TRUE TOURS 2018 〜Lonely Queen's Liberation Party〜 2018.7.29(Sat)恵比寿LIQUIDROOM

歌手で作詞家の唐沢美帆が、2014年からアニメソングアーティストとして活動しているソロユニット「TRUE」。2018年7月現在までに、シングル12枚、アルバム3枚を発売しており、タイアップしている作品は20本以上。単独ライブやツアーをはじめ、国内外の大型フェスにも参加するなど、精力的に活動している。

2018年6月16日より、最新アルバム、『Lonely Queen's Liberation Party』をタイトルに掲げた2度目のライブツアー、『TRUE TOURS 2018 〜Lonely Queen's Liberation Party〜』がスタート。東名阪と京都、神奈川の全国5か所を約2か月で回るツアーとなった。今回は、7月29日に東京のリキッドルームにて行われたツアーファイナルの様子をレポートする。

かわいらしいポップな曲から、低音のハードな曲まで並ぶ多彩なセットリスト

オープニングは照明が暗転したままバンドメンバーが配置へ付くと、まずは最新アルバムの表題曲、「Lonely Queen's Liberation Party」の印象的なピアノソロのイントロと共に「TRUE」が登場。舞台が明るくなると、そのまま1曲目を歌いきる。

続けて短いMCでは、前日の台風による悪天候もあり、遠方から来た観客を気遣いつつ、ライブの開演を宣言し、2曲目がスタート。M2の「サンドリヨン」、M3の「パズル」と、ポップでかわいらしいナンバーが続く。「パズル」のイントロ、間奏、アウトロに入る「PaPaPaPa…」というスキャットは、観客から大合唱が沸き起こり、ステージと客席が一体になる。

ここで改めて、自己紹介と共にツアーファイナルの迎えての挨拶へ。まずはチケット完売、満員御礼を発表し会場からは歓声が上がった。熱気が立ち上る客席に向かって、「狭いとは思いますが、前後左右の"オタク"にやさしく!私たち"オタク"同士が思いやらず、誰が"オタク"を思いやるのでしょうか!」と呼びかける。学生時代から"オタク"だったと公言している「TRUE」らしいコメントに、会場は笑いに包まれた。

今回のツアータイトルにもなっている3枚目のアルバム「Lonely Queen's Liberation Party」について、「1st、2ndと「TRUE」らしさを前面に出したアルバムに対して、3枚目は趣向を変えて様々なアーティストから楽曲提供をしてもらったアルバムです。このライブでも今までの「TRUE」にはなかった楽曲で楽しんでいただけると思います」とコメント。

続いてM4から、「終わりたい世界」、「Dear answer」、「Roadmap」と、前の2曲から打って変わって、力強い低音も利いたハードなナンバーが並ぶ。「終わりたい世界」では間奏中、バンドメンバー紹介を含めたオリジナルのソロパートが続き、各プレイヤーのテクニックに会場からは歓声があがった。

作詞家、「唐沢美帆」として歌うカバー曲から 楽曲に秘めた思いを語るバラードコーナーへ

続くMCでは、作詞家、「唐沢美帆」としての活動についても触れる。数多くのアニメ作品の主題歌に詞を提供しており、「TRUE」ではなく、作詞家「唐沢美帆」として歌うライブ恒例のカバーコーナー。『ラクエンロジック』のタイアップで、新田恵海が歌った「盟約の彼方」と、『アイカツスターズ!2ndシーズン』のタイアップで、AIKATSU STARSが歌った「STARDAM!」の2曲が披露され、イントロが流れると会場からは歓喜の絶叫が沸き上がった。

キーボード以外が一旦退場してのバラードコーナーへ。M9の「酸素」では直前のMCで、「楽曲作成中に祖母が他界という悲しい事があったけど、気丈に振る舞う母の姿を見て、テレビで観るようなドラマティックな話ではなく、誰にでも起きる普通のことなんだと感じました。そして、母の鏡台でハンカチに包まれた祖母の写真を見た時、親子や家族の無償の愛は、大げさなものではなく「空気」のような存在なんだと感じて、この気持ちを曲として残したいと思い作りました」という制作秘話が語られる。ピアノソロとボーカルのみという音数の少ないライブアレンジで、静かだが温かみのある歌声にライブハウスは時間が止まったかのように静まり返り、観客はじっと聞き入っていた。

続けて演奏されたのは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の挿入歌で「未来の人へ」。そして再びバンドメンバーを揃えて『響け!ユーフォニアム2』の主題歌のバラードアレンジ「サウンドスケープ~Loving nostalgia Ver.」を披露。どちらも作品の登場人物や楽曲が、自分と重なるところがあり、大きな影響を受けたとの事。

バラードコーナーの最後を飾る「フロム」は、リズミカルでポップなラブソングで、一旦、落ち着いた雰囲気になった会場を、徐々に盛り上げてバラードコーナーは終了した。

個性的なバンドメンバーによるMCから、再びハイテンションなナンバーが続く

ここで、バンドメンバー紹介を含めた長めのMCへ。バックバンドは「TRUE」がデビュー以来、多くのライブに参加しているメンバーで、観客にもおなじみとなっている。それぞれが、マイクを通してファイナルを迎えての感想などを語る中、ベースの二村学氏が「語りたいことは演奏で伝えきったので、自分に起こった不幸な話をします!」と、詐欺にあったというエピソードを披露する独演会に突入。会場の照明が消え、二村氏のみにピンスポを当てるという照明担当者のノリの良さに、キーボードの畠中文子氏もマイナー調のメロディを即興で演奏、最後は「TRUE」本人が悲し気なハミングを始めると完全な演出が完成。ひと通り語り終えた二村氏に、「もう、何なのこのノリ! 私のワンマンライブなんだけど……(苦笑)」と完全に会場の空気を持って行ったことに悔し気な様子。そのやり取りに、会場からも笑いと大きな拍手が起こる。

そのままの勢いで、ライブは後半戦へ。M13の「JUMPIN'」から続く「分身」、「次の僕へ」と観客席からコールや、ジャンプ、ヘドバンまで起こるスピーディーでノリノリなロックナンバーが並ぶ。

「JUNPIN'」では、イントロやサビにある「Please!! Please!! 声を聞かせて」から始まる歌詞に合わせて、コーラス部分を観客が大合唱。曲中に何度も歌われる歌詞と、曲のタイトル同様に観客と一緒にジャンプするパフォーマンスで会場が地鳴りのように揺れていた。

ラストスパートはノンストップアンコール、そしてダブルアンコールまで!

ラストスパートは『最弱無敗の神装機竜』OP主題歌の「飛竜の騎士」からスタート。続いて、「Divene Spell」、「BUTTERFLY EFFECTOR」、「カレイドスコープ」とアップテンポなナンバーが勢ぞろい。それぞれの楽曲のアウトロから途切れることなく、次の曲のイントロをつなぐ演奏で4曲がノンストップで披露される。「カレイドスコープ」では、恒例となっている観客と「TRUE」によるタオル回しのパフォーマンスを披露。ライブタオルを掲げた観客が一斉振り回し始めると会場はまるで波打つ海のような光景になった。

短いMCを挟んで披露されたのは、アルバムでも最後に収録されている「Anchors Step」。ノスタルジックな雰囲気が漂うミドルバラードで、興奮冷めやらぬ会場にやさしく響き渡り、クールダウンするナンバーで締められた。

ステージ上のメンバー全員が退場し、数秒もたたないうちに会場からはアンコール大合唱キャップにTシャツ、デニムホットパンツというカジュアルな衣装に着替えた「TRUE」が再びステージに上がる。

アンコールの1曲目は、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のOP主題歌の「Sincerely」。ライブ中盤では挿入歌も歌われた同作。「TRUE」にとって、そして作詞家「唐沢美帆」にとっても、辿り着くべくして辿り着いた作品と語り、強い思い入れを感じさせる。ストリングス音源も使用されるシンフォニックなバラードナンバーである。

短いMCを挟んで、ラストとなるのは『響け!ユーフォニアム』のOP主題歌、「DREAM SOLISTER」。作品と共に非常に人気の高いポップスナンバーで、イントロ終わりから「オイ! オイ!」という強い掛け声や、手拍子、ジャンプ、コーラスなどすべてを出し切る勢いで観客席が一体となった。

再びメンバー全員がステージから退場すると、会場から「もう1回!」の大合唱で、まさかのダブルアンコールが起こる。

ダブルアンコールに感謝しつつ登場した「TRUE」から、秋から始まる『転生したらスライムだった件』のエンディング曲として「Another colony」の発売が決定したこと、9月に行われる同作の先行上映会に参加することが発表される。

また、2019年にはデビュー5周年記念のライブが行われることを発表。詳細は後日とのことだが、本人からはアルバムをひっさげたツアーではなく、単発のライブなので何を歌ってもいいのでは?と観客に問いかけると、大歓声が巻き起こる。

最後の曲の前に、ツアーに来てくれたすべての人への感謝を述べると、感極まった様子でやや涙声になっていた。

「最後に、泣いてお別れするのは私らしくないので、笑ってお別れしましょう!」と披露されたのは、ライブ中盤ではバラードアレンジが歌われた「サウンドスケープ」のオリジナルバージョン。本当の最後の曲に、全力を出し切ろうと会場からは割れんばかりの手拍子や、バンドサウンドをかき消す勢いのコールが起き、これでもかと一斉にジャンプすると地震かと思うほど地面が揺れた。

最後はステージ中央にバンドメンバーが集まり、「TRUE」が地声を張り上げて挨拶。最後まで熱気に包まれたライブは終わりを迎えた。

デビュー4年目ながら、個人名義での歌手活動を合わせると15年近くとなり、圧倒的な歌唱力とパワーのあるハイトーンボイスに、ライブの完成度は非常に高く思わず取材を忘れかけたほど。

また、印象的だったのは馴染みのバンドメンバーとの絡みだ。MC中はもちろん、演奏中も互いに目を合わせて、笑いあったりする様子が見ていて微笑ましく思えるのと同時に、信頼のおけるメンバーだからこそ、ここまでのクオリティが引き出せるのかと納得させられた。

ライブ中にも、新しい楽曲のリリースや5周年ライブにも触れていたが、ツアー直後には「アニメロサマーライブ2018」が控え、年内は海外のイベント出演予定など、その勢いは止まらない。5周年を超えて、その先の10年目も期待させてくれる圧巻のライブだった。                              

取材・文:東響希