15年に右肘折「怪がなかったら『自分でネクタイ、結べるのにな』とか」

 競泳のパンパシ水泳東京辰巳水泳場)第3日は11日、男子200メートル個人メドレー萩野介(ブリヂストン)は1分5666で3位。400メートルメダルに続き、今大会2個メダルを獲得した。

 一度は「自分の体じゃないみたい」と思った右肘を懸命に動かし、をかいた萩野。15年、自転車で転倒し、右肘を折。リハビリを経て、翌16年リオデジャネイロ五輪メダルを獲得したが、その後に患部を手術。一度生じてしまった感覚のズレはなかなか取り戻せず、昨年は苦しんだ。

 実は、いまだ“後遺症”も残っている。4月に取材した時、怪について聞くと、こんな話を明かしてくれた。

「怪がなかったらと思う部分もいっぱいありますよ。『自分でネクタイ、結べるのにな』とか。肘を怪してから、後ろに手が回らないんですよね。そういうことを日常的に思う部分もあります」。手術の影で肘の可動域が狭まり、首の後ろまで腕が回らず、ネクタイを自分で結ぶことが難しいという。

故障をプラスに変えた心の強さ「自分って凄く水泳が好きなんだなと」

 しかし、そんな日常生活に及ぼすほどの影があっても「経験が人を変えていくと思っているので。怪も一つの経験なので」と言って決して言い訳にすることがない。むしろ「怪があって考える時間もあったし、精的に成長できた」とプラスに捉えている。その裏で気づいたこともあった。

「怪という経験が体も変えたけど、気持ちも自分の人生を変えてくれた。泳げなかったり、結果が出なかったり、苦しい時期はいっぱいあったけど、その時にふと『まだまだ、これから』『もっといい泳ぎをしたい』と考える。なんでそう考えるかというと、自分って凄く水泳が好きなんだなと。それって水泳が好きじゃないと思えないので」

 もう、怪をする前の肘は戻ってこない。それでも、萩野は今いる自分を受け入れ、前を向き、泳ぎ続けている。肘の状態については「やっと準備できた感じ」という。2つのメダルは復活の印。レース後、「もまだまだ強くなります」と強く言った表情は吹っ切れていた。(THE ANSWER編集部)

男子200メートル個人メドレーで萩野公介(右)は今大会2個目のメダルを獲得【写真:Getty Images】