【磯佳奈江インタビュー|Part 1】サッカーの知識を生かして始めた選手紹介は180人超

「皆さんと一緒にアイドルのエースストライカーになる夢を叶えたい! ボールは友達!」

 アイドルの象徴の一つであるキャッチフレーズからサッカーへの愛情が滲み出る。

 大阪を拠点とするアイドルグループ「NMB48」の磯佳奈江さんは、小学3年生から7年間、ボールを追いかけて汗を流した“サッカー女子”だ。INAC神戸レオネッサの元なでしこジャパン(日本女子代表)FW京川舞とはかつてチームメイトで、全国大会ベスト8に輝いた経歴を持つ。

 アイドルへと転身した彼女が、今も忙しい活動の合間を縫ってはサッカー観戦に足しげく通い、追い求める“もう一つの夢”とは――。

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――磯さんと言えば、独自の目線から注目のサッカー選手をツイッターで紹介する「いそっぺFC」が大人気です。コーナー誕生のきっかけを教えてください。

「お父さん、お兄ちゃんサッカーをやっていて、私も気づいたらボールを蹴っていました。小学3年生から中学3年生までプレーしていたので、サッカー好きは公言していたんですが、AKB48グループにたくさんのメンバーがいるなかで、何か“自分なりのもの”をできないかとずっと考えていた時に、やっぱり自分の知識を生かせるのはサッカーだなって。今のコミュニケーションツールの一つであるSNSを使って発信しようと思い立ちました」

――始めた当初に苦労したことは?

「最初は今のように動画ではなく、文字だけで書いていたんです。でも、ツイッターは文字数に制限(140字)があるので、どうしても調べた感じになってしまって。もう少し自分の言葉で詳しく伝えたいと考えて、10人目くらいから動画に切り替えました。注目している選手、その週に良かった選手について、約2分半の映像の中で私なりの視点でお話しています」

――すでに取り上げた選手は180人以上に上ります。

ワールドカップ(W杯)期間中は、代表チームを紹介していました。いそっぺFCを通して、私自身もサッカーをこれまで以上に深く知れたので、始めて本当に良かったなと思います。『少しでも長く続ける』を目標に、いろいろなことにチャレンジしていきたいです」

「右SBをやっていたので、自然と最終ラインに目が行きます」

――改めて、磯さんが感じるサッカーの魅力は?

「応援している人同士、もしお互いが知らなくても、ゴールが入った時にハイタッチして一緒に喜びを分かち合えるのは本当に楽しくて。『この選手いいよね』という話から友達になったり、輪が広がっていくのはすごく魅力です。ロシアW杯期間中は『大迫半端ないって』が流行ったので、NMB48の中でもサッカーをあまり知らないメンバーとの会話も増えました。半端ないって、をきっかけに『どんなプレーヤー?』『今度どこと対戦するの?』と興味を持ってもらえて。サッカーはコミュニケーションツールの一つですね」

――実際にサッカーをやっていた磯さん流の観戦方法はありますか?

「私は右サイドバックをやっていたので、自然と最終ラインに目が行きます。どうやってボールを回すのか、ラインをどれくらい上げるのか。ロシアW杯で日本がセネガル相手にオフサイドトラップを決めた時は興奮して叫びました(笑)。スーパーゴールだけじゃなく、FWとDFの駆け引きを楽しんだり、パスがつながってチームで挙げた得点は気持ちがいいです」

――今年、Jリーグには元バルセロナMFアンドレス・イニエスタヴィッセル神戸)、元アトレチコ・マドリードFWフェルナンド・トーレスサガン鳥栖)と世界的なスーパースターが加わり、日本のサッカーファンを沸かせています。

Jリーグの魅力が一層増しましたよね。イニエスタ選手のデビュー戦(湘南戦)を現地に観に行かせて頂いたんですが、そのプレーも神戸サポーターの熱狂ぶりも凄まじかったです。ボールに触れるだけで歓声が上がる光景を初めて体感して、もしかしたらここはスペインなんじゃないかと思いました(笑)。イニエスタ選手のパスは、『俺がボールを出すから、君は足を出してゴールに蹴ればいいんだよ』くらいの精度で出てきます。私はスペインのボールをつなぐサッカーが好きなので、ヴィッセルがそういうスタイルになってくれたら嬉しいです」

――磯さんが今のJリーグで“イチ推し”の選手は?

鹿島アントラーズの昌子(源)選手です。守備が武器ですが、ビルドアップで攻撃の起点にもなれて、鹿島では絶対的なCB。Jリーガーでも世界と戦えると証明してくれましたし、W杯で一番成長した選手だと思います。ロシアW杯のベルギー戦後に涙するシーンは何回見ても泣けてきますね。日本としては悔しい敗戦でしたけど、あの最後のカウンターは歴史に残る教訓だとプラスに捉えて、4年後に絶対リベンジしてほしいです」

サッカーがなかったら、磯佳奈江はいなかったかもしれません」

――今後、サッカーでの活動イメージはありますか?

「今年はW杯があって、ありがたいことにたくさんのお仕事をさせて頂きました。4年に一度の奇跡が起こった感じです(笑)。好きだけでは続けられないので、知識を深めていかないといけません。少しプレッシャーもありますが、NMB48の選抜メンバー入りを目指しながら、自分のサッカー番組を持つ、選手直撃を含めた現地リポートといった大きな野望に少しでも近づきたい。ファンの方とも、パブリックビューイングみたいにサッカーのイベントを開催できたら最高です」

――最後になりますが、磯さんにとってサッカーとは?

生きがいというか、もう自分の一部ですね。サッカーをしていたから、こういうお仕事をさせて頂いていますし、プレーをしていたからこそ先日もレジェンドマッチ(8月18日に開催された横浜FCのクラブ創設20周年記念イベント)に出させて頂いたので。サッカーがなかったら、磯佳奈江という人間はいなかったかもしれません。これからも大好きなサッカーを皆さんと楽しめるように、頑張っていきたいと思います」

鹿島アントラーズ編へ続く)

[PROFILE]
磯佳奈江(いそ・かなえ)/1993年8月9日生まれ、茨城県出身。2013年、「第1回AKB48グループ ドラフト会議」で、NMB48・チームBIIに1巡目指名を受ける。小さい頃から鹿島アントラーズのスタジアムや練習場に通い、ユニフォームを着て声援を送る筋金入り。Jリーグだけでなく、スペイン1部リーガ・エスパニョーラの番組アシスタントを務めた経験もあるなど、国内外のサッカーに熱視線を送る。(小田智史(Football ZONE web編集部) / Tomofumi Oda

NMB48の磯佳奈江さん【写真:荒川祐史】