3年ぶり6度目の全国制覇を、満点で果たした修道高等学校ワンダフォーゲル班。広島県にあるこの学校から全国の頂点に登りつめたのは、寡黙で穏やかな4人のメンバーで編成されたパーティーでした。「今年の修道はダメなんじゃないか」。誰もがそう思っていた3月から、4人が辿った成長の軌跡について、リーダーの白根颯くん(2年)、顧問の内藤弘泰先生に伺いました。

先輩たちから託された記録を頼りに、みんなの思いを背負って挑んだ

リーダー・白根 颯君インタビュー

―― 優勝した感想をお聞かせください。

勝った瞬間はこれまでの練習の成果が出たと思い、中等部から5年間、ワンダフォーゲル班に所属していた中で一番うれしかったです。時間が経つにつれ、インターハイという大舞台で満点を取って優勝できたことを、少し怖くも感じました。

ただ、先輩方から「今年はがんばってほしい」と声をかけてもらっていたことや、高等部だけでも20人を超える班員の思い、また地元ライバル校の思いも感じていたので、がんばらなければという思いはずっとありました。そういう意味では、ホッとした気持ちもあります。


―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?

修道高校には、これまでワンダフォーゲル班の先輩方が残してくれた試合の記録があり、ミスや失敗の原因について詳しく書いてあります。
僕たちはその記録を読み込んで、失敗しそうなところや気をつけなければいけないところは、事前の大会や練習の中で解決していきました。サブリーダーは記録をすべて暗記して、試合中に活用できる場面では、的確な判断材料を提示してくれました。そういったこれまでの蓄積が、優勝への足がかりになったと感じています。

「勝たなければならない」強豪校の自覚がメンバーの心をひとつに

―― 一番苦しかった場面はありますか?

今大会は猛暑の影響があり、登山行動が短縮されました。暑い中、幕営地で待機する時間が長かったのが苦しかったです。待機中は体力を温存するため、涼しい場所を探して体を休めるようにしていました。


―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?

3月から試合に勝てない要因として、体力が十分でないことが分かっていたので、体力を集中的に強化する方向で練習の計画を練り、優先的に取り組んできました。

また、6月に県大会が終わった後は、朝の始業前と昼休憩も班室に集まり、空き時間のほとんどをインターハイの準備のために費やしました。体力づくりや荷物の準備などが主でしたが、審査項目にある「気象」などのペーパーテストは個人の知識が問われるので、そこはしっかり点数を取ることを前提に、登山に必要な知識を暗記しました。


―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。

今年はこれまで以上に暑く、その中で練習も試合もがんばってきたので、優勝できて一生の記憶に残る大会になりました。
チームメイトは友だちというより“仕事仲間”のような感覚で、勝つために言わなければいけないことを、ハッキリと伝え合えたことがよかったと思います。4人とも県大会、インターハイと「勝たなければならない」という思いに集中できたことで、優勝が果たせました。

練習も試合も。生徒の自主性に任せたことが、急激な成長につながった

【顧問 内藤弘泰先生インタビュー

―― 優勝後、選手たちにどのような言葉をかけられましたか?

試合直後は生徒とすぐに合流できなかったので、優勝が決まったときは、思わず一人でガッツポーズをして喜びをかみしめました。

インターハイまでは苦しい期間が続きましたが、彼らはいつも冷静で、県大会以降は特に、任せておいて大丈夫だという雰囲気がありました。下山後、周りや私にまで気を配ってくれる様子を見ていると、4日間でまた成長したのだと感じました。


―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていますか?

修道高校のワンダフォーゲル班では、活動を生徒の自主性に任せています。自主的に活動に取り組むことがテーマであり、生徒の主体性を育むため、登山という場をお借りしている、という姿勢です。そのため、日ごろの練習では生徒が練習をしたいと言えば同行し、もし面倒だと言っても練習を強要するようなことはありません。

3月の時点では、誰もが「今年の修道はダメかもしれない」と思ったほどのチームが、たった5か月で全国制覇を成し遂げるまでに成長できたのは、指導する人間が押し上げたからではなく、彼らが自分たちで自主的に考え、練習に取り組んだからだと思います。


―― 一言で表現するなら、どのようなチームだと思われますか?

自主的なチームですね。彼らは決して仲よしグループというわけではなく、同じクラスであっても固まるということがありませんでした。

それでも休み時間になると班室に集まって、お互いの改善点やチームの方向性について、時には言いにくいことも、しっかりと相手に伝えていました。同じ目標に向かって、それぞれが自主的に取り組むことのできる、素晴らしいチームだったと思います。


―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?

将来彼らが社会人になったとき、今度は本当の仕事仲間とプロジェクトミッションに取り組むことがあると思います。そのときに今回の経験を思い出して、同じように仲間と話し合い、主体性を持って努力できる人になってほしいと考えています。

大きなプロジェクトを任されるような場面でも、やり切れる人になってくれることを期待しています。彼らなら、それができると思います。



激しい闘志をむき出すことなく、淡々と自分たちの課題に向き合ってきた、修道高校ワンダフォーゲル班。彼らのまなざしや発する言葉は、全国優勝を成し遂げるまでのたった5か月の間に、誰もが気がつくほど急激に変わっていったといいます。今大会での優勝は何にもかえがたい経験となり、これから大学受験や社会に向き合う彼らを支えていくでしょう。


profile】修道高等学校 ワンダフォーゲル
顧問 内藤 弘泰 先生
白根 颯君(2年)