いつの時代も庶民の味方は大衆です。小さくてキビキビと走り、パッケージングの工夫によって居住スペースやラゲッジ間もしっかりと確保。整備性に優れ、燃費もよく、ランニングコストも控えめで、実用性も走行性にも優れています。そんな名と呼ばれる大衆が、ヨーロッパには数多く存在しており、これからも生み出され続けていくでしょう。今回は欧州自動車メーカーが手がけた、大衆の今昔物語をお届けします。文・西山昭智

フィアットの昔と今
フィアット 500

ボディサイズ:全長2,970mm×全幅1,320mm×全高1,320mm
ホイールベース:1.840mm
車両重量:470kg
エンジン冷直列2気筒OHV
排気量:479cc
定員:4名

チンクチェントでおなじみのフィアット500。初代モデル(トポリーノ)は戦前に誕生していますが、イタリアで広く知られるようになったのは1957年に登場した2代目(ヌオーヴァチンクチェント)から。可らしい丸みを帯びたスタイリングに、大人4名が乗れる居住間を確保。エンジンを後方に搭載するRRレイアウトを採用しています。

最高出はわずか15psほどで、最高速度も90km/hと決して速くはありませんでしたが、当時スクーターが、おもな移動の手段だった庶民にとって、チンクチェントはまさに画期的な存在でした。

価格も抑えめだったこともあり、イタリア内で大ヒットを記録、その人気ヨーロッパ全体へと飛び火します。1975年の生産終了までに約368万台も生産されました。

フィアット パンダ 2011

ボディサイズ:全長3,655mm×全幅1,645mm×全高1,550mm
ホイールベース:2.300mm
車両重量:1,070kg
エンジン冷直列2気筒SOHC
排気量:875cc
定員:5名

ヌォーバ500が生産終了されたのち、1980年デビューしたのがパンダです。製作にはジウジアーロ率いるイタルデザインが関わっており、パッケージングや室内レイアウトの高さから傑作モデルと呼ばれています。

そんな名の血を受け継ぎ、2011年に3代パンダが誕生します。小さなボディと0.9L 直2エンジンを組み合わせ、かつてのフィアット500と同様に大衆としてヨーロッパでは広く知られる1台となりました。

フィアット500現在リクエイションカーとして販売されていますが、あちらはどちらかというとパーソナルカー家族や荷物をのせて、あちこちへ出かけるという実用性ではパンダに軍配が上がります。

Volkswagen beetle タイプ1

ボディサイズ:全長4,070mm×全幅1,540mm×全高1,500mm
ホイールベース:2.400mm
車両重量:730kg
エンジン水平対向4気筒OHV
排気量:1,131cc
定員:5名

フォルクスワーゲンの大衆といえば、タイプ1です。ビートルという称でおなじみのタイプ1は1938年から2003年まで生産され続け、その生産台数は累計2,100万台を突破しているほど。ドイツだけでなく世界の大衆として君臨し続けた偉大なモデルです。

設計に携わったのはフェルディナントポルシェ博士、生産を導したのはアドルフ・ヒトラーといういわくつきのモデルですが、大人2名と子供3名の家族が乗れる居住間を備え、旅行のためのラゲッジスペースも確保、頑丈でメンテナンス費用がかからず、燃費性にも優れているという要件をクリアしたタイプ1は、大衆の礎を築いた名作といえるでしょう。

VW ポロ 2017

ボディサイズ:全長4,060mm×全幅1,750mm×全高1,450mm
ホイールベース:2.550mm
車両重量:1,160kg
エンジン冷直列3気筒DOHC
排気量:999cc
定員:5名

フォルクスワーゲンタイプ1の次なる大衆といえば、もちろんゴルフ。ジウジアーロの手がけた初代ゴルフ世界的にも大ヒットし、現在まで7代にわたりゴルフが生産され続けています。

しかし代替わりするごとに体は大きくなり、それにともなって車両価格も高騰、現在ゴルフは大衆と呼ぶにはあまりにも立になりすぎました。その代わりに新しく大衆の地位へと繰り上げられたのが、ゴルフ分ともいえるポロです。

1974年に初代ゴルフが発売され、その翌年に続けてデビューしたポロ。当初は3ドアハッチバックでしたが6代となる現行ポロは5ドアになって使い勝手も向上。2018年フルモデルチェンジによって全幅が1,800mmとなってしまったものの、ボディの肥大化は抑えられており、家族みんなで出かけられる大衆として活躍してくれます。

ルノーの昔と今
ルノー 4(キャトル)

ボディサイズ:全長3,665mm×全幅1,485mm×全高1,470mm
ホイールベース:2.395mm
車両重量:600kg
エンジン冷直列4気筒OHV
排気量:750cc
定員:4名

ルノーの大衆として大ヒットを記録したのが4(キャトル)です。1961年の登場から1992年まで生産が続けられたロングセラモデルで、その生産台数は累計800万台をえています。フォルクスワーゲン タイプ1、Tフォードに続き、単一種の量産として世界第3位の販売記録を立しています。

4枚のドアに跳ね上げ式のテールゲートを組み合わせたいわゆる5ドアハッチバックで、実用性の高さも人気の秘になっていました。

ルノー カングー

ボディサイズ:全長4,280mm×全幅1,830mm×全高1,810mm
ホイールベース:2.700mm
車両重量:1,450kg
エンジン冷直列3気筒DOHC
排気量:1197cc
定員:5名

ルノー4にも存在していたフルネットと呼ばれるボディスタイルを、現代リファインしたのが、ルノー カングーです。小の後ろに貨物を組み合わせたような小ボンネットバンで、ユニークな見たと想像以上の使いやすさが特長です。

1997年に初代カングーがデビューすると、乗用トラックメリットを組み合わせた使い勝手と乗り味で大ブレイクヨーロッパだけでなくアジアでも人気となり、マレーシアノックダウン生産が行われたほど。シートアレンジが自在で日本でも高い人気を誇りました。

2007年には2代目カングーがデビューしており、欧州の積載規格に合わせて横幅を広げ、用途に応じた多なボディのラインナップがさらに人気を集めました。

カングーよりも小さなモデルルノーにもありますが、実用性を兼ね備えた大衆であり、キャトルの系譜を受け継ぐという点においてはカングーが現代版の大衆といえるでしょう。

シトロエンの昔と今
シトロエン 2CV

ボディサイズ:全長3,830mm×全幅1,480mm×全高1,600mm
ホイールベース:2.400mm
車両重量:560kg
エンジン冷対向2気筒OHV
排気量:375cc
定員:4名

20世紀を代表する1台として、カーオブ・ザ・センチュリーにも選出された大衆傑作シトロエンが1948年に発売したFF方式の小乗用です。

フランスの農村部で乗ることを前提につくられたのが開発のきっかけで、農作物を運ぶための積載と運転のしやすさ、燃費などに重点を置かれており、スタイリングは二の次とされていました。そのため発売当時からそのスタイリングには、賛否両論さまざまな意見が飛び交いました。

しかし結果的に、2CVは商業的に大成功をおさめ、あらゆるフランス庭に受け入れられることになりました。

シトロエン C3

ボディサイズ:全長3,995mm×全幅1,750mm×全高1,495mm
ホイールベース:2,535mm
車両重量:1,160kg
エンジン冷直列3気筒DOHC
排気量:1,199cc
定員:5名

2002年の初代C3登場以来、全世界200万台をえる売り上げを記録するC3。3代となる現行C3は、C4カクタスで話題を集めたエアバンプピカソのようなフロントマスクが特長です。

ボディサイズ車両価格などあらゆる面でバランスがよく、フランスだけでなくヨーロッパでも大衆として人気があり、日本ではデザイン性の高さで同じく人気を集めています。


ただコンパクトなだけでなく、実用性と経済性も兼ね備えているのが大衆の条件。それらを意識して多くのエンジニアがこの難しい課題に挑戦し、歴史に残る傑作を数多く輩出してきました。それらの遺伝子を受け継ぎながら、21世紀版の大衆が同じように作られ続けているのです。

昔と今、欧州各自動車メーカーの大衆車はどう変わった?