ピンク色の髪をした謎の女性・ハル子との出会いをきっかけに、超常的なトラブルに巻き込まれる登場人物たちの騒動を描いた、全6巻のOVAシリーズ「フリクリ」。予測不可能なストーリーと、ド派手な戦闘シーンなどを盛り込んだハイテンション&スタイリッシュな演出で、日本はもちろん、海外でも絶大な人気を博したSF青春ストーリーだ。その「フリクリ」の新作が、劇場版『フリクリ オルタナ』(公開中)、劇場版『フリクリ プログレ』(9月28日公開)として約18年ぶりに復活を果たした。

【写真を見る】髪も伸び、少し目を伏せた表情が大人っぽい水瀬いのり

『プログレ』の舞台は、ハル子がハルハ・ラハルとジンユという2人に分裂した世界。いつもヘッドホンで外界の情報をシャットアウトしている無気力系女子中学生・ヒドミが、ラハルとジンユに出会ったことをきっかけに予測不能な事態に巻き込まれていく姿を描く。主人公のヒドミを演じているのは、声優・水瀬いのり汗だくになって演じたというヒドミや、ラハル役の林原めぐみ、そして『オルタナ』で主演を務める女優・美山加恋について語ってもらった。

■ 「考えるな、感じろ」をストレートに表現!

――台本を読んだ時の印象を教えてください。

水瀬「読めば読むほどわからなくなる、新しい作品だなと思いました。実際、ヒドミを演じながらも本当にわからないことだらけで、そんな疑問を直接芝居にぶつけていくことで、キャラクターとより深くシンクロした感じです。なので、もう深く考えることはやめようと思い、その場で感じた感情をストレートに表現しながらアフレコに挑みました」

――「考えるな、感じろ」と言われたそうですが、その言葉を聞いた時の気持ちを教えていただけますか?

水瀬「1回目のアフレコの際に総合的なお話があり、その時に言われた言葉なのですが、すごく安心しました。このシナリオはなにを思って書かれているのかなとか、どのような意図でキャラクターは動かされているんだろうとか、作品に対しての思い入れが強ければ強いほどスタッフの皆さんの気持ちに応えたいと思うので、うまく表現できないと悩んでしまいます。でも、『考えるんじゃなくて、感じてください』とおっしゃっていただいたことが、感じ方は人それぞれ正解はいくつもあるんだろうなと思えて、ちょっと肩の荷が下りたような気持ちになりました」

林原めぐみに対抗して引き出された全力の演技

――アフレコ現場はどのような雰囲気でしたか?

水瀬「林原(めぐみ)さんが作ってくださった雰囲気が、すごく温かかったです。アフレコの開始時間が朝早かったので、お腹の音がならないようにと、おむすびを握ってきてくださいました。先輩の皆さんが作ってくださる温かい空気の中で、のびのびお芝居をさせていただき、本来であれば貴重でとっても緊張する場所なのですが、それを心から楽しめたのは、優しい先輩たちがいてくださったからだと思っています」

――様々な表情をみせるヒドミですが、その中でも超ハイテンションな演技は、どのような過程で生まれたのでしょうか。

水瀬「林原さんのラハルのお芝居を聞いた時に、もっと自分を出していかなきゃ、ヒドミが消されると思ったんです。ヒドミはラハルに真っ向からぶつかっていくキャラクターだったので、ちょっとやそっとの違いやギャップでは埋もれてしまうという気持ちがあったのですが、自分が思っているよりもさらにはっちゃける必要があるな、というのを先輩の背中から受け取りました。今思えば、自分にない引き出しが開いた瞬間だったかのかもしれません。壊れたヒドミは、自分とはかけ離れたところにいるキャラクターで、本当にこの子じゃないとできない芝居があるなというのも痛感しました。私自身も汗だくになりながら、自分も『フリクリ』の世界に染まれたかな?と感じながら演じました」

■ 『オルタナ』の美山加恋は「心に響く」

――美山さんが『プログレ』をご覧になった時に、今までの水瀬さんが演じていたキャラクターとは全く違う役柄で、本当にすごい声優さんだとおっしゃっていました。水瀬さんは『オルタナ』での美山さんの演技をご覧になって、どのような感想を抱きましたか?

水瀬「加恋ちゃんは、女優としても活躍されているからか、アフレコでは身振り手振りが大きく、台本もしっかり読み込んでいて、セリフが頭の中に入っているような感覚でお芝居をされるんです。私は台本を見つつ、画面を見てお芝居をしているのもあり、加恋ちゃんが台本を見ずに演じているのがすごく素敵なんですよね。加恋ちゃんのお芝居は心が動かされているからこそ出るもので、声にもすごく説得力を感じています。『オルタナ』での(美山演じる)カナちゃん役でも、嘘のない、心に響くセリフをたくさん聞かせていただきました。私もすごくカッコいい役者さんだと思っています」

――最後に作品をご覧になる皆さんへメッセージをお願いします。

水瀬「『フリクリ』は、“変なことってカッコイイ”、“人と違うってカッコイイ”、“人と違うことを貫くとはこういうことだ”という気持ちになれる作品だと思っています。一度では気持ちの整理がつかないまま映画が終わってしまうと思うので、ぜひ何度でもご覧いただきたいと心から言いたいです。湧き上がった疑問を解決する中で、『考えるんじゃなくて感じる』というものを、スクリーンで体感してください」(Movie Walker・取材・文/中村実香)

声優・水瀬いのりが主演を務める劇場版『フリクリ プログレ』は9月28日(金)公開