Photo credit: sharloch on Visual hunt / CC BY-NC-ND
Point
・ディッキソニアはカンブリア爆発以前の化石として見つかっている大型の生物で、その正体は謎であった
ロシアの断崖から保存状態の良い化石を見つけ、組織に脂肪の痕跡を発見
・ディッキソニアが動物であったことが分かり、わかっている中で最も古い動物であることが確認される

まさか動物だったとは。

ロシアの北西部で、5億5千8百万年前の化石に動物性脂肪が発見されました。これにより、動物出現の時期が300万年さかのぼったことになります。これまで最も古いとされていた動物の地質学的記録はキンベレラで、5億5千5百万年前のものです。研究は20日の“Science”に掲載されています。

この動物はディッキソニアと呼ばれ、先カンブリア時代エディアカラ紀に海中に生息していたエディアカラ生物群の一種です。この生物群は、次の9百万年に起こったカンブリア爆発より以前に存在していました。

ディッキソニアは楕円形の生物でパンケーキのように扁平で、なんと1.37メートルまで育ったものもいます。外見も不気味な対称型をしており、肋骨のような体節が全身を覆っています。地球上の生物というより、SF映画から飛び出してきたクリーチャーのようです。

Credit: Ilya Bobrovskiy/ Australian National University

その正体についても、「巨大な単細胞のアメーバ」なのか、地衣類なのか、それとも地球上の初期に起こった進化の実験の失敗作なのかと、科学者の間で75年以上も論争が続いていました。

しかし今回発見されたディッキソニア化石の組織に、コレステロール分子が含まれていることが判明。そして、この種類のコレステロールがすべての動物組織で見つかることから、この動物が最古の動物であることがわかりました。これにより、数十年に渡る議論もやっと終息を迎えたのです。そして体の大きなディッキソニアが動物であることがわかったことで、エディアカラ生物群の出現が、動物のカンブリア期爆発の前触れであったことが示されました。

断崖絶壁での発掘作業 ヘリコプターも使用

今回の脂肪を保存した化石を見つけるまで、研究者は多くの困難を強いられました。現在知られている多くの化石はオーストラリア南部で見つかっていますが、何百万年もの間無数の外的要素にさらされていたからです。よって発掘作業は、寒さが吹き荒れるロシア北西部の白海で行われました。

発掘条件の厳しさはそれだけではありません。ANUの地球科学研究所のイリヤ・ボブロフスキー氏は、「化石は59メートルから100メートルの高さの白海の崖の中腹にありました。ロープで崖の縁からぶら下がり、砂岩の大きな塊を掘り出して、投げ下ろし、砂岩を水で洗い流すという過程を、化石を見つけるまで繰り返しました」と話しています。また、この断崖絶壁の辺境に向かうため、なんとヘリコプターも使用したとのこと。今回の発見は、まさに金と研究者たちの汗の結晶で実現したのです。

 

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via: History/  translated & text by SENPAI

 

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