今年も乳がん検診の啓蒙イベントピンクリボンキャンペーンが行なわれます。先月乳がんで亡くなられたさくらももこさんのこともあって、今年はいちだんと熱がこもっているように感じられます。乳がん検診の方法やメリットについては、さまざまなメディアから伝えられていますので、ここではそれ以外のお話をしたいと思います。

検診を受けても見逃された乳がん

はじめに、乳がん検診に限った話ではありませんが、検診を受けることにはメリットデメリットがあります。

もちろん「早期発見、早期治療」のメリットはあります。「がんではない」とわかって安心して過ごせることもメリットのひとつです。

ただ、ぜひ知っておいてほしいのは、検診で「陰性」と診断された場合でも、本当に「がんでない」とは言い切れないということです。

わかりやすい例として、数年前のタレント北斗晶さんの症例をお借りしてお話しましょう。北斗さんは40代後半で乳がんが発覚し、摘出手術を受けました。でも、北斗さんはそれまでにも一年に1回、乳がん検診を受けていたとおっしゃっていました。それでも直径2センチのがんが発覚したのです。このとき北斗さんは“ですからみなさん、ちゃんと検診を受けてください”とメディアで呼びかけました。

しかし冷静にみれば、北斗さんの症例は「検診を受けても見逃されるがんがある」ことを示しているのではないでしょうか。 

実際には、世の中は「もっと検診を受けよう!」という方向に流れました。闘病中のご本人から痛切なメッセージが発信されたことで、その後しばらく婦人科のマンモグラフィー検診の予約が数か月先まで埋まったと聞いています。

検診に伴うリスクも知っておきたい!

検診につきもののリスクを説明します。特にSuits WOMAN読者の20〜30代の女性には知っておいてほしいことです。

1 .マンモグラフィーで発見されないがんもある

特に若いうちは乳房内の乳腺の密度が高いため、マンモグラフィーの画像に写らないこととも多いのです。そもそも日本のガイドラインでは20〜30代にマンモグラフィーを推奨していません。これはマンモグラフィー検診を受けても、乳がんによる死亡率に有意な違いが見られないことによります。

2.過剰診断が少なくない

見逃されるがんがある一方、検診で「がんかもしれない」と診断され、詳しい再検査した結果、陰性だとわかる「擬陽性」も少なくありません。

「がんかもしれない」と診断されて穏やかでいられる人はいません。再検査の結果が出るまでの間、さぞ不安な思いをされると思います。検査機関によりますが、それが数週間、数か月に及ぶこともあり得ます。この間、食欲が落ちたり、気分が落ち込んだりで、別の病気を引き起こすきっかけになりかねません。再検査の結果、本物の乳がんと診断される人は3.73%だそうです。

「擬陽性」とは別に、手術などの治療が必要ないのに「がん」と診断されるのが過剰診断です。マンモグラフィー、エコー超音波)などの検査技術の進化によって、発見される腫瘍(がん)は確実に増しています。しかしそれらが全部、治療が必要ながんかといえばそうではありません。

人間には免疫力があります。がん細胞は毎日だれにでも発生するものです。それを、私たちは自分の免疫力でやっつけているわけです。検診によって発見された小さながんは、そのうち消えてなくなるがんかもしれません。それでも見つけてしまった以上、放っておくことは気持ち的にむずかしいと思います。だから早めに手術をする。でもそれは、過剰診断による不要な手術である可能性もあるのです。

3.被曝のリスクは常にある

マンモグラフィーはレントゲンです。

その放射線量はおよそ0.1~0.2mSv(ミリシーベルト)といわれています。環境省の発表によれば、飛行機で東京とニューヨークを1往復する機内で受ける放射線量が約0.2mSvで、マンモグラフィーの放射線被ばく量とほぼ変わりません。また、地球上で生活している場合に受ける自然放射線量は年間で約2.4mSvと言われています。

この数字を考えると、マンモグラフィー撮影による被爆の危険性はほとんど無いようにも思えますが、妊娠中や、妊娠している可能性がある人は、原則としてマンモグラフィーによる検査を受けることができません。

レントゲン被曝による症状は、その場ですぐ出ることはありません。言い換えると、いつどこでどのような形で出るのかも明らかではありません。たとえば数後年、がんになったとしても「あのときのマンモグラフィーの被曝が原因だ」と証明することは不可能でしょう。だからこそ、覚えておいてほしいと思います。マンモグラフィーに被曝のリスクがあることを。

薬もそうですが、検診にもメリットデメリット、ベネフィットリスクが伴います。受診する、しないは個人の選択に委ねられています。どちらを選択するにせよ、両方を知っておくことが何より大切だと思います。その思いから、今回は薬とは関係のない、検診のリスクだけを強調してお話しました。

乳がんや子宮がん、女性特有のがんについて正しい知識を身につけましょう。

賢人のまとめ

検診にはメリットデメリットの両方が常にあることを知っておいてください。マンモグラフィーによる乳がん検診に見逃し、過剰診断、被曝というデメリットが指摘されています。また20〜30代の女性には受診は推奨されていません。これら基本的な知識を得たうえでご自身の判断をしていただきたいと思います。

プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。LINEお友達限定で、絶対に知っておきたい薬のリスク情報配信中。

 
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