泣いて笑ってまた泣いて。綾瀬はるか主演の火曜ドラマ義母と娘のブルース』が今夜最終回を迎える。先週放送された第9話の視聴率はうなぎのぼりの17.3%。最終回で20%を超えちゃったりしたら、それは小さな奇跡だと思う。

ついに告白……だけどあえなく失敗!
第9話はとにかく麦田(佐藤健)の一途な亜希子(綾瀬はるか)への想いがいかんなく発揮された回だった。これほどセックスの絡まないピュアな恋愛(片想いだけど)をドラマで見るのは久しぶりのような気がする。偶然抱きついただけで鼻血出しちゃうんだもの。いっそ清々しい。

元戦国部長・亜希子によるベーカリー麦田の再建策はうまく行っていた。みゆき(上白石萌歌)たちに「プチキュア」のコスプレをさせて、イベント帰りの子どもの集客を狙うというあざとすぎる作戦も大成功。綾瀬はるかの「モ~グタン」というアニメ声をたびたび挿入するのは卑怯(いい意味で)。みゆきの親友・ユナ(紫の子)を演じた水谷果穂が大変可愛かった。彼女の目標の女優は綾瀬はるかだそうだ。

みゆきは麦田の亜希子への好意に感づいていた。同時に、亜希子と過ごした9年間を振り返る。亜希子は自分にひたすら寄り添ってくれていた。だけど、それは亜希子にとって幸せなことではなかったのではないか。亜希子は亜希子の幸せを求めてもいいのではないか。父親・良一(竹野内豊)の写真を撫でるみゆきは、まるで詫びているかのよう。

一方、麦田は亜希子が自分のパンを世界一美味しいと褒めてくれたことに有頂天。友人・友井(川村陽介)の「今でしょ!」にノセられて、ついに告白を決行!

「宮本さん! だったら、一生俺のパン、食べくれますか!? 一生つうか、毎日つうか……。俺、宮本さんのためにもっと頑張りますから! もっともっと美味いパン焼きますから!」

ド直球の愛の告白だ。目力をありったけ込めて、しっかり相手を見据えたまま言うのが麦田流。『半分、青い』の涼しげな律とは本当に正反対だ。同時期に対照的すぎる役を引き受けたマネージメントサイドすごい。それをこなしてしまう佐藤健がもっとすごいんだけど。

しかし、亜希子の返事はつれないものだった。「それは、さすがにお引き受けできかねますね」。理由はパンよりごはんを愛しているから。ショックを受ける麦田がおかしい。「商品として……?」といじける佐藤健の表情が絶品。告白、失敗!(ドドン)

麦田の想い、大樹の想い、みゆきの想い
る麦田は、バーで亜希子の元部下・田口(浅利陽介)と出会い、お互いの好きな(好きだった)女性の話で意気投合。

一方、大樹(井之脇海)はみゆきのことを心配していた。麦田が亜希子に好意を持っていることを複雑な気持ちで見ていると思ったからだ。大樹の言葉で、亜希子への恋心を諦めようとする麦田だったが、そこへみゆきが現れて、麦田に精一杯のエールをおくる。

みゆきは両親が契約結婚だったことに勘づいていた。両親が幸せだったことは認めているが、亜希子に恋愛をしてほしいと思っているようだ。みゆきは勉強はできないけど、賢くて優しい子に育ったよ。

「店長、私、母には幸せになってほしいって思ってますから。もし、もし、母を好きだと思ってくださっているなら、あきらめないでください。うちの母を幸せにしてください!」

「俺が親父で本当にいいの?」と静かに訊ねる麦田(その後に「そりゃ俺はカッコいいけどさ」とアホなところを付け加えるところが絶妙)へのみゆきの言葉が名ゼリフだった。

「私、おかしな人と家族になるのは、他の人よりちょっとだけ慣れてると思います」

みゆきの本心を知って、あらためて亜希子に恋心を伝えようと決心する麦田。

「俺は仏恥義理でおめぇの父ちゃんになんぞ!」
「はい! 私も応援します!」

手に手をとってはしゃぐアホ2人を心配そうに見つめる大樹だった。

「そうにゅ……」「先入観です!」
田口がベーカリー麦田にやってきて、亜希子と再会。おまけに麦田がバイク便時代に届け間違いをしたことまで気づく。田口は怒るのかと思ったら、麦田と抱き合って喜んでいた。このドラマは善人しか出てこない。

結婚する田口にパンのお祝いをおくろうとする亜希子だったが、田口はそれを断る。田口は亜希子への気持ちを断ち切っていたが、猛烈に好きだった人に結婚をお祝いされる気分にはなれなかったのだろう。心の中に秘めた亜希子への想いを大切にしたかったのだ。

それはそれとして、麦田はあらためて亜希子を食事に誘うが、亜希子は麦田がみゆきと付き合っているというすさまじい勘違いをしていた。麦田を理路整然と責める亜希子。

「そういうの、そうにゅ……」
「先入観です!」

すげえ、麦田、「挿入感」って言おうとした! こんなん声あげて笑う。亜希子は麦田の過去を聞き出そうとして、謎の男時代の「バイク便」「奇跡の花屋」「霊柩車」までが回収される。麦田が良一の遺体を運び、その後、親孝行をしようとしてパン屋を継いだことまで一気に理解する亜希子。

「つまり、店長は私にとって、小さな奇跡ということです」

義母と娘のブルース』は笑いといい話の配分が絶妙だ。アハハと笑った直後、しんみりさせる。グッと来た後、つい吹き出してしまうシーンがある。桜沢鈴の原作のタッチを活かしつつ、それぞれのシーンが有機的につなげていて、伏線の回収もしっかり行う森下佳子の脚本の力を感じる。

麦田、再度の愛の告白!
酔った亜希子についに告白を決行する麦田。

ありがとうー! 旦那さーん! めっちゃ、めっちゃありがとうございます! 宮本さんに引き合わせてくれて、ありがとうございます! 俺が生まれてから今までで一番出会えてよかった人は宮本さんです!」

まだ好意に気づかない亜希子だが、麦田はここぞとばかりに押しまくる。

「さっきから、めっちゃめちゃ、宮本さんのことがもうめっちゃくちゃ好きだって言ってます! 人としてとか、ダチとしてとか、そっち方向じゃないッス! チューとかしたいほうッスから! LOVEじゃなくてLIKEのほうッスから!」

なんてストレートな告白だろう。稚拙なのに言葉に力がある。「そこはLIKEではなく、LOVEのほう……」とツッコミを入れる亜希子に「それ、わかってるってことですよね!」と畳み掛けるところが上手い。もう亜希子は麦田の好意に気づかざるを得ない。

「あの俺、宮本さんが旦那さんにしてもらいたかったこととか、旦那さんが宮本さんにしたくてもしてあげられなかったこととか、全部やりますから。いや、違うな……。やりたいんス、俺がそれ」

静かに語る麦田。いいこと言うなぁ……。亜希子の返事は? 麦田の恋の行方は? 義母と娘はどんな幸せをつかむのか? すべては今夜10時からの最終回で明かされる。
(大山くまお

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【作品データ
『義母と娘のブルース』
原作:桜沢鈴『義母と娘のブルース
脚本:森下佳子
音楽:高見優、信澤宣明
演出:平川雄一朗、中前勇児
プロデュース:飯田和孝、中井芳彦、大形美佑葵
※各話、放送後にTVerにて配信

イラスト/まつもとりえこ