ニオイの科学的研究が進んでいる。視覚や聴覚と並ぶ五感の一つながら、あまり重視されていない嗅覚。だが近年、人間には驚くほど鋭敏な嗅覚が存在することが明らかとなり、他の五感と同じように、幻のニオイを感じている人が以外に多いことも分かってきた。


■あるはずのないニオイを感じる

 実際にはそこにあるはずがないニオイ、例えば、ゴムの焼けるニオイや生ゴミが腐ったようなニオイなどを感じたことはないだろうか。本当は存在しない「幻臭」を、40歳以上のアメリカ人の6%が体験しているという。今月16日付の科学メディアLive Science」が報じている。

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2018/08/post_17903_entry.html

 幻臭は心身の病気で起こる症状の一つとして以前から知られているものの、同じく人間の五感に生じる幻、幻聴や幻覚などと比べて、幻臭の研究は進んでいないという。健康な人々の間でどのくらい起きているものなのかも調査が少なく、不明な点が多かった。そこで、米国国立衛生研究所などの研究者は、2011~2014年に行われた米国国民健康栄養調査の質問の一つ、『そこに何もないのに、不快な悪臭や焼けるようなニオイを感じたことはありますか?』という項目に着目した。

 40歳以上の7300人以上の回答を分析した結果、研究者らは米国の成人のうち6.5%が幻臭を感じていると推定した。そのうち3分の2は女性で、体調に問題がある人の方が健康な人より幻臭を感じる割合が高かったそうだ。さらに興味深いことに、60歳以上の参加者では年を取るほどに幻臭を感じる割合が減っていた。調査結果は今月16日付で専門誌「JAMA Otolaryngology Head & Neck Surgery」に掲載された。

 幻臭の原因はよく分かっていない。研究者らは鼻腔にあるニオイの原因となる物質を捕らえる嗅覚受容体か、あるいはその信号を感知する脳に何らかの異常が起きているのではないかと考えている。調査によると、幻臭を体験した人の11%しか医師に相談したことがないといい、幻聴や幻覚に比べると明らかに軽視されていると研究者らは訴えている。


■実は鋭敏な人間の嗅覚

 一般に、人間の嗅覚は他の動物に比べて劣っていると考えられがちであるが、米ロックフェラー大学の神経生物学者レスリー・ボシャール氏によれば、実際には1兆個ものニオイを嗅ぎ分けることができるという。とりわけ敏感な人であれば、1000兆ものニオイを区別することが可能というから驚きだ。

 今月13日付の医学系ニュースメディア「Cancer News」によると、優れた嗅覚の持ち主は病気の細胞から発せられるわずかなニオイも感じることができるという。世界的に有名な調香師ジョーマローンさんもその一人で、彼女は10万分の1に希釈した水溶液中の化学物質を特定できるほどの嗅覚を持っている。彼女は夫の体臭のわずかな変化から、病気をいち早く察知したそうだ。

 人間の五感のうち、視覚や聴覚と比べると何かと軽視されがちな嗅覚であるが、実は健康のバロメータであり、計り知れないポテンシャルを秘めている重要な感覚の一つなのだ。犬並みとはいかなくても、我々人間もニオイから様々な情報を得ていることは間違いない。オカルト業界でも、霊的に危険な場所では悪臭がするとよく言われる。目や耳だけでなく、鼻が伝えてくれる感覚に、我々はもっと注意を払うべきなのだろう。


イメージ画像:「Thinkstock」より

イメージ画像:「Thinkstock」より