に転載することもありますが、毎号50~80%は、各国がそれぞれ独自取材しています。



――外国人向けの日本の情報誌は他にどのぐらいあるのでしょうか?

無数にあると思います(笑)。ただ中には日本の観光雑誌を現地語に翻訳している物や、自分たちだけの視点で取材した物、さらには広告ページしかないような雑誌もあります。その中で私たちは、「日本人が読んでも納得してもらえる正しい情報」を大事にしています。

そこで、台湾版なら台湾人のライター、パリ版ならフランス出身のライターなど、現地のライターが取材をするのですが、その際ほぼ必ず、日本人ディレクターが同行。偏った物の見方をしないようアドバイスしていきます。

例えば日本には未だに「忍者がいる」と誤解している外国人もいるくらいですから、海外との認識のズレを修正しながら、読み物としても面白いページに仕上げていきます。





――ちなみにこの「WAttention」に携わる外国人ライターはどのくらいいるのでしょうか。

世界に約300人います。そう聞くと驚かれるかもしれませんが、この人数は「読者ライター」と言って、ノンプロでも日本が好きで日本の情報を伝えたい一般の方を含めた数です。それ以外のプロのライターは約10~20人。日本に在住していたり、向こうで暮らしていて、取材のため来日することもあります。

――「WAttention」の配布場所ですが、どこで配っているのでしょうか。

この雑誌は、日本に訪れる機会の多い「中間層以上」をターゲットとしていますので、配布場所も、日本食レストランや旅行会社、日本語学校などある程度限らせていただいています。大体海外で3000か所に置いています。

都内ですと350か所。アメリカ大使館やフランス商工会議所、成田空港羽田空港の到着ロビーなど様々です。意外なところでは米軍キャンプの厚木基地。兵士やその家族のために、日本の文化を知るための教材として使われているそうです。


どうして外国人は「谷根千」が好きなのか
――先ほど忍者の記事の話題も出ましたが、ほかに人気の特集記事は?

東南アジア地域は「雪」が降らないことで知られています。そこでシンガポール版やインドネシア版では、雪の特集を組むと喜ばれます。またフランスでめったに見られないのが「桜」。パリ版では、桜の特集は日本の季節の話題の中で一番ニーズが高いのです。

自然以外には、日本人の美的センスや「匠の技」に感動するようです。3年前、反響のあった記事を調べた時には、「田んぼアート」や「ラテアート」など日本人の細やかな手仕事に対するレスポンスがありました。「田んぼアート」には“日本では地方の農家でさえもクリエイティビティがある!”といった声がありました。

他にも、懐石料理や札幌の雪祭り、キャラ弁など、すぐに消えてしまうものに美を求める姿勢、またはその作品に惹かれるようです。






――外国人に人気のスポットは?

谷中・根津・千駄木エリアをさす、いわゆる「谷根千」ですね。人気に火がついたきっかけは、日本の伝統的な街並みを残す場所として、それを紹介するガイドブックや情報サイトなどで紹介されたことがきっかけです。欧米系の訪日リピーター層はいわゆる観光地よりも、日本独特の人々の暮らしや日常が垣間見られる場所に訪れることを魅力と感じるようです。



情報発信から文化の創造へ
――去年、シンガポールイベントを開いたそうですが?

去年初めて「ラーメンレボリューション」というラーメンフェスを主催しました。今までシンガポールではそういったイベントは行われていなかったんです。去年は現地に出店している日本のラーメン店8店舗に加え、国内から新たに、仙台にある塩ラーメンで人気の「麺屋政宗」が参戦。お客さんの人気投票を行い、その「麺屋政宗」が初代優勝を勝ち取りました。開催された3日間で1万食が完売。来場者は3万人にのぼりました。

――シンガポールラーメンフェスを行った理由は?

2009年に博多の「一風堂」がシンガポール1号店を出してからラーメンブームが巻き起こり、文化として根付いたことが背景にあります。ちなみに政宗さんは、去年の優勝を機に、シンガポールへの出店を決めたそうです。

――今年も行うそうですね。

はい。今回は12店舗がブースを出しますが、うち2店舗が、日本からの参戦。「テストマーケティング」と言いますか、海外進出への足掛かりにしたいという狙いもあるようです。





――海外のラーメン人気はすごいんですか?
 
それはもう、全世界に広がっています。なんと言ってもマーケットは70億人ですからね。「ラーメン」と「サブカルチャー」が日本の知名度を上げていると言ってもいいでしょう。この「ラーメンレボリューション」に関してはすでにアメリカでもやりたいという声もいただいていますし、いずれ台湾でも開きたいと考えています。



WAttention
https://company.wattention.com/

(内堀たかふみ)

シンガポール版の記事「日本の商店街」より抜粋。海外にはショッピングタウンがあるが、イベントや福引など他店と連携する商店街という文化・概念がないらしい