トランプがいつか『核のボタン』を押すのではないかと、本当に心配だわ」

カリフォルニア州在住のダイアン50代)だけでなく、何人ものアメリカ人の口からこの言葉を聞いた。

トランプ大統領の就任一年後、ニューヨーク地下鉄ホームベンチで隣にすわったニカラグア出身の女性30代)は、トランプ氏について意見をめると、片言の英語でひと言、「怖い(I'm scared.)」とつぶやいた。その人は合法移民だったので、何も怖がることはないでしょう?」と聞くと、「トランプが何をするか、予測できない」と首を横に振った。

性別、人種、宗教などに関係なく発症

2018年5月ニューヨーク内の住宅地で美しく咲き誇るに足を止めると、同じようにそこで立ち止まって写真を撮り始めた女性48)が、イラン出身だった。トランプ氏がイラン核合意からの離脱を表明した翌日だったこともあり、私がその話をすると、「イランの怒りが爆発したら、核戦争になるかもしれない」と恐れていた。

科医や精分析医などによると、トランプ大統領の就任以来、米国では「トランプ不安障(TAD=Trump Anxiety Disorder)」に苦しむ人が増えている。一般の不安障とは異なり、トランプ氏に関わるもので、性別、人種宗教などに関係なく発症するという。

トランプ氏の挑発的な言動に、「人類が滅亡するのではないか」、「戦争が始まるのではないか」、「次に何が起きるのか」という不安や絶望にかられる。ソーシャルメディアで過度に時間を費やし、眠れないなどの症状が見られる。

2017年8月トランプ大統領ツイッターに、「北朝鮮米国をこれ以上脅かせば、北朝鮮は「世界がこれまでにしたことのない炎と怒り(fire and fury)に直面する」と投稿し、人々を震え上がらせた。

2018年7月イランロウハニ大統領に宛てて、すべて大文字で次のようにツイートした時にも、多くの人に衝撃を与えた。

"NEVER, EVER THREATEN THE UNITED STATES AGAIN OR YOU WILL SUFFER CONSEQUENCES THE LIKES OF WHICH FEW THROUGHOUT HISTORY HAVE EVER SUFFERED BEFORE. WE ARE NO LONGER A COUNTRY THAT WILL STAND FOR YOUR DEMENTED WORDS OF VIOLENCE & DEATH. BE CAUTIOUS!"
(決して、二度と、米国を脅したりするな。さもないと、過去歴史でもまれに見る苦しみの報いを受けることになる。々はもはや、お前暴力や死などの狂ったたわごとを許すようなではない。心しておけ!)

大統領を精神的な親と見る米国民

2018年7月末、トランプ氏支持の傾向が強いとされるFOXニュースでも「トランプ不安障」について取り上げた。そのなかで精科医のダニエル・ボバー氏は、「これは正式な病名ではなく、症状が見られる人がそれほど多いわけではない。元々、何かしらの不安障を抱えていた可性があるのではないか」と摘した。

さらに同ニュースの別の番組では、「そうした恐怖を浸透させているのはか」と投げかけ、「トランプの言動は米国第三次世界大戦に導いている」、「大統領選の終焉は、まさにこの世の終焉だ」など、他局が流した反トランプを紹介した。

トランプ氏を支持するニュージャージー州在住のジェフ50代)も、「フェイクニュースネットで、ネガティブニュースにしか触れていないからだ」と批判する。「内総生産(GDP)は伸びたし、失業率は下がった。トランプの功績はまったく評価せず、悪いことはすべて彼のせいにする。結局、(反トランプは)負けを認められないだけだ」

レゴン州ポートランド郊外に住む ジョイス30代)は、大統領選挙戦の前から政治トランプ氏について、セラピストに話すことが多くなったという。

「『いったい次は何?』と、気になり、中でも携帯ニュースを確認していたけれど、セラピストに言われてしばらくニュースを追うのをやめたら、前ほど不安を感じなくなった」と話す。

サイコセラピストのエリザベス・ラモット氏は、「自分はこの症状にあえて『トランプ』の名は使わないけれど、人格障の親に育てられた人に見られる症状とよく似ている。自覚があるにせよないにせよ、私たちアメリカ人はこの大統領を、精的な親として見る傾向がある」と話している。

(随時掲載)

++ 岡田プロフィール
おかだ・みつよ 作家エッセイス
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地記者を経て、日本米国を行き来しながら、米国市民日常と哀歓を描いている。中西部で暮らした経験もある。文文庫のエッセイ「ニューヨーク魔法シリーズ2007年の第1弾から累計37万部をえ、2017年12月5日シリーズ第8弾となる「ニューヨーク魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカ家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

トランプ大統領(C)FOMOUS