9月26日自民党新総裁が安倍晋三氏に決まった。領土問題をめぐって中韓両国と緊迫状態にあるだけに、タカ派として知られる安倍氏の選出に国民からは期待の声も大きい。

だが、5年前の首相時代に突然の「腹痛退陣」をしているせいか、その就任に懐疑的な見方も……。そんな安倍氏よりも、実は自民党にはもっと動向が注目されている議員がいる。小泉進次郎氏だ。

地元のみならず党内でも評価が高い小泉氏だが、辛口で知られるジャーナリストにはどう見えているのか。BS11で報道局長を務める、政治記者歴20年以上の鈴木哲夫氏に聞いてみた。

「僕も彼の悪口を一切聞いたことがない。しかも、彼と年齢や当選期の近い連中からも悪口を聞かない。ずっと永田町を見てきましたが、彼のような人物は初めて。かといって、すごく優しくていい人という単純なことではないんです」

高評価の理由には、進次郎氏と交わした、こんなやりとりが関係しているという。

「雑誌の記事を書くために彼にインタビューを申し込もうと、国会で彼を捕まえて時間を取ってくれないかと聞くと、取材は断っているという。1年生で大物でもないのに長々としゃべる立場ではないという理由でした。それと、父親の秘書官を務めた飯島勲さんの教えで、メディアへの露出が多ければ飽きられるという理由もあったんだと思います」

ところが、小泉氏はその場で鈴木氏の取材に応じたのだという。

「結局、彼はその廊下で1時間半も話をしたんですよ。それで最後に『これはインタビューではありませんよね、鈴木さん。ぶら下がりですよ』って言ったんですよ。確かにぶら下がり、つまり廊下で記者が政治家を捕まえて取り囲むアレなんですよ。やられましたね(笑)」

“ぶら下がり”と、さらりと念押しされた鈴木氏は、記事の見出しに「ロングインタビュー」と打つこともできなかった。

「そのとき、この返しのうまさや言葉選びの巧みさはやはり父親に指南を受けてるのかもと、ミーハーとはと思いつつも、『オヤジさん(純一郎)とは連絡取り合ってるの?』と聞いたら、『鈴木さん、変なこと聞きますね。だって、普通の親子ですよ』って。普通と言われて妙に納得してしまって別れたんだけど、待てよと。普通の親子だから話をしているのか、普通はオヤジとはあまり話さないから話していないのか、結局、煙(けむ)に巻かれたんです。このときに、小泉進次郎は天才だと思ったね(笑)」

鈴木氏は、彼の政治家としての今後について、こう断言する。

「彼は100パーセント当確の自民党総裁なんですよ。出たら、総裁になれる。だけど、今回は絶対に出ないことはみんなわかっている。彼は1年生としての範疇を絶対に超えない。でも、最高の1年生を目指すという生き方をしているんです。実際に、1年生議員の中では断トツにすごい。だから、みんなにかわいがられる。いずれ、3回くらい当選を重ねた頃に、進次郎君が総裁になりますと手を挙げたら、誰も反対しないと思う。今回は出ないだけで、彼は総裁になるんですよ」

政治記者がここまで太鼓判を押す31歳の“自民党総裁候補”など、過去にいただろうか。タダものではない1年生議員の今後を、これからも注視していきたい。

(取材・文/頓所直人 興山英雄 佐々木翔)