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 油脂を加工・精製する工程で作られる人工トランス酸脂肪は、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などに含まれる。

 人工トランス酸脂肪は健康に悪影響を及ぼす可能性があるとして度々話題に上がっているが、2018年9月17日より、カナダ国内で、人工トランス脂肪酸の使用が正式に禁止されたという。

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人工のトランス脂肪酸が「汚染物質その他不純物質リスト」に

 カナダでは、この規制の実施によって、トランス脂肪酸を多く含んでいる部分硬化油が、「汚染物質その他不純物質リスト」に加えられた。

 今後、食品製造業者が加工・精製によって作られるトランス脂肪酸を製品に入れることは違法となる。

 カナダ国内で販売されるあらゆる食品が対象で、輸入品や加工食品、飲食店などで出される料理にも使用が禁止される。

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トランス脂肪酸の安全性

 トランス脂肪酸には、天然に食品中に含まれているものと、油脂を加工・精製する工程でできるものがある。

 牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量ながら天然のトランス脂肪酸が含まれているがこちらの方は問題になっていない。

 今回全面的に使用禁止となるのは、液体の植物油に水素を添加することで、飽和脂肪酸の割合を増やし固体化(半固体)させた硬化油に含まれる人工のトランス酸脂肪だ。

 マーガリンやショートニングなどとして販売されており、菓子パンや焼き菓子などの食感改善や賞味期限を延ばしたりする目的で使われる。

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 しかし血液中の低密度リポタンパク質(いわゆる悪玉コレステロール)を増加させ、高密度リポタンパク質(善玉コレステロール)を減らすということがわかってきた。このために心臓疾患のリスクと強い相関にあることが以前から指摘されていた。

15年の月日を経てカナダで規制

 カナダでは2006年にトランス脂肪酸に対する規制が早急に必要である旨を述べた報告書が提出され、少なくともカナダ人の平均摂取量を55パーセント減らさなければならないと提案された。

 その翌年には、食品業界に対して2年間の自主削減期間が設けられた。

 これは導入が見込まれていたトランス脂肪酸の全面禁止に食品業界が対応しやすくするための措置であったが、結局規制は導入されず、本格的な進展は2015年のジャスティン・トルドー首相就任まで待つことに。そして、トルドー首相によって実施が厚生大臣に命じられた。

 ただし今回の規制においても、規制実施前に生産されたものについては対象外とされており、お店の食品売り場からすぐにトランス脂肪酸入りの製品が消えるわけではない。

 また店側は在庫から規制対象の食品を一掃するまでに2年間の猶予期間を与えられている。

 今回の禁止措置によって、カナダでは20年の間に1万2000件の心臓発作を予防するだろうと推定される。

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 ちなみにアメリカでは、今年6月より人工トランス脂肪酸の使用を原則禁止としている。

 なお、日本では、WHOが勧告する人工トランス脂肪酸が占める摂取カロリー中の割合が1パーセント未満であることから、日本人への影響は小さいとして特に規制は行われていない。

 その削減は企業側の自主的な取り組みに委ねられているのが現状だ。

 まあでも、どんなに体に良いとされる食べ物でも、そればかりを食べすぎたら害になるわけだが、欧米化の食生活が浸透しつつある日本でも、そのうち規制が強化されるようになるのかもしれない。

 マーガリンに代わる食品としてバターがあるが、アメリカやカナダは、バターの値段が安いから良いけど、日本はバター高いからな。バターの方が全然好きだけど。

References:cbc/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52265184.html
 

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