9月22日(土)から、京都市下京区の龍谷ミュージアムで秋季特別展「水木しげる 魂の漫画展」が開催される。これに先立ち、関係者や報道陣向けの内覧会が行われた。

【画像】ねずみ男など、おなじみのキャラ達に水木流の一言が添えられたカレンダーの原画

本展では「ゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔くん」といった作品で知られる水木しげるの画業を8つの章に分けて紹介、少年期スケッチや絵画、未公開作品など約300点を展示している。

第1章は「武良 茂アートギャラリー」。少年時代の作品や水彩画などを展示。なかでも「美術解剖學」と題した作品の緻密さは圧巻だ。

第2章は「「水木しげる漫画研究」。水木しげるの柔らかな色の秘密や細やかな背景の技法などを解き明かす。

さらに第3章の「水木しげる人気三大漫画」では、鬼太郎悪魔くん、河童の三平をたっぷりと見せてくれる。細やかな筆致で描き込まれたおなじみのキャラクターは、見る人を引き込むこと間違いなし。

第4章はここまでの内容とは打って変わり、凄絶な戦争体験を描いた「総員玉砕せよ!」。バイエンを守る日本軍500名が玉砕する模様を描かれ、90%は水木が戦地で体験したという物語を描いた「総員玉砕せよ―聖(セント)ジョージ岬・哀歌―」は、「戦争を体験した者として残さなければならない仕事」との水木の強い思いが込められている。本作の一部が展示されているが、壮絶な内容にしばし言葉をなくして見入ってしまう。自分自身も戦地で片腕を亡くし、生死の境をさまよった水木だからこそ描ける作品だ。ぜひ、これは会場で生原稿を目にしてほしい。

5章は「溢れる好奇心 人物伝」。アドルフ・ヒトラー南方熊楠スウェーデンボルグ、妖怪研究で知られる井上円了など、多彩な人物を「いかにおもしろく」伝えるかに腐心した作品がそろう。妖怪漫画で水木になじんだファンには新鮮な作品群だ。

第6章は「短編に宿る時代へのまなざし」。月刊誌「ガロ」などに掲載された短編は時代を色濃く反映し、時にシニカルにも映るが、それもまた水木流だ。

第7章「妖怪世界へようこそ」こそ、水木しげるの真骨頂。モノクロで描かれた妖怪画は少し不気味だが、当時の少年たちをドキドキさせたものだ。ユーモラスだけどちょっと怖くて、時には色気さえ感じさせる妖怪の数々を間近で楽しんでほしい。

最終章の第8章は「人生の達人」。水木作品のキャラクターのセリフや、水木しげる自身の言葉はハッとさせられるような真実を突いていたり、ほっと肩の力が抜けるような名言が多い。そうした言葉に触れられるのも本展の魅力の一つだ。

また、水木の遺稿整理中に発見された草稿「虫の絵本」も展示。これは図録の綴じ込み付録として掲載されている。

なお、京都会場限定企画として「水木サン×宗教文化」という展示も。水木の地獄絵図などが展示された龍谷ミュージアムならではの企画だ。

さらに、3階のミュージアムシアターでは毎時00分と30分に「水木しげる氏を語る」と題した約13分間の映像を上映。元講談社編集担当の田中利雄氏、水木プロダクションチーフアシスタントの村澤昌夫氏、かつてアシスタントを務めた漫画家の池上遼一氏が、間近で見た水木しげるを語る。その制作秘話や制作技法、人柄にまで触れられる貴重な映像だ。

子供のころからなじんできた水木作品の生原稿はその細やかな描き込みや色使いの美しさに目をみはるばかり。水木しげるのペンの音や息遣いまで感じられそうな展覧会は必見だ。(関西ウォーカー・鳴川和代)

講談社コミックス「墓場の鬼太郎」第1巻(1967年刊)のカバー。当初は「墓場の鬼太郎」だったがアニメ化に伴って「ゲゲゲの鬼太郎」に改題された