27シーズンプレミアリーグがついに幕を開けた。“ビッグ6”体制が確立された近年は欧州トップリーグの中で最もタイトル行方読みづらく、群雄割拠と言われてきたが、昨季はペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティ黄金時代の到来を予感させる圧勝でリーグを制した。

 リーグ史上最強チームの呼び高い現在のシティを止められるチームは出てくるのか。昨季チャンピオンズリーグ準優勝のリヴァプール、打倒シティ&ペップに燃えるジョゼ・モウリーニョマンチェスター・ユナイテッド、新スタジアムを手に入れて進著しいトッテナム、そして新監督の下で再スタートを切るチェルシーアーセナルがシティにどこまで食らいつけるのかが最大の見所となる。

 6強との格差が顕著な中小14クラブにしても見所は多い。岡崎慎司レスター)、吉田麻也サウサンプトン)、そしてプレミアリーグ参戦を果たした武藤嘉紀ニューカッスル)ら日本代表戦士たちの奮闘ぶりにもぜひ期待したい。上位から下位まで注ポイント目白押しのプレミアリーグ。その全20クラブの戦と現状を総ざらいする。

文=大谷 駿 写真=ゲッティ イメージ

マンチェスター・シティ 戦評価:S

 勝ち点(100)、勝利数(32)、総得点(106)、得失点差(+79)と昨季あらゆる新記録を打ち立てた王者シティが、今季も間違いなく優勝補の筆頭だ。大投資に踏み切った昨とは打って変わり、今の補強はリヤド・マフレズのみだが、昨季アシスト王のケヴィン・デ・ブライネを筆頭に、セルヒオ・アグエロダビド・シルバカイルウォーカーらのリーグ年間ベストイレブン組、さらには両ラヒーム・スターリングレロイ・サネとはそのまま。継続路線を進むチームに死はない。今季の最大標はクラブの悲願であるチャンピオンズリーグ優勝。プレミアと二足のわらじを履きこなすだけの戦は十分にある。

マンチェスター・ユナイテッド 戦評価:A

 実質的な即戦はシャフタールから5200万ポンド(約76億円)で獲得したブラジル代表MFフレッジのみ。同じの宿敵シティと同様、今の移籍マーケットではおとなしい印だった。ただし、意図的に継続路線を選んだシティとは違い、モウリーニョ監督は補強に納得がいっていない様子。ギャレス・ベイルやウィリアンといった新アタッカーの獲得失敗により、前線の新陳代謝はわなかった。昨季リーグ最多のクリーンシートを誇った守備は折り紙つきとはいえ、シティを上回るには現有戦の奮起が必要だ。今年1月に加入したアレクシス・サンチェスのさらなるフィット、“ビッグマッチに弱い”というレッテルを貼られるロメル・ルカクや新10番としての期待を背負うマーカス・ラッシュフォードの本領発揮、そしてワールドカップ存在感を示したポール・ポグバクラブでの覚醒を待ちたい。

トッテナム 戦評価:A

 このチームのプレッシングサッカーるマウリシオ・ポチェッティーノ監督シーズン30ゴール約束してくれるハリー・ケインとの契約延長に成功し、9月には念願だった新スタジアムもオープンする。過去3シーズンはいずれもCL出場権獲得と安定感もあり、ファンクラブのさらなる成長に期待しているはずだ。しかし、優勝争いに関しては今季も状況は芳しくない。スタジアム建設の余波で補強資が限られたこともあり、の新戦獲得はまさかのゼロ。さらにW杯の影による選手の疲労も不安要素だ。W杯に出場した12選手のプレー時間の合計はプレミア20クラブで最多の4816分。が心身の疲労を抱えたままシーズンインして出遅れるようだと、々に優勝戦線から脱落してしまう恐れもある。

リヴァプール 戦評価:A

 打倒シティの可性を最も秘めたクラブだ。このリーグ最多の総額1億7000万ポンド(約245億円)を費やす大補強に踏み切り、昨季のCL準優勝チームバージョンアップさせた。長らくアキレス腱だったゴールマウスブラジル代表の正守護神アリソンを獲得し、中盤にはナビ・ケイタとファビーニョを加えてゲーゲンプレッシングクオリティーアップ。降格したストークからジェルダンシャチリを獲得し、前線の選手層拡充にも成功した。もちろん、昨季猛威を振るったモハメド・サラーサディオ・マネ、ロベルトフィルミーノの強3トップも健在。昨季途中にフィルジルファンダイクが加入してからは守備も安定傾向にある。ユルゲン・クロップ監督チームビッグマッチに強いことは明済みで、取りこぼしを減らすことができれば優勝に近づくはずだ。

チェルシー 戦評価:A

 過去2シーズンクラブリーグFAカップトロフィーをもたらしたアントニオ・コンテと袂を分かち、ナポリからマウリツィオ・サッリを新監督に迎えた。指揮官は自身の古巣から獲得したジョルジーニョを中盤の核に据えた4-3-3システムを導入。前任者の3-4-3からのシフトは一一夕ではいかないだろうが、プレシーズンマッチではこれまでにないアグレッシブなパスワークを随所に見せるなど、新スタイルには期待が集まっている。もっとも、サッリが希望したゴンサロ・イグアインの獲得が失敗に終わり、ストライカー容にはやや物足りなさが残る。スペインの移籍市場が閉まる8月末まではエデン・アザールの去就も予断を許さない状況で、ここぞの得点には一の不安がある。

アーセナル 戦評価:A

 22年に及んだアーセン・ヴェンゲルの長期政権に幕を下ろし、モダン戦術に明るいウナイ・エメリの下で新たなフェーズに入る。今は積年の課題をすべく補強にも奔走。GKベルント・レノ、DFのソクラティス・パパスタソプーロスとシュテファンリヒトシュタイナー、守備的MFルーカス・トレイラを迎え入れ、昨季ビッグ6で最多の51失点を喫した守備にメスを入れた。昨季途中に加入し、後半戦の13試合で10ゴール4アシストを記録したピエール・エメリクオーバメヤンは得点王を狙える存在。同じく1月加入のヘンリク・ムヒタリアン、新10番のメスト・エジル、2年アレクサンドル・ラカゼットを擁する攻撃リーグトップクラスだろう。守備が安定してビッグマッチでもコンスタントに結果を出せるようになれば、ノルマであるトップ4返り咲きが見えてくる。

バーンリー 戦評価:C

 クラブの予算規模や選手層を考えれば、7位というビッグサプライズを起こした昨季の再現は簡単ではない。実際、他のクラブべると立った補強ができず、チームは質、量ともに“横ばい”。予備予選を勝ち抜いてヨーロッパリーグ本戦にコマを進めたとすれば、両立に苦しむことになるだろう。とはいえ、ショーンダイ監督の下で見せる一枚岩の戦いは今季も健在。4-4-2で堅守速攻を仕掛ける“英国アトレティコ・マドリード”のようなサッカーは決して侮れない。特にニック・ポープ、トムヒートン、新加入のジョー・ハートと代表クラスが並ぶGKジェームズ・ターコウスキ、ベン・ミー、ミドルズブラから加入のベンギブソンといった“準代表クラス”がそろうDFは充実の容。クリス・ウッドらFWが少ないチャンスを確実に生かせば、残留争いは回避できそうだ。

エヴァートン 戦評価:B

 サム・アラダイス監督を解任し、招へいを熱望していた気鋭の若手監督マルコ・シウヴァを1年越しでゲットした。昨季のチーム得点王ウェイン・ルーニーは新地をめたが、伸び盛りのブラジル人ドリブラー、リチャーリソンを4400万ポンド(約63億円)でワトフォードから獲得。2年のジェンク・トスンやギルフィ・シグルズソン、セオ・ウォルコットら、前監督が長所を引き出せなかった選手たちが本領を発揮できれば攻撃は十分に期待が持てる。最終ライン高齢化がやや心配だが、新戦リュカ・ディニュ、W杯ブレイクした守護ジョーダンピックフォードの存在は心強い。ビッグ6の牙を崩すチームが出てくるとすれば、間違いなくその補の一つだ。

レスター 戦評価:C

 リヤド・マフレズがシティに去り、2年前の「レスター奇跡」を知るは数えるほどになった。それでも、1年間でビッグ6すべてからゴールを奪い、昨季も20ゴールを挙げたジェイミー・ヴァーディと開幕直前に契約延長。絶対的エースの残留は何よりの“補強”だろう。攻撃岡崎慎司マーク・オルブライトンデマライ・グレイといった既存戦に加え、昨季2部で最も多くのチャンスを作り出したU-21イングランド代表MFジェームズ・マディソン、さらにクロード・ピュエル監督リヨン時代の教え子であるアルジェリア代表MFシド・ゲザルを獲得した。“ポスト・マフレズ補の新戦2人を含む周囲の選手がどれだけヴァーディをサポートできるかがチーム不沈のカギを握る。

ニューカッスル 戦評価:C

 昨季は昇格1年で10位と健闘。今季もラファエル・ベニテス監督が得意とする堅守速攻の手堅いスタイルベースに、期の残留確定と2季連続のトップ10入り、あわよくばEL出場権の獲得をす。オーナーの“出し渋り”によって指揮官が理想とする補強はできなかったが、デンマーク代表DFファビアンシェアプレミア経験豊富なMFキ・ソンヨン、そしてエース不在だった前線に武藤嘉紀とサロモン・ロンドンを獲得。昨季後半戦に活躍したGKマルティン・ドゥブラフカの全移籍と、MFケネディの再ローン契約もまとめて最低限の容は整えた。新FWが昨季38試合で39ゴールと決定不足に苦しんだチームの“泣きどころ”をどう埋めるかがポイントとなる。

クリスタル・パレス 戦評価:D

 昨季序盤に就任し、ズタボロだったチームを救ったロイ・ホジソン監督の続投が決定。今季も安全第一の4-4-2で残留争い回避をす。このクラブの財政状況的に補強資があまりなかったが、それでもリーガの実GKビンセント・グアイタとシャルケ育ちの22歳のMFマックス・マイヤーをフリーで獲得。ウェストハムで余剰戦となっていたセネガル代表MFシェイク・クヤテを適正価格で引き抜くなど、地味ながら効果的な補強はできた。既存メンバーも含めて戦はまずまず。あとは大エースであるウィルフリード・ザハの活躍に懸ける。

◆ボーンマス 戦評価:D

 プレミア初昇格から4度を迎えた今季は、スペインサイドバックディエゴリコ20歳のウェールズ代表MFデイヴィッドブルックスと契約。さらにクラブレコードとなる2500万ポンド(約36億円)を費やし、W杯にも出場したコロンビア代表MFジェフェルソン・レルマを獲得することに成功した。チーム最大の武器だった中盤はブルックスとレルマを加えてさらに戦アップイングランド代表に選出されたルイスクックを中心に、今季もエディー・ハウ監督が掲げる“攻めた”パスサッカーで中位定着を狙う。欲を言えば、昨季不発に終わったジャーメインデフォーに代わる点取り屋が欲しかったが、リーグ最少規模の予算しかない小クラブにしてはまずまずの補強だろう。

ウェストハム 戦評価:B

 デイヴィッド・モイーズに代えて、かつてシティを優勝に導いたマヌエル・ペジェグリーニを招へい。新監督の下でクラブ伝統の攻撃的フットボールを模索するが始まる。昨季まではを過ぎたベテラン選手が多い印だったが、の大投資によってチームの“イメチェン”に成功。クラブ史上最高額の4000万ポンド(約57億円)でラツィオから獲得したフェリペ・アンデルソンを筆頭に、ウクライナ代表FWアンドリー・ヤルモレンコ、アーセナル至宝ジャックウィルシャーなど、代表クラスの新戦を大量に迎え入れた。中堅クラブ随一の豊富な戦を見れば、トップ10入りはもはやノルマ。欧州カップ戦の出場権獲得が現実的な標となる。

ワトフォード 戦評価:D

 昨季途中にマルコ・シウヴァ監督(現エヴァートン)からチームを引き継いだハビ・グラシア監督にとっては初のフルシーズンの戦い。めてその手腕の価が問われるが、攻撃の要だったリチャーリソンをエヴァートンに引き抜かれたことで戦ダウンは免れないだろう。加えて、リチャーリソン売却で得た巨額の移籍を効果的に“再投資”できなかったのも気になるところ。ジェラール・デウロフェウを全移籍で買い取り、ウインガーケン・セマ、左サイドバックアダムマジーナ、ベテランGKベンフォスターらを獲得したが、いわゆる“玉補強”はなし。苦しいシーズンを送ることになるかもしれない。

ブライトン 戦評価:D

 昨季は昇格組ながら残留争いとは縁のシーズンを送って15位フィニッシュ。パスカルグロスやダヴィ・プレパー、ホセイスエルドらを“当てた”昨に続き、今はリールのマリ代表MFイブ・ビスマ、マインツのナイジェリア代表MFレオン・バログン、ライプツィヒブラジル人DFベルナルド、そしてAZイラン代表FWアリレザ・ジャハンバフシュなど地味ながら実を加えて戦アップに成功した。キーマンはアジア最高のストライカーと呼ばれるエールディヴィジ得点王のジャハンバフシュだろう。過去イングランドにやって来たオランダリーグ得点王は極端に当たり外れが大きいが、この“賭け”に勝てれば面い。

◆ハダースフィールド 戦評価:D

 ブライトンと同様に昇格2年であわよくばトップ10入りを狙う。今は決して多くない補強予算をうまくやり繰りし、ドルトムントから即戦エリックドゥルムを補強。オランダMFジュニーニョ・バクーナ21歳)をフローニンゲンから、エジプト期待のFWラマダン・ソブヒ(21歳)をストークから、世代別のフランス代表に名を連ねるFWアダマ・ディアカビ(22歳)をモナコから獲得して有望をそろえた。チームを率いるのはユルゲン・クロップの良き友人でもあるデイヴィッドワグナー監督。持ち前の明るいキャラクターチームをまとめあげ、若い選手たちを導ければ上位進出も夢ではない。

サウサンプトン 戦評価:C

 昨季は残留争いに巻き込まれ、4シーズン続いていたトップ10フィニッシュを逃す失態を演じた。上位への返り咲きを狙いたいところだが、チームがあまり代わり映えしていないのは気がかりだ。シティユース出身のGKアンガス・ガン、デンマーク代表DFヤニック・ヴェステルゴーアを迎えた守備はまずまずの容が整ったが、攻撃は依然として迫不足。バーゼルからノルウェー代表アタッカーのモハメド・エルユヌシを、開幕直前にはリヴァプールからダニーイングスをローンで獲得したが、得点不足解消の特効になるかどうかは未知数だ。チャーリーオースティンやマノロ・ガッビアディーニといった既存のストライカー爆発がなければ今季も苦しむことになるかもしれない。

ウルヴァーハントン 戦評価:C

 圧倒的な強さで昨季の2部リーグを制した現チームは、最後にプレミアに在籍した6年前とは全く別のチームに生まれ変わっている。2016年クラブを買収した中国企業の資バックアップと、その取引成立時に暗躍した大物代理人ジョルジュ・メンデスのコネクションを使ってポルトガル系のビッグネームを次々と獲得。若き逸材ルベン・ネヴェス、準代表クラスのジョッタとエルデル・コスタのFWコンビに加え、このは現役代表のジョアン・モウチーニョとルイ・パトリシオ、さらにベンフィカメキシコ代表FWラウール・ヒメネスらを加えて実績十分のチームに仕上がった。うまく歯車が噛み合えば、いきなりトップ10も狙える容だ。

カーディフ 戦評価:D

 降格したスウォンジーに代わるウェールズの雄としてプレミアの舞台に戻って来たが、メンバーの大半がプレミア初挑戦と容は脆弱。戦的には昇格3クラブの中で最も厳しいと言わざるを得ない。の補強も思うように進まず、働き盛りの産選手をに2部から買いそろえるにとどまった。プレミアを知るニール・ウォーノック監督も最近はさしたる実績を挙げておらず、かつての“残留力”を発揮できる保はない。現地ブックメーカーのオッズでも降格の本命とされている。

フルアム 戦評価:D

 昇格プレーオフ決勝でアストン・ヴィラを破って5シーズンぶりにプレミアに復帰。メンバーは総じて小粒だが、現チームには注すべきスター選手が何人かいる。その筆頭がサイドバックからウイングまでこなす2000年まれの18歳ライアン・セセニョン。17歳にして昨季2部の年間MVPき、「ギャレス・ベイルの再来」とも言われる超新星チェックするだけでもフルアムの試合は一見の価値があるだろう。他にもドルトムントからローンで獲得したアンドレシュールレ、争奪戦を制してニースから補強したコートジボワール代表MFジャンミシェル・セリなど、“個”をそろえたチームに仕上がった。

今シーズンはどのチームが栄冠を手にするのだろうか… [写真]=Getty Images