浦和退団から1年半、初の古巣戦に高ぶった感情「他の試合とは違うモチベーション」

「やっぱり楽しみだったし、モチベーションも他の試合とは違う高さでしたね」

 J2東京ヴェルディの元日本代表DF永田充は、22日に行われた天皇杯ラウンド16のJ1浦和レッズ戦に0-1で敗戦後、そう試合を振り返った。永田にとって浦和は、2011年から16年まで所属した古巣だ。出場機会を求めて移籍を決断してから1年半、その舞台がようやく訪れた。

 2011年のアジアカップで日本代表メンバーにも入っていた実力者だが、慢性的な膝の負傷も抱えている。今季はリーグ戦で出場がなく、7月11日天皇杯3回戦以来の出場だった。それでもセンターバックに入ると、かつてチームメイトだったFW興梠慎三やMF武藤雄樹と対峙。安定感のあるプレーを見せ、「前半はヴェルディペースだったし、あわよくば、と」という時間を過ごしていた。

 そのなかで悔やまれたのが、決勝ゴールになった失点シーンだった。左右に揺さぶられたところで、浦和DF岩波拓也からクロスが入った。永田が「少しボールウォッチャーになってしまって」というタイミングで、興梠がヘディングで落とすとFWファブリシオに蹴り込まれた。

 永田は興梠と浦和時代に仲が良く、興梠が右足を骨折した時には自宅までの送り迎えをしていたこともあった。その盟友が絡んだ1点に、改めてその能力の高さを感じたという。

「ゴール前の落ち着きは、慎三はさすがだなと思いましたよ。普通ならヘディングでシュートを打っちゃうと思うんですけど、優しく折り返して。たぶん、ギリギリまで判断を待ったんだと思うんですけど、あの落ち着きは凄いなと」

現役続行に意欲「膝が持つ限り、頑張りたい」

 永田は移籍が決まる直前だった16年の最終活動日が終わった後、「埼スタは入場の時に本当に熱くなるものがあるし、あの雰囲気でもう一度やりたい。でも、結果を出していけば自然とまたレッズと対戦することもある。それを目標にやっていきたい」と話していた。この日の会場は熊谷スポーツ文化公園で、本当の意味での浦和のホームではなかった。それでも、「久々に大きな声援が聞けて、自分が応援されているような気持ちでプレーしていたんですよ」と、微笑んだ。

「試合に絡めていないけど、使ってもらえればやれる自信はある。今日もJ1の浦和が相手でもしっかりやれたと思う」

 浦和加入初年度にJ1残留争いに巻き込まれ「大変な時に来ちゃった」と苦笑いし、翌年からはミハイロ・ペトロヴィッチ監督に、往年の西ドイツ代表の名手になぞらえて「フランツ」の愛称で重用された。それでも負傷がちで「監督は何度も使おうとしてくれていたんです。僕自身が結果を出せなくて、非常に自分に不甲斐ない気持ちでいましたし、このチームでもっと結果を出して貢献したかった」と、心残りもある浦和からの退団だった。

 その喜びばかりではない6年間を過ごした実力者は、試合が終わると浦和サポーターの陣取るゴール裏に挨拶した。永田は「拍手で返してくれた助かりました」と笑顔を見せた一方で、「勝ってたら止めとこうかなと思ってました。雰囲気とか、あるじゃないですか」と、冗談交じりに話した。

「膝が持つ限り、頑張りたい」

 35歳を迎えたとはいえ、J1昇格を争うヴェルディでもう一花を咲かせてほしい。天才肌のセンターバックには、それだけの能力があるはずだ。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

J2東京ヴェルディのDF永田充【写真:Getty Images】