ハムスター

(Lyubov Demus/iStock/Getty Images Plus)

知人や友人、会社の同僚などからふとしたアドバイスを受け、趣味や人生の幅が拡がることがある。しかし、もしそれが「強制」だっったとしたら、どうだろう? 「プライベートに口を出すな!」と不快に感じる人が多いのではないだろうか。

GPSを使って残業時間の証拠を自動で記録できるスマホアプリ『残業証拠レコーダー』を開発した日本リーガルネットワーク社には、ブラック企業の先輩から受けた、業務に関係ないとんでもない命令についてのエピソードが寄せられた。

■「残業100時間超え」のブラックぶり

anonymousさんが働いていた会社は、勤務時間においてもかなり厳しいものだったという。

「平日は9時〜26時が普通、休日出勤は当たり前で、休日だからといって昼過ぎに帰ろうとすると、引き止められる。 残業時間は100時間超えが普通。

基本的に新卒採用しかしておらず、10人以上は採用します。 が、1年の間に先輩社員も含めて10人以上は退職します。 つまり±0の社員数が毎年続いています」

■ジム通いとペット飼育を強制

さらに、上司・先輩から「ジム通い」を強制され、同僚は「ペットの飼育」までも強いられたという。

「自分はぽっちゃり体型ということがあり、 いつまでに○○kgを切らないと、ジムに通えと言われ、 自腹でジムに通わされコミットさせられました。

また、 とある社員の話で、 『お前は人間の気持ちがわからない、それならまずはペットの気持ちがわかるようになれ!』とのことで、 ハムスターを2匹飼うはめになりました。

メスを2匹にしたから増殖することはないと言われていましたが、実際はオスとメス1匹ずつであり、 数週間で10匹を超えるハムスターを飼うはめに…。 餌代やゲージ代はすべて自腹で飼育をしていました」

anonymousさん自身も、増えすぎてしまったハムスターを1匹貰い受けることとなった。

■弁護士の見解は…

ジムに通うのも、ペットを飼って癒やされるのも、自分の趣味でやるのは好ましいこと。しかし、やりたくもないのに会社にやらされるというのは、なかなか珍しい。

こうした強制に法的な問題はあるのだろうか。鎧橋総合法律事務所の南谷泰史弁護士に聞いたところ…

南谷弁護士:新卒を10人以上採用しているにもかかわらず、同じ人数が中途退職していく離職率の高さに、この会社のブラックさが現れているように思います。

まず、平日に朝9時から深夜2時まで勤務していた点については、このような勤務は一日だけであっても、36協定がない限り労基法32条違反です。

また残業代支払い義務が発生しますので、残業代が支払われていなければ労基法37条違反となります(法律を守っていたとしても、特別な理由もなく1日15時間も勤務させるのはいかがなものかと思いますが)。

さらに、長時間労働を当然のように続けさせていたことも問題だという。

南谷弁護士:さらに、このような長時間労働が日常的であったこと、休日出勤も頻繁に発生していたこと、結果として月の残業時間が100時間を頻繁に超えていたことについては、会社の安全配慮義務違反の問題が発生します。

月100時間の残業は、いわゆる過労死ラインを越えていることから、長時間労働の結果、社員が病気になった場合、会社は安全配慮義務違反に基づき、その社員に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

■ジムやペット強制はパワハラ

また、仕事と関係のないジム通いやハムスター飼育の強制は、明らかなパワハラだと南谷弁護士は指摘。

南谷弁護士:次に、anonymousさんの意思に反して、ジムの利用やハムスターの飼育を強制させられていた点は、パワーハラスメントの問題の一種と捉えることができます。

ジムの利用やハムスターの飼育が業務と無関係であることは明らかです(モデル等、スリムな体形の維持が必要な特別な職業である場合は除きます。)。

そのため、仕事上の地位関係を利用して、業務の適正な範囲を超えて、精神的苦痛を与えるものといえ、パワーハラスメントに該当します。

その上司や先輩に対して、不法行為に基づき、anonymousさんが払った費用や慰謝料等の損害賠償を請求することができるでしょう。また、会社に対しても、職場環境配慮義務違反に基づき、同様の損害賠償を請求できる可能性があります。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク

ペット飼育を強制されてハムスターが10匹に… ブラック企業のトンデモ命令がヤバすぎる