動物の虐待に関する法律が特に定められていない中国。しかしこのほど重慶市で起こった無残なペットの死について、中国のソーシャルメディアではペットを虐待した飼い主に大きな非難が寄せられている。『South China Morning Post』『Shanghaiist』などが伝えた。

9月6日の午後、重慶市沙坪ハ区にあるマンションの敷地内で犬と猫が死んでいるのを同じマンションに住む女性が発見した。

チェンさんというその女性は、ちょうど犬の散歩をしていた時にドスンという大きな音を聞いた。音のしたほうへ行ってみると、ゴールデン・レトリバーと猫が息絶えていた。“ジャック”というその犬が飼い主に散歩させられている姿を度々見かけていたチェンさんは2匹が転落したのではと思い、急いで飼い主にメッセージを送り、同時にWeChatでマンション内のペット所有者グループにも連絡した。

ところが犬猫の飼い主からは何の返信もなく、事態に気付いた他の住民らがマンション21階に住む飼い主の部屋を訪ねてみたが、ノックしても全く応答がなかった。犬猫は芝生の横のコンクリート地面に激しく叩きつけられた状態で死んでおり、犬の引き綱と餌用のボウルをその近くに発見した住民らは「もしかして単なる事故ではないのでは」と疑問を抱き、警察に通報した。

飼い主は、警察から連絡を受けた時点でようやく応じたが、ペットの亡骸を引き取ることを拒否したという。その夜、住民らによって2匹は毛布に包まれ、マンション近くに埋葬された。悲しいことに猫は妊娠中だったようだ。

いったい何が起こったのかと探る地元メディアに事情を明かしたのは、警備員から話を聞いたというマンションの管理人だった。犬と猫を飼っていたのは夫婦であり、夫は妊娠中の妻に「出産後はペットを飼うな」と言い放ち、それに反対した妻との間で口論になったという。ペット2匹の死は、反論した妻に逆上した夫が21階の窓から犬と猫を放り投げたことによるものだった。

動かなくなった2匹の周りを住民と思われる人々が取り囲み、ある女性が犬を撫でながら泣いている姿が収められた動画は、たちまち中国のソーシャルメディアで拡散した。9日には「ペットの死は、完全な事故」「夫は過ちを反省している」といった張り紙が飼い主によりマンションに貼られたようだが、犬と猫が同時に21階から転落するという出来事は、偶然にしてはあまりにも無理がある。ソーシャルメディアでは「人として、命を敬うことを学ぶべきだ」「社会を脅かしたことに対しての罪を受けるべき。もし、落ちてきたペットで誰かが怪我をしたらどうするんだ」といった非難の声が集中した。

しかし中国では動物の虐待に関する法律は特に定められていないため、警察やマンションのセキュリティーサービスも、この飼い主の男性に対してはなんの対応もしていない。ある住民女性は「男性がいつも犬を散歩させているのを見ていた。まさかこんなことをするなんて思ってもいなかった」と悲しみを露わにした。妻のお腹に宿る命を大切にしているのならば、なぜペットの命も大切にできなかったのか。無残にも放り投げられ、命を奪われた犬猫が気の毒でならない。

画像は『South China Morning Post 2018年9月12日付「Chinese man ‘threw cat and dog out of 21st-floor flat’ after heated row with wife」(Photo: Pear Video)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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