子供の人身売買は深刻な犯罪として厳しい法が定められている国もあるが、闇で密かに取引されるケースはあとを絶たない。このほどロシアで、20代の母親が生後わずか9日目の娘を人身売買したとして引き取った女とともに逮捕された。母親が取引相手から受け取った現金は日本円にしてわずか5,000円だったという。『Metro』などが伝えている。

ロシアの警察は、オムスク空港で行われた人身売買の様子が収められた監視カメラの映像を公開した。

インナ・ペトロヴァ(25歳)は、カフェで知り合った23歳の男性との短い交際の果てに妊娠した。しかし相手の男性は妊娠を知らされながらも、インナをサポートすることを拒否。さらに狭いアパートで一緒に暮らしている母と姉は、一家が経済的に困窮した状態だったことからインナに中絶を強要し「産むというなら家から出て行け」「子供はおもちゃではない」と激怒、母になろうとするインナは相当のプレッシャーを与えられた。

仕事もない身ゆえ、家を出てひとりでは子育てしていけない…悩んでいたインナはある日、ソーシャルメディアで「夫と一緒に0~3か月ぐらいの赤ちゃんを求めている」というナタリア・ジダーノワ(43歳)の広告に目を留めた。

サンクトペテルブルクで教師をしているナタリアには成人した息子がいたが、既に家を出ており、養子にした娘を育てていた。しかしその娘もいずれ巣立っていくことへの恐怖があったのか、どうしてももうひとり子供が欲しいと思っていた。オンライン広告を出したナタリアに、インナからすがりつくようなメッセージが届くまで時間はかからなかった。

「ひとりで育てていけない。娘を養子にしてほしい。」

インナからの申し出にナタリアは飛びついた。そして「必要書類はこちらで用意する」と約束した言葉通り、ナタリアはインナの娘の出生証明書を偽造した。事前にナタリアは「おむつ代」としてインナに3,000ルーブル(約5,000円)だけ送り、「いずれはあなたとあなたの家族の仕事をサンクトペテルブルクで見つける手助けをする」とも約束、インナの子供を引き取りに3,170km離れたオムスク空港まで友人女性とともに出向いた。

その時の様子が監視カメラに収められているが、映像にはピンクの毛布に包んだ娘を抱えたインナが、最後までナタリアに引き渡すのを躊躇しているような姿が見られる。しかしナタリアサンクトペテルブルクに戻る飛行機の搭乗アナウンスが流れると、インナは名残惜しむように腕の中の我が子を抱きしめてキスをした。その後、娘を手放したインナは感情を抑えるのに必死な様子で、時折涙を手で拭いたりしている。そんなインナにナタリアの友人女性が寄り添い、何やら言葉をかけているかのようにも見える。そしてインナの娘を連れたナタリアは偽造した出生証明書を提示して空港ゲートを通り抜け、サンクトペテルブルクへと戻った。

混雑した空港での人身売買は成功したかのように見えたが、その後インナと母親が大家に出来事を打ち明けてしまったことから、直ちに警察に通報され逮捕となった。ナタリアの自宅にも1週間後には警察が訪問、2人は人身売買の容疑者として拘束された。現在捜査が行われているが、事情聴取時の供述を含め、インナは心情をこのように語っている。

「病院で出産して1週間後に退院しました。数日間は自宅で過ごしましたが、近所の噂もあっていたたまれない気持ちになって。病院で養子に出す手続きをすればよかったかもしれませんが、ソーシャルメディアで知り合っただけの全く知らないナタリアに娘を渡しました。空港で娘を渡す時には思わずヒステリックになり涙が出たものです。妊娠が母と姉に知られた時、相当責められて辛い思いをしました。子供の父親は私の妊娠に興味などなかったくせに、今になって子供の面倒は自分が見るから返せと言っています。でも本気で言っているわけではありませんから。自分のしたことが間違いであったことを今は認めています。もし時が戻せるのならばもう我が子を手放したりしない。でも、おそらく二度と娘には会えないと思っています。」

一方で、ナタリアは警察に「法的手続きをして子供を養子にしようと思ったが、生活状況や経済的余裕を審査されると許可されないと思った」と話している。人身売買の犠牲となったインナの子供は今後、孤児院に引き取られる可能性が高いとされている。なお現在、インナとナタリアは捜査終了まで自宅謹慎中の身となっており、裁判で有罪となれば最大10年の懲役刑が科せられる可能性もあるという。

このニュースを知った人からは、「悲しすぎる」「デスパレートになっていたとしても、他に選択肢がなかったんだろうか」「孤児院にやられる子供の将来がもう見えた気がした…」「家族ももっとサポートしてあげればよかったのに。貧困だからどうにもならなかったのかな」「どっちも悪いけどこの女教師も身勝手すぎる」「子供を手放したくなかった母親なのに、もう二度と子供に会えないかもしれないなんて辛すぎるね」「助けが欲しかったんだろうけど、誤った選択をしたんだよね…」「今でもこういうことが起こっているロシアってショッキングだな」といった声があがっている。

画像は『Metro 2018年9月19日付「Heartbreaking moment mum ‘hands over baby to woman for just £34’」(Picture: east2west news)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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