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 植物や藻類は、太陽の光を浴びてそれをエネルギーにするという営みを数十億年も続けてきた。そう、光合成である。

 そして科学者はこの古からの営みにひと工夫加えることで、化石燃料に太刀打ちできるくらいの効率を実現したエネルギー社会の到来を実現させようとしている。

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光合成でできること

 ご存知の通り、光合成とは、光を使って水を分解し、酸素を放出しつつ二酸化炭素を糖に変える変換プロセスのことだ。

 植物や藻類などは、この方法で数十億年を生きてきたが、究極的には現在我々が大量に燃やしている化石燃料ができた原因でもある。

 光合成はエネルギーを捕捉するという点においてあまり効率的とは言えない。植物は光のエネルギーのほんの数パーセントだけ利用できれば事足りるからだ。

 だからこそ、彼らはそれに頼っていられるのだ。

 さらに化石燃料として蓄えられたエネルギーを利用することにも問題がある。そうしてしまうと、そこに固着されていた二酸化炭素まで逃げてしまい、地球温暖化に繋がってしまう。

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酵素を使い半人工的な光合成を作り出す

 ケンブリッジ大学の研究チームが発明したのは、生命の進化の過程で置き去りにされてしまったプロセスを呼び覚ますことで得られる半人工的な光合成だ。

 その鍵を握るのが、ヒドロゲナーゼという酵素である。

 これは藻類の中に存在し、陽子を水素に還元する力がある。

 生命の進化において、生存にかならずしも必要なものではなかったためにその機能は使われなかったが、研究チームはこれを利用して、水を水素と酸素に分離することに成功した。

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 二酸化炭素の放出が懸念される今、光合成を人工的に行いエネルギーを生産するという研究はかねてから行われてきた。

 しかしこれには高価かつ有害な触媒を使う必要があり、効率の点でも劣っているために、大きな規模で実施することができなかった。

人工システムと有機プロセスを組み合わせる

 研究チームのカタジーナ・ソクウ氏は、通常の電池ではなく、光化学系IIという集光生化学プロセスに基づいた電気化学電池を採用した。

 これによってヒドロゲナーゼが働くために必要な電圧が生み出される。こうして機能するようになったヒドロゲナーゼによって水の中に水素が還元されると、水素が酸素から離れて、ぶくぶくと泡となって出てくる。

 口で言うのは簡単だが、実際に人工システムと有機プロセスを組み合わせることは非常に難しい。

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 研究チームの1人であるアーウィンライスナー氏によると、この成果は「生物学的要素や有機要素を無機素材に組み合わせる際のさまざまな難題を克服することで実現されたもので、将来的な太陽エネルギー変換システムの開発の可能性を開く」ものなのだそうだ。

 もちろん、これが最終的なゴールではない。天然素材と人工システムの最適なバランスを見つけるなど、安価かつクリーンな再生可能エネルギーを実現するには、まだまだ研究が必要である。

 しかも水素は貯蔵や輸送に課題を抱えているため、本格的な水素エネルギー社会経済の到来はずっと先のことだろう。

 それでも我々が化石燃料に依存している限り、温暖化は深刻さを増すばかりだ。何事も千里の道も一歩から、である。

 研究は『Nature Energy』に掲載された。

References:Scientists pioneer a new way to turn sunlight into fuel / written by hiroching / edited by parumo

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