大阪府堺市内でバイクに乗っていた男子大学生が亡くなった事故で、大学生をあおり運転で死亡させたとして、大阪地検支部が7月下旬、自動車を運転していた男性を起訴した。読売新聞報道によれば(7月23日付け)、男性大学生が運転するバイクに追い抜かれたことにを立て、加速して追跡。時速9697キロで追突して転倒させ、殺したという。

あおり運転への殺人罪の適用は異例とも報じられている。今回の事件において、なぜ殺人罪が適用されることになったのか。この判断について、交通問題に詳しい弁護士はどのように評価するだろうか。清水弁護士に聞いた。

なぜ殺人罪で起訴?

なぜ、異例とも報道されている殺人罪で起訴がなされたのか。

報道を通して現時点で得られた情報から検討してみます。

前提として、殺人罪が成立するためには、殺人罪の故意=殺意があること、すなわち、相手が死ぬということがわかっていて殺人行為をしたことが必要とされています。

交通事故の場合、一の不注意(過失)で死傷事故が起き得ることもあり、事故を起こした加者の事故当時の認識を立することが困難なことも多く、殺人罪での起訴が難しいという事情があります。殺人罪の適用が異例と報道されているのは、このような事情によるものと思われます。

しかしながら、相手が確実に死ぬとわかっている(確定的故意がある)場合のみならず、相手が確実に死ぬとはまではわかっていないが、もし死ぬなら死んでもかもわないと思っている(未必の故意がある)場合にも、殺人罪の故意があるものとして処罰の対になります」

未必の故意があるとして踏み切った」

報道によれば、今回の事故では、加車両に搭載されていたドライブレコーダーの解析捜等により、加車両の運転者が約1キロにわたってバイクをあおり続け、時速100キロ近くで加車両バイクに追突させたことが確認されているようだ。

「今回は、あおり運転の動機(バイクに追い抜かれたことに立)、あおり運転の態様・経路(線変更して逃げようとしたバイクの運転者を執拗に加速して追跡)、あおり運転を継続した時間・距離、追突の仕方、追突時の速度等が検討されたはずです。

このような危険なあおり運転をすれば、バイクの運転者が死ぬかもしれず、それならそれでかまわないと加車両の運転者が思っていた、すなわち、未必の故意があると言えるものとして、殺人罪での起訴に踏み切ったものと思われます」

「あおり運転に厳正に対処する動きの一環」

今回の捜機関の対応について、清水弁護士はどのように評価しているのだろうか。

「今回の警察の対応は、社会問題化しているあおり運転に厳正に対処する動きの一環と思われます。

この数年、あおり運転による事故が社会問題化しており、悪質・危険な運転に対する厳正な対処の動きが出てきています。例えば、2018年1月には、警察庁から全警察に対し、あおり運転等の悪質・危険な運転に対し、道路交通法違反、危険運転致死傷罪(妨的運転)、暴行罪等あらゆる法令を駆使して、厳正な捜を行うよう通達がなされています。

今回、起訴がなされたことにより、あおり運転という危険な運転行為による死亡事故を殺人罪に問えるか否かにつき、裁判所の判断が示される見込みです。また、ドライブレコーダー等、事故当時の状況を客観的に立拠があったことも、今回の殺人罪での起訴を可にさせた大きな要因と思われます。

裁判所がどのような判断を下すのか、刑事裁判の行方を注視したいと思います」

弁護士ドットコムニュース

【取材協弁護士
清水 卓(しみず・たく)弁護士
東京銀座にある法律事務所の代表を務め、『週刊ダイヤモンド2014年10月11日号)』で「プロ推奨の辣腕弁護士 ベスト50」に選出されるなど近時注弁護士。交通事故分野などで活躍中。被者救済をライフワークとする“被者の味方”。
事務所名:しみず法律事務所
事務所URLhttp://shimizu-lawyer.jp/

あおり運転で初の「殺人罪」適用、交通事故では異例…「未必の故意」はどう判断する?