猛暑の日常から脱出して、山梨県富士河口湖町へ! 河口湖畔で毎夏恒例の「富士山河口湖音楽祭」が、8月11日~19日に行われる。稼働式屋根を開けると富士山が見える河口湖ステラシアターでの吹奏楽、河口湖円形ホールでの室内楽をはじめ、河口湖美術館ショッピングセンター、富士山五合目など、複数会場を駆使しての開催は例年どおり。
「音楽を身近に! もっと楽しく!」をテーマに掲げ、マーチングバンド、公開リハーサル、バンド講習やレクチャーコンサートなど、約40の多彩なプログラムが用意されている。中高校生の吹奏楽や合唱の愛好家らのステージもある。全般に入場料が手頃で、無料で楽しめるものも複数ある。

さまざまな場所で、プロ・アマが力を合わせて盛り上げる音楽祭だ

さまざまな場所で、プロ・アマが力を合わせて盛り上げる音楽祭だ

この音楽祭の特徴は、自治体、ホール、地域住民ボランティアらが実行委員会を結成し、アーティストとともにプログラムを創造する「住民参加型」であること。2002年の第1回から16年の第15回までは指揮者の佐渡裕監修で、回を重ねるにつれて知名度もアップ。毎年約1万5千人が全国各地から集うイベントに成長し、昨年はアメリカンポップス界の巨匠、マット・カティンガブが、フィナーレの演奏会でシエナ・ウインド・オーケストラを指揮して話題に。今年は、NHK連続テレビ小説ひよっこ」、蜷川幸雄演出「身毒丸」などの音楽で知られる作曲家の宮川彬良タクトをとり、大ヒット曲「マツケンサンバⅡ」で楽しく締めくくる予定だ。

「アキラさん」の愛称で親しまれれている宮川のプログラムは毎回好評。フィナーレは初指揮だが、アンコールの「マツケンサンバⅡ」まで、ずっと盛り上がりそう!

アキラさん」の愛称で親しまれれている宮川のプログラムは毎回好評。フィナーレは初指揮だが、アンコールの「マツケンサンバⅡ」まで、ずっと盛り上がりそう!

お勧めのプログラムはいろいろあるが、東京藝術大学卒業生を中心とする、ぱんだウインドオーケストラが「富士山」「アルメニアン・ダンス」など吹奏楽の名曲を演奏するコンサート(12日)や、コンサートマスター上野耕平のサクソフォンリサイタル(13日)は前半の目玉。

NHK交響楽団首席オーボエ奏者の茂木大輔がN響メンバーらと、モーツァルトベートーヴェンなど18世紀の管楽器合奏をする「茂木大輔と木管歌劇場Ⅱ」(15日)も興味深い。河口湖美術館でのミニコンサートもある(16日)。

打楽器奏者の池上英樹は、商店街やショッピングモールなど約10カ所でパフォーマンスし、パーカッションの魅力を伝える。じっくり耳を傾けるなら、ぜひリサイタルへ(16日)。マリンバで「お祭りマンボ」「シェルブールの雨傘」をはじめジャンルを超えた名曲を披露する。

打楽器奏者の池上もすっかりおなじみ。特製楽器も駆使して、パーカッションの楽しさ奥深さを伝える

打楽器奏者の池上もすっかりおなじみ。特製楽器も駆使して、パーカッションの楽しさ奥深さを伝える

一方、演奏を楽しむだけでなく、公開リハーサルで音楽作りの過程を知ったり、レクチャーコンサートで音楽の聴き方を養うこともできる。例えば、宮川が演歌からクラシックまでジャンル不問で楽曲を解剖し、音楽のしくみや楽しみ方を解説する「宮川彬良のせたがや音楽研究所」(17日)、中学生バンドのクリニック(17日)、特別合唱団の公開リハーサル(18日)など、さまざまな機会が用意されている。

圧巻のフィナーレは最終日の夕刻、ステラシアターで。富士山を仰ぎながら、シエナ・ウインド・オーケストラエネルギッシュな演奏に浸れる。曲は「大ラッパ供養」、NHK朝ドラひよっこメドレー、ザ・ピーナッツの名曲アレンジなど。宮川の軽妙なおしゃべりやピアノ演奏も盛り込んでの楽しいひとときになりそうだ。お楽しみのアンコールは、これまではシエナの定期演奏会と同様に「星条旗よ永遠なれ」を、アーティストと楽器持参の観客が一緒になって演奏していたが、「今年は『マツケンサンバⅡ』です。楽器がなければ歌って、楽しく盛り上がってください!」と、音楽祭を育ててきたステラシアターの野沢藤司マネージャー。

会期中の土日には、ステラシアター前広場にワインバーも開店。ソムリエお薦めの蔵出しワインを味わえる。近郷ワイナリーの銘柄を堪能しながら音楽に浸れるとは、産地ならではの至福のひとときである。

文=原納暢子