チョコレートやグミにも負けないくらい、マジパン人気が高い国がドイツ。

日本でマジパンといえば、ケーキのデコレーションに使うというイメージですが、ドイツではそのまま食べたり、ケーキの生地に使ったり、チョコレートに入れたりと用途はさまざま。脇役ではなく、それ自体が主役級のスイーツなのです。

マジパンの名店として知られるのが、北ドイツのリューベックに本店を置く「ニーダーエッガー」。ここのマジパンを食べて、「マジパンってこんなにおいしいの?」「マジパンの概念が変わった!」と、マジパンの魅力に開眼する日本人も多数。

ドイツが誇る、まじりっけなしの本物のマジパンを求めて出かけましょう。

世界遺産の町リューベック


ドイツでマジパンといえば、北ドイツのリューベック。旧市街がまるごと世界遺産に登録されている世界遺産の町で、かつてハンザ同盟の盟主として隆盛を誇ったことから、「ハンザの女王」「バルト海の女王」の異名をとってきました。

リューベックのマジパンは、ドイツのなかでも特別なステイタスを確立しており、「リューベックマジパン」と名乗ることができるのは、昔ながらのレシピを守ってリューベックで作られたものだけ。「砂糖の比率はアーモンドの30パーセント以下でなければならない」などの決まりがあります。



なぜリューベックでマジパン作りが盛んになったのか。はっきりとはわかっていませんが、15世紀にリューベックが飢饉に見舞われた際、市の行政が町のパン屋にアーモンドと砂糖でパンを作るよう呼びかけたことがきっかけではないかといわれています。

マジパンの名店「ニーダーエッガー」


マジパンといえば、リューベック。そして、リューベックといえば「ニーダーエッガー」です。

ニーダーエッガーは、1806年に創業したマジパンの名店。その名声は、ドイツ全土に知れわたっており、ドイツ各地のスーパーやデパートでもニーダーエッガーの商品を置いているほど。



リューベックの市庁舎前にあるニーダーエッガーの本店は、スーパーやデパートでは買えないものを含め、ありとあらゆるマジパンが揃うショップ、ケーキやお茶がいただけるカフェ、さらにはマジパンのミュージアムまでが揃うマジパンづくし。ドイツにおける「マジパンの聖地」といっても過言ではないでしょう。

ありとあらゆるマジパンが揃うショップ


ニーダーエッガー本店の1階にあるショップでは、定番人気のチョコレートコーティングされたマジパンに加え、動物や果物をかたどったマジパン、マジパンのリキュールにいたるまで、およそ300種類のオリジナル商品が勢揃いしています。



果物や野菜を模したマジパンは、色や形、質感まで目を見張るほどリアルに表現されていて、思わず見入ってしまうほど。



ヨーロッパでは幸運の象徴とされている豚をかたどった「幸運を呼ぶ子豚」は、コンパクトで見た目も可愛らしいので、お土産にもぴったり。色とりどりのマジパン製品は見ているだけでも楽しめます。

名物ケーキがいただけるカフェ


ニーダーエッガー本店の2階には、シックな雰囲気漂う広々としたカフェがあります。マジパンを使ったもの、使っていないもの、多種多様なケーキがありますが、なかでもスタッフがおすすめするのが、名物の「ヌストルテ」。フワフワのアーモンドクリームをマジパンでコーティングしたナッツケーキです。



中央の白い部分はすべてクリーム。というと、しつこそうに聞こえますが、まったくそんなことはありません。甘さ控えめのクリームは、アーモンドの薫り高く、軽くぺろりと食べられてしまいます。

「マジパンの強い甘さや、独特のぼそぼそした食感が苦手」という日本人は多いですが、ニーダーエッガーのフレッシュなマジパンは甘すぎず、ややしっとりとした質感で、どことなくあんこ八つ橋などの和菓子を思い起こさせます。

正直なところ、筆者自身マジパンが大の苦手でしたが、「マジパンを使ったケーキがこんなにおいしく食べられるなんて!」と驚いたほど。

もっちりしたマジパンと、フワフワのクリームサクサクの土台と、異なる風味と食感が組み合わさったヌストルテは、見事なまでに上品な仕上がりです。

巨大なマジパン像を展示するミュージアム


カフェの上階、3階には、マジパンの像やマジパンの歴史や製法、ニーダーエッガーの歴史などを展示するマジパンミュージアムがあります。

なかでも、リューベック出身の小説家ノーベル文学賞を受賞したトマス・マンをはじめとする歴史上の人物の等身大人形は圧巻。もちろんこれらもマジパンで作られており、全部で500キロものマジパンが使われているのだとか。



リューベックシンボルであるホルステン門も、この通りマジパンで精巧に再現されています。ニーダーエッガーにかかれば、マジパンで作れないものはないといったところでしょうか。

ここに来れば、「マジパンはただの飾り」という認識は大間違いで、ドイツの立派な食文化の一部であり、伝統でもあるということを思い知られれます。

マジパンの概念が変わる、リューベックのニーダーエッガー。世界遺産の美しい町並みと合わせて、本場のマジパンの魅力にふれてみてはいかがでしょうか。


「ニーダーエッガー(Niederegger)」
住所:Breite Str. 89 23552 Lübeck
TEL:0451-5301-126
営業時間:月~金9:00~19:00、土9:00~18:00、日10:00~18:00
https://www.niederegger.de/cafe-niederegger/


[All Photos by Haruna Akamatsu]


「マジパンはマズい」は間違い!?世界遺産の町リューベックの名店「ニーダーエッガー」で出会う本物の味