北朝鮮は今月9日、70回目の建国記念日(9.9節)を迎えた。当局はそれを前にして、国民を対象にした「核武力完成」と「核大国」を強調する内容の思想学習を行うよう指示を下していた。デイリーNKはその講演提綱(内容をまとめたレジュメ)の入手に成功した。

北朝鮮国内にいるデイリーNKの取材協力者によると、学習の指示が下されたのは9.9節直前の今月第2週で、対象は朝鮮労働党や行政機関の幹部、党員、一般労働者の学習班だ。

デイリーNKが入手した15ページの講演提綱は、金日成主席と金正日総書記、金正恩委員長が「自主の原則を具現し、人民大衆の要求と利益を実現した」「強力な軍事力を整備するために様々な決定を下した」と称賛する内容だ。

自国を「軍事強国である」と強調するくだりでは、次のような説明がなされている。

「敬愛する最高指導者同志(金正恩氏)は、核武力を中枢とする自衛的国防力を質的、量的に拡大強化するための決死戦を先頭で指揮された」

「国の核武力完成の大業を輝かしく達成したことで、世界的な核強国、戦略国の地位に堂々と並んだ」

「米帝(米国)と敵対勢力は、わが国の内部に不健全な思想毒素をまき散らして非社会主義的現象を助長させるために手段と方法を選ばない」

「これは革命意識、階級意識を麻痺させ、思想精神的不具者にして、北朝鮮社会主義を倒すことに目的がある」

「今、わが国の人民は、他の国なら富裕層しか住めないような豪華な通りや、利用できないような現代的な文化奉仕基地で、この世すべてが羨むような文明を、思う存分享受している」

「今、敵対勢力どもは人権問題などというものについて騒ぎ立て、わが国の制度を悪辣に誹謗中傷しているが、わが人民すべての心の中にある社会主義に対する信念は、さらに堅牢なものとなっている」

「今年も、敬愛する最高指導者同志は不眠不休の対外活動で、わが共和国の尊厳と国威を最高の境地に至らしめ、全国の全人民を呼び起こし、より大きな勝利を達成させた」

「すべてのイルクン(幹部)、党員、勤労者は、党の新たな戦略的路線を貫徹するための闘争に総決起、総邁進することで、社会主義偉業の最後の勝利を必ず成し遂げなければならない」

北朝鮮が国内において、対外的に示している姿勢とは異なる方向性の思想教育を行うのは、よくあることだ。内部の結束と体制への忠誠心を高める意図からだが、国民はこれら思想教育を話半分で聞いているため、どれほどの効果があるかは未知数だ。

(参考記事:「韓国は腐って病んだ社会」北朝鮮が対話の裏で宣伝

北朝鮮が今年9月に配布した思想教育用の講演提綱(画像:デイリーNK)