『シュタインズ・ゲート エリート』の完成を記念して制作した、週刊ファミ通2018年9月27日号(2018年9月13日発売)の『シュタインズ・ゲート』特集。46ページにも及ぶボリュームでお届けした同特集で、志倉千代丸氏のインタビュー記事を7ページにわたり掲載した。しかし、7ページ使っても載せきれなかった話題もいくつかあったため、ファミ通.comで特別に志倉千代丸インタビュー完全版を公開する運びとなった。誌面を読んだ人もそうでない人も、ぜひ注目してほしい。また、志倉氏の写真を「これでもか!」と掲載したので、志倉氏のファンは超チェック


【画像16点】「求めるのは科学的根拠に基づいたリアリティー――志倉千代丸氏が語る『シュタインズ・ゲート』などの“科学アドベンチャー”の作りかたと未来」をファミ通.comで読む(※画像などが全てある完全版です)

ひねくれ者だからこそ無視できないリアリティ



――まずは科学アドベンチャーシリーズを作ろうと思ったきっかけから教えてください。


志倉 それには大前提として、僕が“ひねくれ者”であることをお伝えする必要があります。


――そんなところから(笑)


志倉 とにかく僕は否定から入るクセがあって、リアリティーのない物語に感情移入ができないんです。物語のリアリティーとは科学的であることだと僕は思っていて、これはもう絶対に揺るがないんですよ。たとえば本来、ロボットものだったら根拠や理屈より、エンタメとして楽しめればいい世界設定のものが多いですよね。でも僕は、巨大ロボットが倒れたら、それはだいぶ高いビルが倒れたのと同じで、フルエアバックがないとパイロットの身を守れずに死ぬでしょ、とか思ってしまう。ほかにも、レバーやボタン操作だけで、どうやってこんなに複雑な挙動をさせられるんだと、いろいろ考えちゃうんです。だからロボットものを作ると、過去のロボット作品を否定するような形になってしまい、その結果『ロボティクス・ノーツ』のような「けっきょくできるのはポンコツだろう」というひねくれた答えにたどり着いてしまうわけです。それと“ラッキースケベ”(※1)もですね。主人公にフェロモンなど、女性を惹き寄せる何かがなければあり得ない、ということまで考えてしまう。現代のこの世界で起こる出来事に関しては、どうしても科学をおざなりにはしたくないし、科学的な根拠がないとつまらないと感じているので、しっかりした科学を根拠にしたアドベンチャーゲームを作ろうと思ったんです。そうした科学の説明をするうちに、僕の作品はTIPSすごい量になってしまって(笑)


※1:ラッキースケベ……偶発的に発生、遭遇した、ちょっとエッチシチュエーション



――確かに(笑)。いま話されたような部分が科学アドベンチャーの発想のもとになっているところですよね。たとえばラッキースケベ(的な妄想の具現化)を科学的に突き詰めていった先に『カオスヘッド』があったり。


志倉 ええ。ほかにも、僕がかつて作った、超太古の世界が舞台の『アイテムゲッター』というファンタジー作品でも、科学要素が出てきます。現代では超凄腕のプログラマーハッカーのことを“ウィザード級”と言いますよね? その発想もあり、術式こそ違えど、ファンタジーの魔法ですらプログラムでできているんだという設定が、僕の中でのリアリティーだったんです。まぁ、これは大コケしたんですけど(笑)


――(苦笑)。ちなみに、そんなリアリストな志倉さんに訊いてみたいのですが、タイムマシンは実際に作れると思いますか?


志倉 作れます。僕は『シュタインズ・ゲート』を生み出す過程で多くの資料や論文を読みあさり、解釈し、いつしか実際に時間超越を可能とする、とある理論に辿り着いてしまいました。ただ、ここでは言えません。なぜなら弊社には“機関”が……。あ、こういう冗談はいいですか(笑)。でも本当に作れるとは思っています。その僕の考えているロジックについて、ファミ通さんがもしご興味を持っていただけるなら、ぜひまた別の機会をください。ただしゲームの話は一切出てきませんが!


――検討させてください(笑)。もうひとつ、本題に入る前にお聞きしたいのですが、同じく志倉さんが手掛ける『オカルティック・ナイン』や『アノニマスコード』も、扱いは科学アドベンチャーシリーズとしてもいいのでしょうか?


志倉 『オカルティック・ナイン』は、当時は科学アドベンチャーではない的な雰囲気を出していたのですが、けっきょくこれも“超常科学”なため、科学アドベンチャーシリーズということに変えました。『アノニマスコード』もです。余談ですが『オカルティック・ナイン』は、アニメは評価していただいたものの、その後に出たゲームアニメと内容がほぼ同じで、結末も主人公のその後が描かれなかったこともあって、ファンの皆さんに怒られたんです。実際、僕は以前にファミ通さんの取材で「アニメの終わりかたが気になるでしょう。これはゲームで補完されます」的なことを言いましたし、その準備もしていました。でも当時、現場では「いろいろ間に合わない。でも発売日のほうが重要で、延期はできないから発売!」と、発売を強行してしまうという、その判断に僕が気づけなくて。


――それは公言しても大丈夫なんですか?


志倉 もちろん。僕の言い訳にもなります(笑)。今度Nintendo Switchに移植するときには完全版を出しますが……。


――いま、さらっとNintendo Switch版の情報が飛び出した気がするのですが! NintendoSwitch版を開発中ということですね(笑)


志倉 Nintendo Switchで出します! で、すでに発売中の他機種版を買っていただいた方には、追加部分のパッチを無料で出しますともアナウンス済みです。それも、もうちょっとでアナウンスから1年近くになりますね……。『アノニマスコード』ともに、同時並行で多くの制作ラインが動いている都合もあり、お待たせしてたいへん申し訳ありませんが、絶賛取組中ですので、もう少しお待ちください。


目指したのは時間超越の全部入り。3つの核で形成された意欲作



――では、いよいよ話を『シュタインズ・ゲート』に移したいと思いますが、ここまで人気が出ることを予想していましたか?


志倉 僕個人としては、人気はぜんぜん出ていないと思っています。と言うのは、僕は社会現象クラスまでいって、初めて人気作品と呼べると思っていますから。たとえば僕の母や妹、その旦那はアニメをふだん見ないので、『シュタインズ・ゲート』を知らないんですよ。それって社会現象になっていないからなんです。実際、幅広い層に認知されている小林幸子さんに曲を提供したときは、母親から「お前すごいね。さっちゃんに曲を書いたんだって?」と褒められたりしましたが、『シュタインズ・ゲート』はそのレベルじゃない。これは謙虚ではなく、本気でそう思っているんですよ。ときどき美容室とかでアニメの話が出て、「最近は『シュタインズ・ゲート』を観ています」と言われて、「あ、それ僕が作りました」なんていう、うれしい瞬間もありますけどね(笑)。そうしたものとは違う意味でのうれしさで言うと、最初のXbox 360で発売したときに即50000本に達成して、そこからじわじわと口コミで広がっていったことです。口コミでの広がりは、“誰かが誰かにおもしろさを伝えたくなる作品”ということなので、そのじわ売れ感はすごくうれしかったですね。


――じわ売れしていく中で、ここで一気に売れたというタイミングはありましたか?


志倉 認知という意味では、『シュタインズ・ゲート』はアニメタイミングでぐっと認知度が上がったので、やはりアニメの力はすごいなと思いましたね。ただ、売上はシリーズ全体で見れば段階的に少しずつじわ売れしていった感じなので、「ここで一気に売れた」というタイミングは、残念ながら味わっていないです。


――なるほど。ちなみに「当時、こうしておけばよかった」と思うことはありますか?


志倉 企画段階にあった、自分の携帯電話ゲームに介入するシステムを実装してもよかったかなと思いますね。“自分の携帯電話ゲームに介入できるインタラクティブ性を出せたら、アドベンチャーゲームとしては新しい”という考えが、企画段階の重要なポイントとしてあったんです。自分の携帯電話デタラメな答えを打つと、オンライン上でつながっている紅莉栖に「ちゃんと打ちなさいよ」と怒られるみたいな。そうした要素を実装しつつ、“フォートリガー”も盛り込めばいいんじゃないかとスタッフと話していたんですが、サーバーまわりとハードウェアの規約の問題で、開発に時間もかかりそうだったので、フォートリガーだけの実装になって。ほかにもいくつか削った仕様がありますが、それらの中ではいちばん大きな要素ですね。それに、当時は『シュタインズ・ゲート』がここまで長く続くとは正直思っていなかったので、もし2~30000本売れただけの作品に対し、ずっとサーバーを準備しておくのもちょっとな、と。


――そんな『シュタインズ・ゲート』の魅力は、やはりその緻密に作り込まれたシナリオにあると思いますが、シナリオを作る際にこだわった部分や注意した部分はどんなところですか?


志倉 時間超越の作品を作るうえで、新たな要素も昔からある要素も入れた、“全部入り”をやりたいというこだわりはありました。タイムリープなら『時をかける少女』、タイムマシンなら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、いくつも作品があるわけですが、僕らは“Dメール”、“タイムリープ”、“タイムマシン”の3つの核を全部入れようと。しかも、その3つはすべて物理学、ロジックによって構造が同じ、というのが最初の企画のテーマでした。カテゴリー的には物理学なんですけど、タイムリープ物理学だけでは説明できないということで脳科学も入ってきて、「いちばんこの世で速いものは何か?」と考えたときに出た答えがデータだったんです。データ化さえすれば光速に近づける、時間を超えられるんじゃないかと。そうした構成が、いちばんリアルに感じてもらえるためにこだわった部分ですね。科学的になぜそうなるのかという部分にキャラクターが苦悩するわけじゃないですか。その苦悩を乗り越えていく中でプレイヤーキャラクターの心情を知り、物理や脳科学のことも学んで、知的好奇心が満たされていく。その感覚が、僕がいちばん大好きな“リアリティー”にあたるものです。もちろん、作品内で矛盾や破綻している部分もゼロではありませんが、そこは“99%の科学と1%のファンタジー”という、最初に僕がこのシリーズにつけたキャッチコピーにもあるように、ファンタジーだから許してほしいところが多少はありますね。


――たとえば岡部の“リーディングシュタイナー”(※2)は、ファンタジーになるのですか?



※2:リーディングシュタイナー……変動前の世界線の記憶を維持する能力のことを、岡部自身が名付けた。“運命探知の魔眼”と書く。


志倉 そうですね。だからフェイリスルカ子が「ハッ」となる、プチリーディングシュタイナーのようなものが発動する場面は、ちょっとどうなんだと思ったこともあります。その矛盾を何とかなくしたいと思って作ったのが劇場版なんですよ。リーディングシュタイナーは、岡部以外の人も微弱ながら持っているもので、いわばデジャヴの拡大解釈なんです。皆さんも「この光景、どっかで見たぞ?」という既視感を覚えたことがあると思いますが、それこそがリーディングシュタイナーの正体。岡部の場合は「この光景見たぞ」という世界に行けちゃう=世界線の移動ができるほど、その能力に秀でているだけで。だから劇場版で、隣り合った世界線で残っている残留思念を引き継ぐ力=リーディングシュタイナーは、ある意味ゲームプレイヤーの皆さんも微弱ながら持っている能力なんだ、と提示して。こういう、本編で科学的じゃないなと思っていた部分を、「本当はみんなが持っている能力だから」で着地させたかったんですね。


――ではなぜ岡部だけ、世界線を移動できるまでに強い能力を持っているのでしょう?


志倉 やはり、岡部の人を想う気持ちの強さがポイントでしょうね。岡部は自分を演じてでも誰かを守りたいという気持ちがものすごく強い人なんです。ただ、先ほども言ったように、ほかのキャラクターユーザーの皆さんも力自体は持っている。だから、岡部のようなリーディングシュタイナーの力を持っている人がこの世にいないとも限らないですね。


――シナリオもそうですが、『シュタインズ・ゲート』はシリーズ楽曲がとても多いうえに、人気ですよね。作詞作曲の際は、どんなことを意識したり、想像して制作されていたのでしょう?


志倉 プレイヤーが作品を終えたときに初めて、歌に込めた、本当に伝えたかったこととの答え合わせができるような、あくまでも物語の一部であり伏線の集合体のような楽曲を目指して制作しています。僕の楽曲は“ネタバレソング”などと言われることも多いのですが、作品を遊ばずして実際にネタバレした例はないと断言できます。作品を知らない人にとって理解は難しく「恐らくこうだろう」という解釈や予想を裏切るようにしていますね。


――それぞれの楽曲に込められた想いなどもお聞かせいただけますか?


志倉 数が多すぎてすべての楽曲に込めた想いと言われると、さすがに答えきれません!(苦笑)。なので別の機会にぜひ、歴代科学シリーズの楽曲特集を組んでください(笑)。各楽曲ごとのテーマメロディーに込めた想い、歌詞の中に隠された伏線など、いまだからこそ言えることは山ほどあるので、すべての楽曲に詰め込んだ想いを初公開します! これだけできっと10ページくらいいけますよ(笑)。とくに思い入れのある曲についても、その音楽特集ページで、選択した理由とともにお答えします!


――そのお話も聞いてみたいところではありますね。制作で苦労した曲なども、ファンは気になるでしょうし。


志倉 そうですね。ただ、楽曲に関しては、この曲が苦労したというより、毎回科学チームの音楽班から言われる「やっぱりサビはキャッチーで、ガツーンとインパクトが欲しいですね」という言葉に苦戦しています(笑)


綿密に練られた設定と散りばめられた伏線&関連性



――科学アドベンチャーの作品はどんどん増えていますが、新エピソードが浮かんだとき、どのシリーズの物語にするか、それとも新作にするかは、どのように決めているのでしょう?


志倉 ひとつは発売時期を考えて、ですね。その中で、「いまみんなが興味を持ってないだろうけど、作品が発売されるころには興味津々だろう」というものを僕なりに考えています。たとえば『オカルティック・ナイン』なんかは、僕はもうちょっとオカルトブームが来ると思っていたというか、オカルト現象が科学的に解明されていく流れを見ていたつもりだったんですよ。ほかにも『シュタインズゲート・ゼロ』のときは人工知能だったり。自立性を持った人工知能が注目され始めるだろうという予言が2007年くらいにあったのですが、人工知能が発展したタイミングが、ちょうど『ゼロ』のテーマや開発時期とハマったりもしましたね。ちなみに僕は、昔から人工知能の自立性を意識していて、人工知能だけでひとつの科学アドベンチャーシリーズを作ってもいいかなと思っていたくらいです。少し脱線しますけど、人工知能と言うと、皆さん『ターミネーター』みたいなものを想像すると思いますが、人工知能アンドロイド、ロボティクスはまったく別の分野なので、人工知能に人間が牛耳られる、という事態は起こりません。ただ、人工知能に自立性を持たせると、彼らは自分でどこまでもデジタルでの行動範囲や思考を拡張できてしまうんです。アマデウス紅莉栖だって、あのまま何十年、何百年と生きたら、どんどん変化が生まれます。アマデウス紅莉栖という存在があり続けること、これが果たして誰を豊かにし、誰のためになるのか? マスコットとして会話を続けることもできるけど、自立性を持つとまた違う世界が広がる……。そんなところまで考えて、作品を作っています。『シュタインズ・ゲート』を作るときにも、「これは1と0の物語なので、本編と『ゼロ』のふたつがあって初めて完結する」と考えていましたし。つぎに出る『ロボティクス・ノーツ DaSH』もダル視点で進むゲームになっていますが、これもソフトウェア専門のスーパーハッカーのダルが、どうやってハードウェアの知識を得たのかを描くためのものです。最終的にはタイムマシンができる未来があるかもしれない。『ロボティクス・ノーツ』の世界にダルが行き、そこでの経験によってタイムマシンメカニックとしての“気づき”を得る=のちのちダルがタイムマシンを完成させることにつながるなど、科学アドベンチャーシリーズはそれぞれにうっすらと“つながり”がある。最初こそ『ロボティクス・ノーツ』はシリーズプランになかったのですが、メカを学ぶシーンがないとダメだということで入ってきた感じです。『ロボティクス・ノーツ』でダルが種子島に渡ること、それもひとつの分岐点になっているわけです。


――そこまで細かく考えられていたんですね。ほかに考えながら作っていることには、どんなものがあるのでしょうか?


志倉 以前から、僕はいろいろなところで言っていますが、アドベンチャーゲームでいちばん大事なのはシナリオで、これがおもしろければ外すことはありません。そして、それと同等か、それ以上に重要なのがキャラクターの魅力。キャラクターの魅力と関係性、これが重要なポイントだと僕は思っています。


――関係性も重要だからこそ、ひとつの作品を作っている最中に、つぎの作品の展開のことも意識しながら制作しているのですか?


志倉 そうです。でも、僕は関係性をスタッフには共有しません。共有すると、みんな頭がこんがらがってしまうので。ある程度作品がまとまってきたところで、僕がつぎの作品につながる要素を入れていくんですよ。たとえばアニメ『ゼロ』の主題歌『ファティマ』は、『アノニマスコード』に関係があります。


――『アノニマスコード』の情報としては、“ファティマ第三の予言”というワードが既出です。


志倉 そうです。ほかにも、『アノニマスコード』で描かれる世界は2036年2038年。ちょうどディストピアとなった世界から鈴羽が過去に飛んでくる時期と同じです。また、今井麻美さんの新曲『World-Line』も、歌詞の最後で“world-layer”と言っているのですが、あれは世界線と世界層というのを英語で囁いているんですね。そうやって作品の中でもポツポツと入れ込んでいるネタや、物語の中では伏線と思えなかったものが、つぎの作品で回収されることも、シリーズのおもしろさだと思っています。ただ、ナンバリングタイトルだと思われると「『カオスヘッド』はやっていないから、第6弾とか無理」みたいに言われてしまうので、あまりそこはアピールしたくないんです(苦笑)。作品ひとつひとつで成立しているけれど、全部の作品を遊んでいるとちょっとおもしろさが増すかなと。だから『アノニマスコード』もお楽しみに、という感じですね。


――ちなみに『アノニマスコード』の情報に関して、音沙汰がなくなってしまいましたが、発売日はいつになるのでしょうか……?


志倉 ごめんなさい、それはちょっと……もう少しお待ちください……(ごにょごにょ)。本作は現在、多くの制作ラインが同時進行している中、もっとも時間を割いている作品ですので、ご期待ください!


――気長に待っています(笑)。『アノニマスコード』関連でもうひとつお聞きしたいのですが、本作は発表時からシナリオにかなり手を加えているという噂を聞きました。シナリオはどれくらい完成しているのでしょうか?


志倉 マルチエンドなので完全には完成していません。ただしメインルートシナリオは5回くらい完成し、現在6回目のループ状態に入っています。ループテーマにした作品であるせいか、僕自身がループしている状態にハマっていましたね。ですが、そのループした回数ぶんが思考巡回の積み重ねとなって、シナリオとしてのおもしろさ、さまざまなトリックやミスリード、そして本作でもっとも肝心な“主人公の能力がセーブロード”というギミックを完成させるにあたり必要なループだったようにも思います。もちろんキャラクターや背景などの素材周りは並行して動ける範囲で作業は進んでいます。



――『シュタインズ・ゲート』の登場人物は、発売当初は賛否両論かなりハッキリと分かれていたと思います。それがいまや、非常に人気のあるキャラクターになりましたが、ここまで人気が出たきっかけは何だったと思いますか?


志倉 キャラクターに二面性があるからでしょうね。僕はすべての人間が多重性を、少なくともふたつは持っていると思っていて、人は多重性がなかったらおもしろくない、という話を以前に科学チームにしたんですよ。岡部やダル、もっと言えば科学アドベンチャーシリーズのほとんどの登場人物が多重性を持ち、本当の自分じゃないキャラクターを演じている。それが本来の僕らと共通する人間らしさだと思っている。要するに偽っているというか、猫を被っている状態なんですが、ときどき顔を出す本音、岡部のやさしさだったり、ダルがスッとマジメな顔になる二面性。表面だけではなく、その人らしい内面が見えてくる。そこにキャラクターの深みと言うか、おもしろさがあると考えているので、その部分を重視してキャラクターを作っています。たとえば、まゆりですら自分を演じている。そのまゆりから本音が出てしまう瞬間。その溜めが長いほど、本音が出た瞬間、視聴者ユーザーはグッとくるんです。そのキャラクターに感情移入できる、愛せる理由って、“だんだん内面が見えてくる”ところなんです。賛否両論ある理由は、僕の作品はキャラクターの外面しか見えていない状態から始まって、どの作品でも「何だこいつ……」と思うからでしょうね(笑)。でも、キャラクターを掘っていくと内面が見えてくるのは、現実の人間も同じで、その人の二面性、本音が見えたときにグッとくる。そういうシリーズであり続けたいと思っています。このへんはかなり意識しています。


――二面性という意味では岡部は“厨二病キャラ”ですが、それにも理由はあるのですか?


志倉 べつに厨二じゃなくてもよかったんです。岡部って基本的に恥ずかしがり屋で、コミュ障(※3)ですよね。でも、誰かを楽しませたいというサービス精神、その場を盛り上げたいみたいな面もある。そういう、ときにコメディー、ときに閃きが両立できるキャラクターって、たぶん厨二くらいなんです。嘘の自分を演じていて二面性の幅が広いのは岡部ですから。


※3:コミュ障……実際の症状のことではなく、コミュニケーションが苦手な人のことを指すネットスラング



――こうした登場人物の名前のつけかたは、どのように行われているのでしょう?


志倉 これはもう、現実社会で、生まれた子どもに名前を付けるときに両親が考えるそれと同じだと思います。ただし、このたとえで言えば、科学アドベンチャーシリーズはどんどん大家族になってきているので、確実に名づけに悩む時間は長くなっています。


――『シュタインズ・ゲート』は、登場人物のデザインも人気ですが、キャラクターデザインhukeさんを起用した理由をお聞かせください。


志倉 当時、『ブラック★ロックシューター』を始めとした絵を見させていただいて、これまでのアドベンチャーゲームにない絵柄だとピンときたからです。ただ、当時は反対意見もすごく多くて。キャラクター存在感や独特のテクスチャーが強すぎて背景との整合性が合わなくなるとか、「エッジが利きすぎてません?」みたいに言われたり。でも僕は、この人の絵はおもしろい、すごいんじゃないかと思っていたので、hukeさんに関しては完全にゴリ押しでした。「絶対に新しい作品に見えるから」と(笑)


――新しいと言えば、『シュタインズ・ゲート』は実際にラジオ会館タイムマシンを落としたり、アニメの内容を再放送で改変したりと、ファンを驚かせる試みを多数行ってきましたよね。今後やってみたいことはありますか?


志倉 もちろんありますが、各地の商工会や自治体の皆さんに怒られそうなので言えません……。『シュタインズ・ゲート』に限らず、科学シリーズ全般として、過去にも数多くの試みを企んではみたんですよ。ですが、多くの諸事情により叶ってない企画が山ほどあります。


――それも気になりますね……。叶うか否かはさておき、ゲーム以外にもさまざまな展開を見せている科学アドベンチャーシリーズの、つぎのメディアミックスや広がりの構想もすでにあるのですか?


志倉 たとえばドラマ化だったり、いろいろと可能性はあるのですが、このタイミングで語っても弊社広報スタッフカットされてしまうので言及は避けます。僕はあれだけ作中でも「なかったことにしてはいけない!」と叫んできたつもりなんですが、実際にはいろいろな発言が無かったことにされているという都市伝説級の事実があるので……。もしこの発言すらなかったことにされたら、うちの広報部をやっぱり“機関”と呼ぶことにしようと思います(笑)


ファンディスクなどの構想も! ? 気になるあれこれを直撃!



――ここからは細かい質問をさせてください。『シュタインズ・ゲート ゼロ』で登場したキャラクターは、シュタインズゲート世界線で岡部たちとの接点はあるのでしょうか?


志倉 『シュタインズ・ゲート』のテーマに、未来は見えていない、わからないからこそおもしろいんだというものがあります。いわば“可能性世界線”ですね。ですので、接点のあるなしで言えばもちろんあるでしょう。ただ、接点が薄いか濃いかはわからないといったところです。


――同じく『シュタインズ・ゲート ゼロ』の質問ですが、アニメ化発表から放送まで時間がかかった理由は何だったのでしょうか?


志倉 前提として、アニメの放送時期というのは、まず最初にアニメ制作委員会を立ち上げるべく、参画してくれそうな各社との条件交渉などの話合いが始まります。そしてアニメ制作スタジオスケジュールを確保し、このあたりの各種オトナの事情をまとめる過程で放送時期が決まってきます。だいぶざっくりと省略しましたが、この辺までは委員会方式を採っているどんなアニメ作品でもたいてい同じです。それに加えて時間がかかった理由ですが、それはやはり、ルート分岐の整理ですね。アニメという、物語が一本道に制限されているメディアの中で、原作ゲームを知らない視聴者でも十分に楽しめて、さらに原作ゲームを遊んでくれたユーザーからも一定の評価を得たい。そう考えたときの、ベストと思える解にたどり着くまで、アニメ用のプロットを何度も書き直したからです。原作を踏まえたうえで考えられる後発としての優位性や、アニメだからこそできる表現の自由度を、どんなシナリオだったら活かせるのか? といったことも考えながら、アニメ用のシナリオが最終稿に至るまでに、かなりの時間がかかりました。原作に対する理解の深さ、アニメならではの演出、よりドラマチックに見せるための視点変更、それ以外にも多くのアイデアを生み出してくれたアニメ制作チームには、感謝しかありませんね。


――アニメの第8話や第16話などでは、原作の内容を補完するようなシーンがありました。それはMAGES.側から要望されたのですか?


志倉 基本的にはアニメ制作チームと原作チームがお互いにアイデアを出し合うスタイルなので、要望という表現はちょっと違います。ただ、出たアイデアベストと思われる形でまとめてくれるアニメ制作チームサイドの貢献度はとても大きかったです。制作のWHITE FOXさんの本気度はもちろん、説得力のある川村(賢一)監督の判断や、シリーズ構成の花田(十輝)さんから飛び出すアイデアの数々は、僕らだけでは到底生み出せず、監修する立場の原作チームも、そんな彼らの才能や熱量がひとつたりともムダにならないよう、必死に向き合いました。


――『シュタインズ・ゲート』は構造上、シリーズ作品を作りやすいと思いますが、今後続編やスピンオフ作品をリリースする予定は?


志倉 パラレルワールドにちなんで言えば、岡部たちラボメンに焦点を絞った作品もまた無限に作れますが、現在のところ、そのような予定はありません。『シュタインズ・ゲート』は、あくまでもデジタルなロジックで成り立っている作品なので、バイナリーである“1”と“0”へのこだわりがあって、重ね合わせ状態にある1と0がシュレーディンガーの猫のように、どちらを観測するのか? またはときに干渉しあうような量子力学的な構造が『シュタインズ・ゲート』にとって最も美しい形だと考えています。ただ、たとえば“シュタインズ・ゲート ゼロ だ~りん”などのファンアイテムや“シュタインズ・ゲート ゼロ エリート”などは、十分に考えられますけどね。また、同じシリーズでも一部を除いて基本的にはキャラクター総入れ替えの『カオスヘッド』と『カオスチャイルド』の作法で言えば、たとえば“シュタインズ・ゴッド”のようなタイトルで、別世界線でのまったく別の新キャラクターの話を描くことはできるかもしれませんね。


――実際に、ファンや開発スタッフから「こんな『シュタインズ・ゲート』を見たいor作りたい」という要望が届いたりはしていますか?


志倉 Nintendo Switch版『エリート』の特典として作った『ファミコレADV』を、ファミコンソフトとして本物のカセット版を出してくれ、という要望は世界中から殺到しました。しかし、さすがに現行機ではないファミコン用のソフトを販売しても、僕らはもちろん任天堂さんもサポートのしようがなく、無責任なこともできませんので実現不可能です……!


――では以前、ファミコン版『シュタインズ・ゲート』が志倉さんのTwitterで公開されましたが、それらをファングッズとして販売することもできそうにない……?


志倉 先ほど申し上げた理由の通り、残念ながらありません。箱から何からどう見てもファミコンカセットなんだけど、じつはそのカセット自体もケースで、パカッと中を空けるとSwitch用のロムが入っている! ……なんていう遊び企画も含めて難易度高めです。ただし、ファミコン版ではなく、8bitシリーズ第2弾として“シュタインズ・ゲートゼロ8bit”なら可能です。その代わり今度は受注生産にさせてください(笑)


――今後のシリーズで、ダルや綯のように『シュタインズ・ゲート』のキャラクターが登場するということはありますか?


志倉 姿を見せるかどうかはさておき、登場はするでしょうね。『ロボティクス・ノーツ』でも、ネット上で『カオスヘッド』の彼がハンドルネームで書き込んでいたりもしますし。今後の作品によっては、本編より若い岡部や紅莉栖が活躍したりする作品も出てくるかもしれませんね。


――ちなみにユーザーアンケートでも用意した“究極の質問”になるのですが、牧瀬紅莉栖椎名まゆりのどちらかしか救えない場合、志倉さんならどちらを救いますか?


志倉 片方だけしか選べないなら紅莉栖ですね。なぜかと言うと、彼女は脳科学者だから。紅莉栖を選択すれば、もしかしたらまゆりの死の運命を回避できる可能性が……! ということです。ただ、この仮定もなしで、どちらかが絶対に逝く未来しかないのならまゆりを助けます。そして僕はβ世界線で、アマデウス紅莉栖の最良のパートナーとして一生付き合っていきます(笑)


――なるほど(笑)。それではユーザーアンケートからもう1問。もしDメールを送れるとしたら、どんな内容を過去の自分に送りますか?


志倉 ……Dメールの危険性をわかっていないから、こんな質問が出るんですよ!(笑)。あえて言うなら自分が完成させた曲を、一昨日の自分に送ります。誰かが作ったものをパクるのではなく、のちのち自分で思いつくものなのだから、タイムパラドックスもないでしょうし。「どうせ自分は、のちにこの曲を思いつくんだよ」ということで、時短してもいいですよね? そんなわけで、曲のMIDIデータ(笑)


――志倉さんらしい回答になりましたね(笑)。『シュタインズ・ゲートシリーズの制作を振り返って、思い出に残っていることはありますか?


志倉 これは、どの作品にも言えますが、とにかくシナリオ会議が長い。いままさに『アノニマスコード』がそうなっています。もっとも、9割は僕がしゃべっているんですけど(笑)。あとはやはり『シュタインズ・ゲート エリート』が思い出深いですね。この作品では、全編通して一度も立ち絵を使わないというチャレンジをしています。2クールぶんのアニメがあったし、これはもう『やるドラ』(※4)を超えるボリュームでできると当初は思っていました。でも、同じセリフでもゲームアニメで細かくシチュエーションが違ったりして、とにかくたいへんでしたね。精いっぱい作らせていただいた結果、いままでのアドベンチャーゲームの体験とはちょっと違うものになりましたが、ストレスなく遊べるので、ぜひプレイしてみてください。


※4:やるドラ……1998年プレイステーションリリースされたアドベンチャーゲームフルボイスフルアニメーションで展開する。



――それは楽しみです。ほかにもまだまだ、ユーザーアンケートファンの方から志倉さんへの質問が届いていますので、一問一答のような形式で答えていただければ幸いです。最初の質問ですが、キャラクターに自己投影したことはありますか?


志倉 あります。『オカルティック・ナイン』の主人公なんて「俺か」というくらいですし、作中に出てくるエピソードが、じつは志倉家のエピソードそのままのものも……。ほかにもだいたいどのキャラクターも、“ちょっと自分っぽい要素がほんの少しでも入っているのかな?”と後から気づくこともありますね。


――陰謀論を設定に組み込むことにしたタイミングは?


志倉 これはもちろん、科学アドベンチャーシリーズの企画段階からです。最初の『カオスヘッド』の時点で、“300人委員会”のような設定は意識的にやっています。ただ、これを詳しく話すと、皆さんの命の保証ができないのでこれ以上は答えないでおきます……(笑)


――発売中止になった小説『シュタインズ・ゲート -The Committee of Antimatter-』の内容を今後描くことはありますか?


志倉 もろもろの事情により、いまのところありません。個人的には、そんな“もろもろの事情”を発言したいタチなのですが、“機関”という名の弊社広報によって、確実になかったことにされてしまうので、控えます……。


――『ロボティクス・ノーツ DaSH』も楽しみですが、物語を十二分に楽しむには、シリーズ作品をすべて遊んでおいたほうがいいのでしょうか?


志倉 『ロボティクス・ノーツ』を遊んでくれた方、もしくはアニメで観てくれた方なら十分に楽しんでもらえる内容になっています。ダルも活躍しますので、ほかの作品も知っていると、ほんの少しニヤリとできるポイントが見つかるような構造になっていますよ。それと、『ロボティクス・ノーツ』は難しかったという意見もありました。今回の『DaSH』で僕らは“適度”を目指したので、難易度を懸念している人もご安心ください。


――以前インタビューなどで話題にあがっていた『カオスチャイルド18禁バージョンについて、開発の予定などはありますか?


志倉 “妄想”をテーマにした作品で、健全男子たるものエッチなことを考えるのも自由だし、ごく自然な人類の根源的な脳内衝動だと思うんですよ。ただ、障害も多くてなかなか進めません。きっと「俺の『カオス』をエロゲにすんな!」という反対勢力もあるでしょうし。


――『シュタインズ・ゲート』について、いろいろうかがいましたが、そんな科学アドベンチャーシリーズの終着点に関する構想などは、すでにあるのでしょうか?


志倉 終着と言えるかどうかわかりませんが、もちろん構想はあります。このタイミングで詳細を言うことはできませんが、“科学というテーマがいかに興味深いものであるか”を、作品ごとに伝えていきたいと思っていますので、ぜひ今後の作品もご期待ください。


――アイデアが何も出てこないときもあると思いますが、そういうときはどうしていますか?


志倉 まずは、自分でもわかっている底辺レベルのつまらないアイデアを書きます。つぎに、それがつまらないと思う理由や原因を考えます。おもしろいアイデアを生み出すよりも、つまらない理由やポイントを指摘するほうが簡単だからです。そうして、つまらないアイデアを否定できる自分がいた瞬間に、何かに気づくことが多々あるんです。これは僕の中にいくつかあるうちのセオリーのひとつですね。


――科学アドベンチャーシリーズは、MAGES.を代表するゲームコンテンツの柱になったと感じています。今後、新たなゲームコンテンツを立ち上げるとしたら、どのようなものに挑戦したいか、お聞かせください。


志倉 コンテンツというよりも、まだこの世界に存在しない新たなるアドベンチャーゲームエンジンです。詳細についてはいつか発表したいと思っていますのでご期待下さい。


――それでは最後に、志倉さんが作品づくりで大切にしていること、これだけは必ず欠かさない、ということを教えてください。


志倉 商業的な意味で作品を生み出すとき、自分の価値観を信じきらないことですね。自分の価値観と第三者の価値観をどのような配合でバランスを取るか。誰かが喜んでくれる、驚いてくれる、感動してくれる……。それだけが自分を満たしてくれる唯一の喜びで、作品を生み出したいというモチベーションにつながっています。これは音楽だけではない、すべてのクリエイティブに通じる、僕の価値観です。


週刊ファミ通2018年9月27日号(2018年9月13日発売)にて、46ページに及ぶ『シュタインズ・ゲート』特集を掲載! 特集記事も要チェック!!


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