2018年8月7日(火)、秋葉原ガジェット通信フロアにて、「鼎談~2018夏、アイドルシーンの広がりを考える~」が開催されました。

アイドルLOUNGE』はアイドル業界向けの勉強会や懇親会を行っています。
前回のオフラインイベントでは「アイドルの世界挑戦を考える」というテーマで『2ちゃんねる』創設者・初代管理人西村博之ひろゆき)氏、TOKYO IDOL FESTIVAL(以下、TIF2018総合プロデューサーの菊竹龍氏、『アイドルLOUNGE』をコーディネートしている濵田俊也氏との鼎談が行われました。

ひろゆき・菊竹龍・濵田俊也、アイドルの世界挑戦を考える。アイドルLOUNGE オフイベントVol.8レポート
https://getnews.jp/archives/2057563 [リンク]

Vol.10となる今回のオフイベントは、ゲストとして、2018年8月25日(土)26日(日)に横浜アリーナでの@JAM EXPO 2018を控えた、ポップカルチャーフェスティバル『@JAM』総合プロデューサー・橋元恵一氏、そしてアニメゲーム、そしてアイドルに最も詳しいアナウンサーとしても有名で、『没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術』など複数の書籍を著して社会分析にも定評があるニッポン放送アナウンサー吉田尚記氏を迎えての開催となりました。

最初の質問は、吉田氏に飛んだ、「好きなアイドルはいるんですか?」というもの。

濵田氏が「ナンセンスな質問だったでしょうか」と言いながらのこの質問に対し、吉田氏。「過去に心揺れたアイドルは1,000人以上居ますよね(笑)」「心動く人の傾向をまとめると、今までに居なかったなっていう“未来を感じさせるタイプの人”に逢うとグッと来やすい」「伝統を守ってる人を見ても“今時こんな子いなかったよね”と思っちゃうんで。全部じゃん、と」。

そんな導入を交えつつ、話題は今回のテーマである「広がり」へ。

大型イベントと中規模イベントの「広がり」

橋元氏は@JAMシリーズとして『@JAM 201X』、『@JAM PARTY』、『@JAM the Field』、『@JAM EXPO』をはじめとした幾多のイベントのみならず、『Party Rockets GT』、『転校少女*』、『JewelCiel』、『Fullfull Pocket』などのプロデュース業務、TV番組『超!アイドル戦線』のスーパーバイザーに加え、アプリ『@VOICE』のリリース、更にはタワーレコードと@JAM共同のアイドルレーベルMUSICNOTE』の設立……などなど、橋元氏ご本人がまさに「アイドルシーンの広がり」を体現する人物であると濵田氏は紹介し、以降、橋元氏の活動に触れながらアイドルシーンの広がりについて鼎談していくかたちでトークは進んでいきました。

「色々やりすぎですね(笑)」と笑う橋元氏、最近のアイドルイベント業界については、「夏の3大フェス(『アイドル横丁夏まつり!!』、『TIF』、『@JAM EXPO』)については大きく変わっていない」「中規模のイベントはとにかく減っていない上に多様化してきていて、正直わかりにくい」と印象を語った。

それを受けて濵田氏も、実際、すでに開催された今年の夏の大型アイドルイベントは、『アイドル横丁夏まつり!!』は大きく動員数を伸ばし、『TIF』も来場者数はこの3〜4年の高水準を維持していると解説。

アイドルファンであり、イベント主催側にも属する吉田氏はファンアイドルの接し方の変化について「(イベントで)自分の推し以外に、新たなアイドルを探そう、としているファンがすごく減っているように思う」と推察。オムニバスイベントなどは動員面で厳しいところがあるが、そこをあきらめたらメディアメディアある意味が無くなってしまう、と切り込んだ。半面、ファンアイドルの可能性について「例えばTIFでは自分の推しの4グループ前から待ってたりするじゃないですか。あれ良いな、と。あれこそが次につながる一番重要な事じゃないかな」とも述べた。

@JAMが持つ「繰り返し」と「広がり」

濵田氏の「@JAMシリーズはどう展開してきたのでしょうか」という問いかけに対し、橋元氏は自身の手がける@JAMイベントについて次のように語った。
「古い考え方かもしれないけど、同じことを繰り返すことでお客さんにも理解してほしいし、出演していただける方にもわかってほしい。やり続けてきたことで全体がルール化して今の@JAMシリーズがあるんです。Jリーグではないですがメイン、本丸となるイベントがあり、それを経て(メインイベントを取り囲むように)他のシリーズイベントがあるので、それを皆さんが共有していただけたらいいなぁ、と思いますけどね」

こんなやりとりも。
濵田氏「ご自身には、やめたい、と思ったイベントは無いんですか?」
橋元氏「@JAM EXPOですね(笑)。毎度1000万くらいの赤字なんですが、続けるならせめてトントンに持っていきたいなと」

そんな@JAMシリーズについて吉田氏は、自由なイベントである、と述べました。「看板はめちゃめちゃ有名じゃないですか。でも、例えばTIFって言うと“真夏”! “お台場”!みたいにパーッと浮かぶと思うんですけど、@JAMって色んなイメージがあるんですね。スタイルが融通無碍(ゆうずうむげ:固定されず自由であるさま)だなと」「別の事やってもいいし、やってくれそうだな、と」

また、吉田氏は、「@JAMって面白いものは(ジャンルに関わらず)どんなものでも等価値だと考えているんじゃないか」とも語りました。「私は、アニメ紅白歌合戦など、イベントを運営する側でもあるのですが、イベントに出演してもらう方の最大の特徴は『単に面白い』ことにあります。『売れるか売れないか』は誰にもわからないですが、面白ければ売れる可能性は高いし、面白い人たちとご一緒できるイベントは、単に楽しいですよね!」

橋元氏は@JAMアイドルの取り組みについて「今も昔も出ていただく前に必ずライブを観にいってから決めています」「だから大変なんですけど、自分の中に説得力はあると思っています」と変わらないスタイルについて述べました。

橋元氏の音楽レーベル、アイドル番組

イベント以外では、橋元氏は、実店舗73店舗を持つTOWER RECORDと組んだアイドルレーベルMUSICNOTE』のほか、テレビアイドル番組『超!アイドル戦線』も手掛けています。アイドル番組には個々のアイドルメインになるものと、オムニバス的なものに分けられると濵田氏は分類しており、『超!アイドル戦線』は後者のパターン。昨年7月より「メジャーから地下アイドルまでを全方位で紹介するアイドル番組」としてスタートし、今年2018年の4月からはメンズガールズを半分ずつ紹介する番組と変化しました。

オムニバス地上波テレビで、アイドル番組として継続が決まっているのは現在(記事執筆時点)、『超!アイドル戦線』のみ。それについて、吉田氏は「つまりはスポンサー集めが厳しいということなのだろうが、放送でアイドル関係が儲からない、というのは大問題だと思っている。メディアがないと衰退してしまう」と危惧を漏らしました。これは番組の編成とスポンサーの問題でもあるため、ノーリスクで出来るYouTubeのようなネットメディアとの違いであるとも補足しています。

さらに、『ミューコミ+プラス』(ニッポン放送STVラジオ)をはじめ、幅広くアイドルと共演している吉田氏は、ラジオにおけるアイドルについては「ラジオのことを理解しているアイドルと、全く理解していないアイドルに大きく分かれます」と解説。

吉田氏「ラジオで一番意味の無いのはお世辞や社交辞令。一言も聞いてる人の心に響かないんです」
橋元氏「本音を聞きたいと思っているんですね、リスナーは」
吉田氏「ちょっとやりすぎなとこまで攻めてくる方がいいはずなんです。本当に言っちゃいけないことを言ってしまう人はダメなんですけど。そのギリギリまで攻めてきて“わかるよな”という顔が出来る人。アイドル側の性格の問題ですね」

メディアとしてのテレビとラジオ、そしてアイドル

橋元氏は、テレビラジオも「出られるなら出させてほしいはず」という現在進行形のあこがれのメディアであるという。すると吉田氏は分析と一つの疑問を投げかけます。「テレビを観なくなったという人は増えたんですが、テレビに出たい、という人はいるんですね。観ないけど出たい、という。この構造がどういうことなのかいまだに答えが出ていないんです」

濵田氏「テレビに出たい、と思ってもらえるのはとにかくありがたいことですね。」

濵田氏「吉田さんは、ラジオテレビの違いって何だと思いますか?」

この問いに対して吉田氏。
キングコングの西野さんが言ってたんですが、テレビって映像が無いとダメじゃないか、原理的に撮ったものだから過去のモノなんです、と。ラジオの場合、この場で話をするとなると、未来の話。未来の話をすると画が100%無いんですよ。説明をすることで(存在しないものを)人の頭の中に描くことが出来るじゃないですか。だから、ラジオは未来の話が出来て、テレビは過去の話ししか出来ない、って言い方をしていて。」
「一方、松井玲奈ちゃんが“アイドルとは何か”って問いに対して一言で答えたのが“アイドルとは伸びしろである”って言ったんですよ。すげえと思って。」
アイドルとは伸びしろであるとするならば、イコール未来なわけで。アイドルは実はラジオに絶対向いているはず! なんですけどね」と、熱っぽく持論を展開しました。

テレビ業界になじみの深い濵田・橋元両氏も、この意見には大きな理解を示していました。

アイドルのクリエイティブの今

テーマが「アイドルクリエイティブの今」に移行すると、橋元氏のアイドルプロデュースに関する内容へ。イベント当日にニュースリリースを控えたグループもあり、現在進行形で、数多くのプロデュースを行う橋元氏、濵田氏からは「どういう経緯でこんなにたくさんプロデュースをしておられるのか」という質問が。

橋元氏「たまたま運営さんからお声がけしていただき、良いなと思ったグループさんは基本的にお受けしていこうと。色々ある中で続いているのが今関わっているものです。もともとアーティストのMV作ったりジャケット作ったりスタイリストやヘアメイク決めたりと、そういうクリエイティブのプロデュースっていう仕事に関わってきたので、(現在やっていることは)そう大きく変わらないですね」

濵田氏「橋元さんが考える、ご自身ならではのアイドルコンセプトの柱ってなんでしょうか? 意識されてるものとか」

橋元氏「アイドルっていうのはバンドとかと違い、基本、本人達がゼロ発信しないので、楽曲だったりコンセプトだったりプランニングが重要じゃないですか。なのでそれを考えていくわけですが、「プロデューサーやってます」ってのは本来苦手なんです。なので、最近は先頭にたってアイドルグループに指示出している、っていうより、本人たちが際立つような形にしたいなあと思っています。楽曲とかパフォーマンスで勝負させたいな、という思いが強いですね」

そうした橋元氏が求めるある種の“自主性”に対し、濵田氏から、アイドルを目指す今の子たちに、皆、それに耐えうる力があるのでしょうか、とさらに水を向けたところ、橋元氏は「全員ではないけど居ると思うんです。そういうアイドル、がんばるぞ、って耐性を持っている子ですね。マストですね」と返答。

吉田氏も「10代には何割かそういう子が居ますね! うちの娘はそうなんないかな、と思ったけどそうならないから、そこが普通の子とアイドルの違いなのかな(笑)」と振り返りました。最近のアイドルクリエイティブについて話が及ぶと「とても狭いコンセプトアイドルとか見ていると、その狭いところが面白かったりとか。コンセプトがいつの間にか取り払われても続いているというものすごい奇跡とか。いろんな縛り方があるはずだけど、まだ外から攻められるところはあるはず」と可能性をにじませました。「そういうのに出会った時にすごく沸き立ちますね!」

すると濵田氏、「吉田氏はアイドルプロデュースしないのですか? なさったらどうですか?」と水を向けます。

吉田氏「この世に(ゲーム)『IDOLM@STER』がサービスインした時からそれは思っています(笑)。けど、アイドルの方と事務所の方とメディアとそれぞれお付き合いがありますが、アイドルプロデュースとかマネージャーをやる人は、アイドルの事を最優先してあげなきゃダメじゃないですか。彼女たちは人生を本気で賭けてるから。それが(アナウンサーという)本業がある以上、無理。申し訳ないけど出来ないって感じですかね」とキッパリ。「でも、イベントだけ1個プロデュースしてください、とか、楽曲次の1曲だけ相談乗ってください、とかあったら“超やりたい!”って思います」と意欲をのぞかせました。

「全力でサポートしたよ、と言い切りたい」と語る吉田氏の言葉に呼応し、橋元氏も、人生の大事な時期を賭けている 子たちなのでアイドルで売れるのはもちろん、その後のそれぞれの夢のサポートにつながると良いなと思っている、と述べました。

アイドルとデジタルの今

次のテーマは「アイドルデジタルの今」。濵田氏は「アイドルについてのここ数年の最大の変化は『デジタル』である」として、橋元氏のアイドルアプリ『@VOICE』へ話を進めます。

橋元氏「基本的には、アイドルの声を伝えようという事で『@VOICE』って名前なんです。単純に言えばニュースアラームボイスですね。ボイスは、いろんな子の“おはよう”とか“カップラーメンできたよ”とかそういうのが20個くらい入ってるんですが、それをLINEスタンプみたいに買う事ができます。参加しているグループや@JAMニュースも見ることが出来ます。ゆくゆくはここでチケット買えたりとか、グッズを売ったりですとか、そういうことを考えています。プッシュ通知も打てるので、@JAMの○○ステージ5分押してます、というような即時性のあるものを知らせることも考えて、今、展開中ですね。」

アイドルアイドルファンデジタルメディアの使い方について聞かれた吉田氏は「(アイドルアイドルファンは)デジタルメディアの使い方が圧倒的に優秀」と語りました。
「誰かの言ってることが正しいというわけではない、という事を理解していて、めちゃくちゃリテラシーが高い使い方をしています。なので、彼ら彼女らに対して情報操作は出来ないですね。出来るのは(情報)解禁のみですね(笑)
アニメや声優の世界に対し、アイドルファンデジタルメディアの使い方は「いかに自分たちの好きなものを面白く扱おう」という事に対して貪欲で革新的だ、とも続けました。
アイドルが5年が旬だとして、声優はご本人さんレベルだと20年、30年レベルの商売なので、そこは保守的になると思って僕は見ています」

更に吉田氏はこんな予言も。「次は、VTuberが何か来ますよ。VTuberアイドルが何か来るなあ、というのは確かで。(増えたVTuberの中から)沸点が集まるはずです。その後に亜種が出てくるというのが全ての文化のほぼ共通なので。今目指すべきは、こっち(本流)じゃなくて亜種を目指していく」

アイドルシーンは「拡大」していっているか? ~まとめ

「お声がけいただいたところから始まっていて、受け続けていたらこうなっていた」という橋元氏、今後について聞かれると……。

橋元氏「一瞬で良いからTIFに肩を並べたいですね(笑)。8万人とか言われると鼻血が出そうになりますからね」
濵田「 (笑)イベント以外のところではどうですか」
橋元氏「アイドルプロデュースに関して言うと“売りたい”ですね。とにかくヒットを出したいです。」

そんなやりとりを経て、鼎談はまとめに進みます。

濵田「この鼎談、アイドルシーンの「拡大」、ってさらっとタイトルをつけちゃったんですが、吉田さん、今日のお話しを通してどう思われましたか?」
吉田氏「正しくは、『拡大』じゃなくて『拡散』していってるんだと思いました。僕、現場に行って何見ているかというとお客さん見ている気持ちが半分なんですけど。乃木坂の客も、AKBの客も、ももクロの客もTIFの客も、全部別ですもん、お客さん。なのに、全員が“売れる”という価値観に基づいて“今頑張れ”というモチベーションで動いている。売れる構造を作らないといけないですね」
濵田「業界が薄商いになってしまうのはとにかく良くないですよね。…最後、お二人にはそれぞれの今日のまとめをお願いできますでしょうか」
吉田氏「ラジオ聴いてください!今日みたいな話を聞いた後にラジオ聴くと、ああ、なんかそういうことなのかな、と、なんとなく違った気持ちで聞いていただけると思います。」
橋元氏「@JAMに関わってはや9年目なんですが、やるからには頂点を目指しているという気持ちです。商売なので売り上げをあげないといけないのでしょうけど、ブランディングだったりシーンの活性化だったりっていうことを目指してやってきたつもりです。その上で黒字になってイベントや色々なものを続けていけるようにしたいと思っています。引き続き見守っていただけたらと思います」

親しみある雰囲気の中で核心を突いた内容も盛りだくさんだった『アイドルLOUNGE』鼎談イベント、お客さんたちもメモなどを取りながら時には爆笑が起きるような濃密な1時間でした。“アイドルが示す未来”が垣間見える、そんなトークイベントとして『アイドルLOUNGEオフイベントVol.10』は幕を閉じました。

@JAM EXPO 2018 開催情報
日時:2018年8月25日(土)26日(日)
OPEN9:00 / START:10:00
会場:横浜アリーナ
URLhttps://www.at-jam.jp/series/expo2018 [リンク]

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