国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 9月20日自民党総裁選挙の投開票が行われました。予想通りというか予定通りというか、安倍晋三首相が石破茂議員を破って連続3選を果たしました。

 以前も書かせていただきましたが、安倍首相の勝利は既定路線だったため永田町の関心は薄く、話題といえば「安倍首相がどれだけ石破議員を引き離すか」ぐらいで、なかには「もう石破さんが浮上してこられないくらい叩きのめす」と「石破憎し」の感情を隠さない国会議員が何人もいました。最終的には、安倍首相553票、石破議員254票でしたが、石破議員に好意的な報道もあったため、今後は石破支持派への締め付けはますます厳しくなるでしょう。

 実際、石破支持を表明していた齋藤健農林水産大臣が「石破を支持するなら大臣を辞任しろ」と言われたことを明かしています。報道によると、「安倍応援団のひとり」から「齋藤よ、内閣にいるんだろ。石破さんを応援するんだったら辞表を書いてからやれ」という圧力があったそうですが、齋藤大臣は「党内に蔓延している、そういう空気を打破したい」そうです。

 もちろん、誰に言われたかまでは明らかにしていません。安倍首相は「誰に言われたのかを言って」ととぼけていましたが、普通は言わないでしょう。ただ、議員秘書たちにとっては意外でもなんでもありませんでした。

「あー、M元大臣だよね、きっと。言いそうだよね」

「H議員だって、うちのボスに似たようなこと言ってきたよ。参議院議員は品がいいと思ってたんだけどね」

 と、複数のお名前が挙がっていました。石破支持派にこれからどのような制裁が待ち受けているのか……国会女子たちは生温かく見守っております。

●“風”が吹き続けなかった石破議員

 今回の総裁選は、石破議員が安倍首相を批判したことで、これまでにないほど注目されました。これは、やはりネットメディアの影響が強いのだと思います。結果も、当初は「安倍圧勝」といわれていましたが、事前の予測よりも石破議員が票を伸ばしました。

「まともなことを言っているのは石破さん。なのに、なぜ『安倍さんが勝つ』と言われているの?」

 事務所に、こんな電話がかかってくることもありました。日ごろ政治家と直に接する機会のない方たちから、石破さんを支持する声を聞いたように思います。「庶民感覚を持っていて、私たちの気持ちを理解してくれるのが石破さんだと感じた」という意見も多かったです。

 しかし、圧倒的に一般の方々から支持を受けた石破議員の地方票(国会議員以外の自民党員・党友の票)は181票で、安倍首相224票を下回ってしまいました。

 石破支持の声は総裁選の投票権のない人から多かったのですが、「地方票では安倍首相に勝てる」という見方もありました。安倍応援団は党員の引き締め作業を徹底したのでしょうが、目標の最低ラインをやっとクリアした程度の得票数だったため、もっと大差をつけたかったのが本音でしょう。

 国会議員票の安倍首相329票、石破議員73票というのも微妙でしたね。実は、「石破議員にもう少し流れる」という見方もあったのです。

 石破議員への“風”が続かなかったのは、なぜなのでしょうか。結局、2人の政策の違いが「憲法改正」しかなかったことが大きな要因でしょう。討論を見ても、改憲以外は現政権の政策を支持するような内容になってしまっていました。

 もし経済政策で「石破色」を強く打ち出すことができていたら、若手や「派閥の論理」に異を唱えている議員たちからの票がもっと伸びたと思います。小泉進次郎議員も投票当日に石破支持を表明しましたが、総裁選が始まったときに表明していれば、少なくない票が確実に石破議員に流れたはずです。

小泉進次郎の苦悩

 今回の総裁選では、その小泉議員の動向も注目されました。前回の2012年の総裁選では石破議員を支持しており、今回も支持すると見られていました。ただ、前回は本人が石破支持を表明したのは投票後でした。今回も、周辺からのリークがなければ投票後に表明したのではないかと思います。

 現在、二階俊博幹事長のもとで筆頭副幹事長として活躍している小泉議員は、記者たちからの評判も上々です。正直、二階幹事長は声が小さくなっていて何を言いたいのかよくわからないことも多いので、記者たちは小泉議員から情報を取ろうと、よく群がっています。

 ボスである二階幹事長が早々に「安倍首相3選」を支持したことで、小泉議員としては自分の意見を公表できなかったのでしょう。それを「男らしくない」と批判する意見もありますが、神澤は違うと思います。

 さて、これから安倍首相が行う人事に要注目です。せっかく3選を果たしたのに、また周辺をお友だち議員で固めて、さらに石破支持派にお灸をすえるような対応を見せたら、国民の心は遠のくことが必至です。支持率が下がり、最悪の場合は首相交代という事態にもなりかねません。

沖縄県知事選の見通しは?

 9月30日の投開票を前に、沖縄県知事選挙も激しい戦いが繰り広げられています。やはり、ネットを中心にネガティブキャンペーンも目立ちます。

 ただ、現地入りして「沖縄の有権者がどこまで投票に行ってくれるかは未知数じゃないかな」と肌で感じました。安室奈美恵さんの引退イベントと時期が重なったこともあり、那覇市内は県外から訪れた人たちが目立ち、街頭演説の聴衆は多いのですが、投票権のある県民の割合は不明瞭でした。一方で、秘書たちは沖縄に行ったり来たりでバタバタです。

「私、昨日まで沖縄だったよ」

「私は明日から。どうだった?」

 最近の国会女子たちのあいさつは、こんな感じです。神澤も、国会内の売店のお姉さんに「1週間、沖縄に行ってたんですよ」と言ったら、「いいなぁ、沖縄。私も行きたーい……あ、違うね。選挙応援だね。ごめんなさい」と言われました。神澤の目が「旅行じゃなくて!」と訴えていたんでしょうか(笑)

国民民主党の崩壊が注目されている理由

 沖縄県知事選よりも、政治部の記者たちや政治オタクのみなさんが注目しているのは、実は国民民主党の動きだそうです。

 9月11日国民民主党両院議員総会で、玉木雄一郎代表が選任され、人事が発表されたのですが、「その人事を見たら笑いが止まらない」のだといいます。「どれどれ?」と神澤も役員表を拝見しましたが、確かにツッコミどころ満載の人事でした。

 まず、古川元久議員の代表代行はアリなのでしょうか。玉木代表は、旧大蔵省時代の先輩である古川議員を尊敬しているそうですが、古川議員は党内でも巷でも人気がないといわれています。幹事長には平野博文議員が就任していますが、平野議員も文部科学大臣時代の輝きはなく、委員会中はいつもスヤスヤ居眠りされている高齢議員です。ただ、「古川議員より格上じゃないと古川議員が納得しないから」ということで渋々選ばれたようです。

 また、桜井充議員は元政策秘書の詐欺事件の責任を取っていないのに企業団体委員長に就いており、「企業献金につながる大事なポジションを任せていいの?」という批判もあるようです。

 また、もっとも「大丈夫なの?」と心配の声があがっているのが、原口一博議員を国会対策委員長に任命したことです。原口議員は政策通ではありますが、国対については素人同然です。根回し下手で有名な原口議員を国対委員長に据えるという人事に、「もはや国民民主党は他党と折衝する気がないのか」という意見もみられます。

 以前には、ツイッターの「前原誠司、長島昭久、野田佳彦細野豪志は、野党再編でも『排除』しなければならない」「公明党はクズの吹き溜まり。維新は間もなく消滅する」という投稿に「いいね」としていたことも問題になっており、今後が不安です。

 ちなみに、原口議員の秘書出身のプロレスラーがいるのは、永田町でもトリビア的な話題です。少し前ですが、そのレスラーの試合に原口議員が応援に行き、そこで大仁田厚元参議院議員を紹介されたそうです。

 それがご縁で、大仁田元議員が今年の佐賀県神埼市長選挙に出馬した際には、原口事務所が応援したという話を聞きました。大仁田元議員は、還暦を過ぎているのに年内にプロレスに復帰するそうです。お元気ですね。

 いずれにせよ、そんな内情も含めて、政治部の記者や政治オタクのみなさんは「国民民主党の崩壊の行く末がおもしろい」と注目しているのだそうです。

 原則オフレコの記者懇談会で、玉木代表が「政権交代は野党みんなですればいい。その主導権を別に自分たちが持たなくてもいい」と話したそうです。もはや玉木代表自身が国民民主党を発展させることに関心がない様子が伝わってきますが、政党の代表がそんなに低い志では、陰で崩壊を楽しみにされても仕方ないでしょう。そして、そういった姿勢が国民の関心が政治に向かない要因にもなっていると思います。

 今後は、離党者がいつどのタイミングで出てくるのか。分裂するのか、合流するのか……などが争点になると思います。

 神澤としては、党の崩壊や分裂より、現在の山積みの課題をきちんと議論する国会になってほしいです。そうでないと、相次ぐ天災への対応や被災者支援をきちんとできないですからね。
(文=神澤志万/国会議員秘書)

自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長(写真:日刊現代/アフロ)