ブラック企業”については、少しは鼻が利くつもりでいたが、大東建託はまったくのノーマークだった。ブラック企業を語る上での難しさは、どこにも明確な指標がない点にある。実際、大東建託は経産省が発表する“ホワイト企業リスト”にも名前が挙がっている。しかし、本書を読み、その目を覆いたくなる凄惨な企業のあり様に驚愕した。

 本書は、フリージャーナリストである著者が、九年をかけ、大東建託のブラック企業ぶりを、暗闇から力業で白日の下に引きずり出した労作だ。裁判傍聴や事件の現場を訪ね歩き、ウェブマガジンに書き続けた結果がこの一冊に結実した。

 大東建託とは、東証一部上場で、売上高一兆円を超す大企業。賃貸住宅業界の最大手の一つだ。派手なテレビCMを打ち、相続対策にと休耕地の田畑にアパートを建て安定した家賃収入を高齢者に空約束することで、売上げを伸ばしてきた。

 しかし、内情は営業マンには過大なノルマを課し、詐欺まがいの取引を仕掛けることが横行していた。

400万円近くも自腹を強要され自殺した営業マン

 不首尾に終わった取引の尻ぬぐいをするのに、四百万円近くも自腹で払うよう会社から強要され自殺した営業マンの家族の沈痛な声。一億円の銀行融資の詳細が決まらないままアパートの建築を強行されそうになった地主の不審がる声。「通帳だけ見てればいい」と言われたが、十年後に突然家賃を引き下げられた家主の怨嗟の声――こうした恨みつらみの声が本書にはあふれている。

 同社に二〇一七年、労働組合ができた際には、その委員長が著者のインタビューを受けたという理由で、減給処分や譴責処分を受ける。労働者の言論の自由も認めない。本書の末尾には、こうした企業にお決まりの、名誉毀損で訴えるぞ、という配達証明が送られてきた旨が書き記してある。さもありなん、という展開だ。

 大東建託には、労働者としても、顧客としても決して近づいてはならないと確信させるに十分な内容だ。

みやけかつひさ/1965年岡山県生まれ。「山陽新聞」記者を経てフリージャーナリストに。消費者金融や自衛隊の問題などを報じてきた。『悩める自衛官』『債鬼は眠らず』『司法が凶器に変わるとき』など著書多数。

よこたますお/1965年福岡県生まれ。物流業界紙を経てフリーランスに。近著に『仁義なき宅配』『ユニクロ潜入一年』など。

(横田 増生/週刊文春 2018年9月6日号)

『大東建託の内幕 “アパート経営商法”の闇を追う”』(三宅勝久 著)