kou20180809

中国・アモイの沖合に浮かぶ「金門島」。台湾が実効支配するこの島に、中国が自国の水不足の不安をよそに8月5日、送水を開始しました。その意図はどこにあるのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、金門島を巡る歴史等を振り返りながらその裏を探ります。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年8月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】水不足の中国が金門島に送水する政治的思惑

金門島に中国側から送水開始 台湾が実効支配する離島

台湾の金門島は、中国のアモイから最短で2キロほどしか離れていません。金門島は、「1946年からの国共内戦で敗北濃厚になった蒋介石率いる国民党中華民国政府軍は、1949年に台湾に撤退して拠点とした。そして、大陸にきわめて近いものの彼らが支配下に置き続けた金門島は、1958年夏から秋に中国共産党人民解放軍によって大量の砲弾が撃ち込まれるなど、最前線の島になった(「最前線」金門島で実際に見た台湾・中国関係)」という島で、戦闘場所になっていただけに、今でも島のあちこちに防空壕や軍事施設などがあります。

台中関係が落ち着いている今は、それを観光資源として観光客を呼び込んでもいます。中国大陸から最短で2キロしか離れていないにも関わらず、かつて台湾人が中国へ行くときは、香港など第三の場所を経由しなければ双方を往来することはできませんでした。

しかし2001年、蔡英文が総統になる前に担っていた役職、対中政策を担う閣僚である大陸委員会主任委員時代に「小三通」政策を掲げ、中国と直接「通商」「通航」「通郵」を実現させたことにより、金門島などの離島から中国への直行便のフェリーが登場します。

これにより、台中交流は観光もビジネスもより盛んになり、双方を往来する人々が増加しました。しかし、2001年は陳水扁総統率いる民進党政権でしたから、金門島への中国からの水の供給は行われていませんでした。

人口約13万人の小さい島である金門島は、雨が少なく住民たちは慢性的な水不足に悩んでいました。その後、中国から水を供給してもらおうと考えたのは、国民党馬英九政権でした。馬総統の呼びかけを政治利用できると考えた中国側も、給水要求にはすんなり応じました。以下、報道を一部引用します。

中台が通水計画で合意したのは、中国に融和的な姿勢を取った国民党馬英九政権時代の2015年。中国側の張志軍・国務院台湾事務弁公室主任(当時)は「同じ家の人間として同じ水を飲もう」と呼びかけるなど、将来の中台統一を目指し台湾世論を懐柔する狙いがあった。

金門島に中国側から送水開始 台湾が実効支配する離島

金門島が中国大陸から水の供給を受けることは一般の商業行為にあたることから、政府調達法に従って、金門県の「自来水廠」と福建省の「供水公司」が契約。海底送水管の寿命を考慮し、契約期間は30年と定めた。開始当初3年間、金門県「自来水廠」は毎日1万5,000トンの水の供給を受ける。4年目から6年目は同2万トン、7年目から9年目は同2万5,000トン、10年目以降は毎日3万4,000トンの供給を受ける。これにより金門地区の中長期的な発展に必要な水を確保し、同時に地下水の汲み上げを抑制出来るとされている。

 

金門県が中国大陸から水の供給を受けるための施設工事は、福建省の龍湖ダムから中国大陸側の給水所までの陸上送水管約8.2キロメートルと、そこから金門県の田埔ダムまでの海底送水管約16.7キロメートルなど。陸上送水管部分は中国大陸側が資金調達と施工を担当。海底送水管敷設工事に必要な13億5,000万台湾元(約53億3,000万日本円)は台湾が負担する。

 

金門県、中国大陸より水の供給受ける契約結ぶ