「今の日本は、日本軍反日軍の内戦状態にある」

 ドラゴンクエスト作曲すぎやまこういちは、2011年5月靖国神社崇敬奉賛会の講演会で「非常に漫画チックな言い方」と断ったうえでこのような見解を披露し、さらに発言を続けた。

「なんと、政府、内閣反日軍が占めているのです。聞くところによりますと、今の内閣総理大臣を始め、かなりの要な人達が、日本国解体を学生時代に夢見て学生運動を行っていたと言われています。(中略)

 この反日軍の人達が大震災を足掛かりにして、どさくさに紛れて日本国を解体しようという動きをしているように見えます。そのことに大変な危機感を持っていまして、何とかこれを防がなければいけないと思っています」(『平成十三年度 講演記録集』、靖国神社崇敬奉賛会)

安倍晋三西田昌司稲田朋美らは「日本軍

 当時は東日本大震災の直後で、民主党政権の時代だった。つまり、すぎやまは、菅直人首相らが「反日軍」として国家解体を論んでいる(ように見える)、といっているのだ。

 ちなみに、すぎやまが「日本軍」「反日軍」の喩を使ったのは、これがはじめてではない。震災前に刊行された『正論2011年1月号の寄稿では、「日本軍」のメンバーとして、安倍晋三西田昌司稲田朋美高市早苗衛藤晟一、山谷えり子の名前があげられている。

 これにたいし、当時の総裁・谷垣禎一失格らしく、「ため息が出てしまう」とされている(「谷垣禎一総裁へげる退場勧告」)。

「生産性」発言の杉田水脈に「正論ですよ」

 今回このような発言を取り上げたのは、ほかでもない。自民党杉田水脈衆院議員の「生産性」発言(『新潮452018年8月号)に関連して、保守論客としてのすぎやまの存在にあらためて注が集まっているからだ。

 2015年6月開された「チャンネル桜」の番組で、当時落選中だった杉田は、「生産性がない同性愛の人達に皆さんの税を使って支援をする。どこにそういう大義名分があるんですか」などの発言を行った。現在この番組にも焦点があたっているが、このときのホスト役が中山恭子と、ほかならぬすぎやまだったのである。

 すぎやまは「男性からは言いにくいことをガンガン言っていただくのはありがたいですね」「正論ですよ」などと、番組内で杉田に好意的だった。もしかすると彼女も「日本軍」のメンバーなのかもしれない。

 それはともかく、すぎやまはもともと「愛国者」であると言していて、「(大東亜戦争は)決して間違っていなかった」「あの大東亜戦争がなかったら、これほど次々とアジアの人々が独立を果たせなかったかもしれない」「東京裁判なんていうものは、裁判でなくリンチ」(前掲講演録)、「『従軍慰安婦』についてはまったく納得できません。当時の政府と軍部は、慰安婦になることを強制してはならないという姿勢でした」(『日本文明の肖像Ⅰ』、展転社)などの発言を積極的に行ってきた。

 それなのに、いまだに「ドラクエ作曲者がなんでこんなことを」などと反応するのはいささか認識不足だし、なにより本人に失礼だろう。戦争歴史が話題になりやすい8月でもある。ここでその「愛国」発言の数々を明らかにしておきたい。

朝日新聞の購読者を一人でも減らす」

 「日本には所謂、反日軍御用達みたいな新聞があったりします。その本社の中に、人民日報日本支社などが入っている。そういう新聞社があると言っただけでここにいらっしゃる皆さんは『ああ、あの新聞だな』とお分かりでしょうが」(前掲講演録)

「あの新聞」は名しされていないが、続く箇所を読むと、どうやら朝日新聞のことらしい(築地に「人民日報日本支社」なるものはないはずだが)。

 歴史認識で相容れないメディアへの批判しい。とくに朝日に対するそれは苛だ。同じ講演で、すぎやまはこんなこともいっている。

々に出来る事は、やはり朝日新聞の購読者を一人でも減らす、少しでも他の新聞に変えて貰うという事です」

 そしてすぎやまは、「知り合いの有名なフランス料理シェフ」にたいし、

「一カだけでも朝日新聞を止めて他の新聞、取り敢えず産経新聞に変えてみてよ」

 と持ちかけ、じっさいに産経新聞の購読者とすることに成功したという。なんという読者の鑑。フジサンケイグループは、彼にこそ正論大賞をあげたほうがいいかもしれない。

NHKは「中国人民解放軍の出先機関かも」

 すぎやまは、NHKについても強い不満をもっている。やはり同じ講演では、こんな偽不明の話もしている。

NHKスタッフには、私が聞いた所によりますと朝日新聞からの下りの方がかなりいらっしゃるそうです。またNHKの社屋の中に中国の放送局の支社があるという話を聞いたことがあります。ですから極端に言えば、NHKというのは中国人民解放軍の出先機関かもしれません」

 いくら「極端に言えば」といっても「中国人民解放軍の出先機関」は論理の飛躍ではないかとも思うが、先を急ぐ。

 すぎやまによれば、共同通信も「やや反日軍に近い」。沖縄の「二」(沖縄タイムス琉球新報と思われる)について、「二つともとても駄みたいです」「直接沖縄に行って新聞を買って見た訳ではないのではっきり言えませんが、人づての話とか色々な雑誌の記事などを見た範囲で感じる部分ではとても危ないと思います」。

 まさに撫でり状態だが、反対に高く評価されるのは、先にも名前があがった産経新聞刊誌の『WiLL』、そして――、

「『日本文化チャンネル桜』は、日本軍の一員として凄く頑っています」。

 すぎやまの「日本軍」「反日軍」の色分けは、現在保守の考えを反映しており、じつに典的でわかりやすい。

ドラクエV」で憲法9条批判

 そんなすぎやまにかかればドラクエも「愛国」的に解釈されてしまう。

WiLL』の2011年12月増刊号『すぎやまこういちワンダランド』をみてみよう。ここで、すぎやまは淡路恵子と対談し、つぎのように述べている。

ドラクエストーリーで印に残っているのは、『ドラクエV』に登場する『教団』。怪しい宗教団体が出てきて、祭が『世の中に武器などというものがあるから戦争が起こるのです。皆さん、武器を捨てましょう』と布教するんです。

 村人たちがその言葉を信じて武器を捨てると、途端に魔物の群れが村を襲って占領されてしまう。現状の日本を思ってしまうシーンですよ。『憲法九条を信じて武器を捨てても、相手が武器を持っていたら乗っ取られるぞ』と。

(中略)ドラクエをやっていれば分かるように、平和は戦って勝ち取るものであり、戦う姿勢によって守られるものなんですよ」

 すぎやまの「愛国」発言は、歴史認識にせよ、慰安婦問題にせよ、現在保守論壇的にオーソドックスなものが多い。それにくらべ、この「ドラクエV」を使った憲法9条批判オリジナリティに溢れ、深く印に残る。

 さらにすぎやまは、2010年青山繁晴(現・自民党参院議員)と対談し、こんな発言もしている。

堀井雄二さんも、基本的に愛国者ですから、そういった部分がにじみ出てくるでしょうね」(「日本復活の呪文」)

「そういった部分」とは「愛国的な部分」ということだ。つまり、さきのような「愛国」的解釈はけっして牽強付会ではない、なぜならゲームデザイナー堀井も「愛国者」だから……ということだろう。

 いずれにせよ、すぎやまこういち政治性はいまや明らかである。彼は今日的な「愛国者」以外の何物でもない。その口から「大東亜戦争肯定論」がでてきても、まったくふしぎではない。

 肯定するにせよ、否定するにせよ、今後はこれが議論の前提だ。保守論客や保守政治家との対談や談ならほかにも数に存在する。もはや「意外な一面」などと驚いてはならないのである。

すぎやまこういち ©時事通信社