自分のスマホが欲しい──子どもがそう言い出すのは、親が想定している時期より早いかもしれない。便利な反面、子ども任せにするには不安を感じるスマートフォン。持たせる時期と注意すべき事柄は何かを、まずは考えてみたい。

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子どもにスマホを持たせるベストな年齢は?
LINEにYouTube、ゲームやカメラなど、スマホには魅力がいっぱい。しかも大人が一日中触っているんだから、子どもだって当然欲しくなる。家族用のタブレットを子どもに使わせている家庭も少なくないが、個人に持たせるとなると話は変わってくる。スマホに依存して離れられなくなるのではないか、LINEでいじめに遭うのではないか、ゲームに課金してしまうのではないか──我が子の世界が突然インターネットで広がることに、保護者の不安が尽きなくなるのは当然のことだ。

内閣府が2018年2月に公表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、2017年のスマートフォンの所有・利用率は、小学生で29.4%、中学生で58.1%、高校生ともなると95.9%と、実に10人に9人以上が使っているという計算になる。一方、携帯電話の所有・利用率と比較すると、小学生では29.9%とスマホとケータイはほぼ同率だが、中学生ではケータイが10.9%とスマホの所有率とは大きな開きが発生する。つまり、このデータからも分かるとおり、多くの家庭で中学入学を機に、子どもたちがスマホへと切り替えるケースが多いのだ。

実際に筆者の取材でも、中学生からスマホデビューした子どもが多い。小学生の高学年ぐらいから塾や習い事にひとりで通うようになり、親も子どもとの連絡手段としてスマホかケータイの所持を検討するようになる。そのとき、携帯電話キッズケータイ、スマホの選択に迫られることになるが、今の時流ではスマホを選ぶ家庭が多いようだ。理由は明白で、すでに親のスマホやタブレットでインターネットを楽しんでいる子どもは、当然スマホを欲しがるからだ。

また、学校や友人の連絡手段が変わってきていることも理由のひとつ。共働きの多い昨今、学校の連絡網が固定電話ではうまく機能しなくなり、メールや専用サービスなどに自然と移行している。部活の連絡などは、部員同士で作ったLINEグループで行われることが多い。友人とのコミュニケーションもLINEがメインだ。

クラスごとに作られたLINEグループや友人と1対1のメッセージで交流する。スマホを持たない生徒も当然いるため、連絡事項があるときは個別に固定電話も使うのだが、些細な雑談が共有されることは当然ないため、子どもは話についていけないと寂しさを感じる。親としても、この辺りで潮時を感じるのは当然だろう。

しかし、スマホを持たせることでトラブルが起きることだってある。そこで、スマホを持たせるときには家庭でルールを作ることが何よりも大切だ。

それぞれの家庭に合わせたスマホルール作り
スマホを持たせるとき、まずは「スマホに関する主導権は親にある」と明確に子どもに伝えることが大切だ。スマホやネットの所作に慣れてきたら、徐々に子どもの所有物として認めるスタンスにしておきたい。なぜならインターネット上では、子どもだからと特別扱いされることはなく、法に触れるようなトラブルに巻き込まれることだってある。「好きなアーティストのコンサートチケットが欲しい」などの理由で、知らない人と簡単に出会う事例は多い。子どもは自分の周囲にいる、自分に対して「正しいオトナ」しか知らないため、悪意を持って近づく人への警戒心がとても薄いのだ。

ここでは筆者が実際に、娘にスマホを持たせる時にした5つの約束を明示しよう。これから子どもにスマホを持たせようとする親御さんは、ぜひ参考にしてもらいたい。

RULE①
パスコードは変えない

スマホの画面ロックを解除するパスコードは、親にも伝え、決して変えないように伝えた。ひっきりなしにスマホをチェックするつもりはなかったが、「親が見るかもしれない」と思う気持ちは羽目を外してはいけないという抑止力になる。また、スマホは親のモノなのだと意識させることにも繋がると考えたからだ。

RULE②
スマホの利用は22時まで

スマホに依存するあまり、生活リズムが乱れることを避けるためだ。娘はLINEのやりとりにもっとも時間を費やしているが、友人と盛り上がるとついつい深夜までスマホに向かうことになる。男子の場合は、ゲームに熱中する子が多いと聞く。睡眠不足で成長期の子どもに健康被害が起きては困る。そこで22時と区切ったが、塾で遅くなる日だけ23時までという特例を作った。

RULE③
利用するアプリは許可制にする

筆者は中学生にはTwitterの利用は早いと考えている。ネットでの出会い系被害で出会い系アプリを越えてダントツに高いのがTwitterであり、プライバシーがダダ漏れになるSNSだからだ。それ以外のアプリでも、利用されたくないアプリが登場する可能性もあるため、スマホの設定でアプリのインストールや課金を許可制にしている。

RULE④知らない人と繋がらない

子どもは自分の知り合いと交流するためにスマホを持ちたがるが、やがてネットには自分が今まで会ったことがない魅力的な人物や共感できる仲間がいることを知る。そんな人たちと簡単に知り合えるのがネットの良いところではあるのだが、相手の人物像を見定める能力はまだ培われてはいない。そこで、普段の生活で出会う人以外とSNSで繋がらないことをしっかり約束させた。

RULE⑤文章の言葉遣いに注意する

画面越しの会話でニュアンスを上手く伝えるのが難しいことは、大人ならビジネス上のやりとりなどで学習していることだろう。面と向かって話すときよりもテキストにするときは気を遣わなければならないこと、もし誤解を受けるような表現をしてしまったら相手に保存される可能性があることを説明した。


課金やアダルト動画──アプリについて気を付けたいこと
スマホを持った子どもはSNSを始めたがる。中高生に人気のSNSは、LINE、Twitter、そしてInstagramだ。先にも書いたが、TwitterはトラブルになりやすいSNSなので、まずはLINEをインストールさせて、親との連絡もLINEにしよう。子どもがどんな様子でメッセージをやりとりするのかを知ることができるし、プロフィールやタイムラインから交友関係や学校での様子が分かる。特に、中高生はプロフィールにある「ステータスメッセージ」に日記のように本音を漏らすことが多いので、時々読んでおくとよい。何らかのトラブルに巻き込まれている様子が感じられたら、食事のときなどにさりげなく話題にすることで、大事になる前に対策できるかもしれない。あまりLINEを使っていない保護者もいるだろう。使い方が分からないときは子どもに聞くことで、親子のコミュニケーションにもなる。

また、子どもは友人から面白いアプリを教えてもらうことが多い。「友達が使っているし、無料だから」とインストールしたがるかもしれないが、無料アプリでもアイテムや機能を使うときに課金が必要になることもある。「アプリ内課金」と呼ばれるこの仕組みは、ゲームのアイテム購入や自撮りカメラアプリのフィルターなどに存在する。無料の範囲で遊ぶつもりで始めても、お金をつぎ込みたくなる仕組みに誘われ、課金をしてしまう親世代も多いだろう。子どもはクレジットカード決済は使えないが、お小遣いでプリペイドカードを買って課金することはできる。筆者はアルバイト代をすべてゲーム課金に使ってしまう女子高生を知っている。自分で働いたお金をどう使うかは自由だが、金額を聞くと本当にそれでいいのか、考え直してほしくなってしまった。大人になるまでに正しい金銭感覚を持てるように、課金について話し合うとよいだろう。

ここまで自分のスマホを持つ中高生の話をしてきたが、小学生以下の子どもを持つ親も、スマホやタブレットへの向き合い方に悩んでいる人が多いのではないか。特にYouTubeは幼児向けアニメやミュージックビデオなどを見たがり、どんどん時間が経つこともあるだろう。しかし、YouTubeのランキングには動画を細工して機械によるチェックを免れたアダルト系動画が存在することもある。年齢での制限ができれば安心なのだが、YouTubeのアカウントは13歳未満には作れないため、親のアカウントで見せることになる。そこで、子ども向けYouTubeアプリ「YouTube Kids」の利用をお勧めする。「未就学児向け」「学齢児童向け」と動画をフィルタリングして見せられるだけでなく、視聴時間のタイマー設定もできる。YouTubeの視聴時間に頭を悩ませている親はぜひ試して欲しい。

子どもにスマホを与えることをできるだけ先延ばしにしたい親も多いだろう。しかし、いずれはインターネットの海原に子どもを出す日が来る。大切なのは、ネットの作法やルールを少しずつ学んでいくことだ。年齢に合わせて少しずつ制限を緩くするなどして、大人になるまでにはネットでの振る舞い方をマスターさせたい。また、小型のコンピュータであるスマホの仕組みもざっくり知っておくと、パソコンを持つ年代になっても安心だ。あまり気負わず、スマホへの道を歩ませてほしい。

text鈴木朋子
(d.365

掲載:M-ON! Press